日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第101回  投稿:2024.11.27 / 最終更新:2024.11.05

振替休日と代休の違い

人事給与統合システム×人事給与アウトソーシング

会社によっては、振替休日と代休を混同し、誤って運用しているケースがあります。「振替休日」は通達で明確に定められており、その解釈に当たらない「代休」の場合とその取扱いが異なります。

誤った運用を行っていると、知らず知らずのうちに、未払い残業代が発生してしまう可能性があります。今回は、代休と振替休日についてみていきたいと思います。

労働時間の原則について

労働基準法では1 日(8時間)と 1 週の労働時間(40時間)ならびに休日日数(毎週少なくとも1回)を定めています。原則は、この時間数や日数を超えて従業員を労働させてはならないというルールになります。

しかし、現実的に繁忙期等で労働時間が伸びてしまうこともあるということで、時間外労働・休日労働協定(いわゆる「36 協定」)が作られました。36協定を締結して労働基準監督署長に届け出れば、法定労働時間を超える時間外労働や法定休日における休日労働が認められます。36協定は、監督署に届け出ないと効力が発生しない点には注意が必要です。

また、締結の際には、時間外労働・休日労働を無制限に認める趣旨ではないという点を心にとめておく必要があります。時間外労働・ 休日労働は必要最小限にとどめられるべきものです。労使がこのことを十分に意識した上で 36 協定を締結するようにしましょう。

監督署への届け出が終了したら、就業規則やその他各種の労使協定と同様に、常時各作業場の見やすい場所への備え付け、書面を交付する等の方法により、労働者に周知する必要があります。

割増賃金率について

労働基準法上定められている労働時間は、1日8時間、1週40時間です。この労働時間を超えた場合には、事業主は割増賃金を支払う必要があります。

割増賃金率については以下のように定められています。


 ・時間外労働・・・2割5分以上(1か月60時間を超える場合は5割以上)
 ・休日労働・・・・3割5分以上
 ・法定労働時間内の深夜労働・・・2割5分以上
 ・時間外労働が深夜に及んだ場合・・・5割以上(1か月60時間を超える場合は7割5分以上)
 ・休日労働が深夜に及んだ場合・・・6割以上

2023年4月から1か月60時間を超える法定時間外労働に対して、中小企業であったとしても、5割以上の率で計算した割増賃金を支払う必要があります。

60時間以上の時間外労働をした場合は、支払金額がこれまで以上に大きくなります。現実に60時間以上の時間外労働が発生しているのであれば、労働時間の削減を検討する必要があるかもしれません。

休日労働の基本的な考え方

週休2日の会社も多くありますが、法律上の休日は、原則として、「毎週1回以上付与する(週休制といいます。)」ものと定められています。

週休制をとることが難しい場合は、変形休日制をとることも可能です。変形休日制とは、毎週1日以上休日を設定するのではなく、4週間を通じて4日以上の休日を取得させる制度のことです。

この変形休日制にする場合は、就業規則等に変形期間の起算日を定めておくことが必要です。

週休2日制をとっている会社が多い理由は、1日8時間、週40時間を考えるとわかります。週40時間を1日8時間で割ると5日間となります。1週間は7日なので、5日間働くと残りの2日間が休みになります。このため、一般的には週休2日が定着しています。

1週間で1日、もしくは、4週間で4日間の休日は「法定休日」と呼びます。それ以外の休日については所定休日と呼びます。法律上、休日労働とされるのは法定休日になるので、休日労働として割増賃金の支払い義務が発生するのは、この法定休日に労働した場合に限られます。

ただし、所定休日に労働した場合に、その週の労働時間が40時間を超えていれば、時間外労働としての割増賃金が発生します。

振替休日と代休の違いについて

それでは、振替休日と代休の違いをみていきましょう。

1.振替休日について

振替休日は、あらかじめ、休日と定められていた日を労働日とし、その代わりに他の労働日を休日とする制度です。振替休日で重要なポイントは、「あらかじめ」休日と労働日を交換するという点です。

事前に交換をすることによって、元は休日だった日が休日ではなくなったと解釈されます。この場合は、休日ではないのでそもそも休日労働が発生せず、したがって休日労働に対する割増賃金の支払義務が発生することはありません。
 

「あらかじめ」の期限については、何日前までに行わなければならないというような明確な基準はありません。しかし、会社として設定している休日を変更するので、それなりの日数が必要であると考えられます。なお、就業規則に振替休日の規定を設定する必要があります。

交換する振替休日の取得期限についても、明確に定められたものはありません。したがって、翌月であろうと3ヶ月後であろうと認められないというわけではありません。

ただし、週をまたいで休日と出勤日を交換(振替休日を設定)すると、出勤日に交換された日を含む週の労働時間が、週40時間の法定労働時間を超えてしまう可能性があります。前述のように、休日出勤が発生していないので、休日労働としての割増賃金は発生しませんが、週40時間を超える時間に対しての割増賃金の支払い義務はあります。

割増賃金の支払いを避けたい場合は、同一週内での振替を原則としていく必要があります。なお、労基法上の週の定義は、就業規則で明確に定めていればその曜日、特段定めていなければ日曜日となります。

特に定めていない会社の場合、土曜日を出勤にする場合はその前の月~金曜日、日曜日に出勤させる場合は後ろの月~金曜日のいずれかを振替休日としなければ、「同一週内」が満たされないことになります。

2.代休について

代休は、休日労働が行われた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みとするものです。振替休日と違うのは、休日出勤の指示をする際に、あらかじめ交換する休日が決まっていないことです。

つまり、代休は、先に休日出勤をし、その後代わりに休む日が決まるということになります。この場合、代休を取得しても、休日出勤をした事実は変わりませので、休日労働の割増賃金の支払義務は生じることになります。

解釈としては、休日出勤をした日の割増賃金を支払い、代休として休んだ日の賃金を控除するという考え方です。

労基法上の会社の責務としては、休日出勤の割増賃金を支払うことで完了しています。したがって、代休を認めるかどうかや保有できる期間(取得期限)等を会社が任意で設定をすることは可能です。

なお、休日出勤を行い、かならず代休を取得するルールにしている会社の場合、休日出勤手当を割増賃金率の3割5分だけにしているケースがあります。「休日出勤の1.35-代休の1.0=0.35」なので、この考え方自体は間違っていません。ただし、代休が翌月以降になる場合は、休日出勤をした月の賃金が不足していて「全額払いの原則」に抵触すると捉えられることがありますのでご注意ください。

今回は、振替休日と代休の違いについて説明しました。法律の考え方では、振替休日と代休はまったくの別物で、会社でどのように呼んでいるかは考慮されません。

この機会に法律に則した適正な運用ができているか、確認してみてください。


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