令和5年からの源泉徴収事務の変更点
目次
今年も年末調整の季節になりました。令和4年の年末調整の計算に当たっては、令和3年から比べて大きな改正事項はありません。
しかし、令和5年からは多少の変更があります。年末調整の際には、あわせて「令和5年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出させていると思います。
今回は、令和5年から変更となる項目について説明していきたいと思います。
1. 非居住者である扶養親族に係る扶養控除の適用要件の見直し
令和5年からは、扶養控除の対象となる扶養親族(控除対象扶養親族)の範囲から、30歳以上70歳未満の非居住者の中で、以下のいずれかに該当しない場合は控除対象扶養親族から除外されることになります。
1)留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者 2)障害者 3)扶養控除の適用を受けようとする人から、その年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者 |
1)3)に該当するかどうかについては、確認書類の添付が必要となります。添付書類は、それぞれ以下のとおりです。
1)留学により国内に住所及び居所を有しなくなった者
外国政府又は外国の地方公共団体が発行した、その非居住者である扶養親族に係る外国における査証に類する書類の写し又は外国における在留カードに相当する書類の写しであって、その非居住者である扶養親族が出入国管理及び難民認定法の留学の在留資格に相当する資格をもってその外国に在留することにより、国内に住所及び居所を有しなくなった旨を証するもの。これらの確認書類を「留学ビザ等書類」をいいます。
書類を会社に提出するタイミングは、扶養控除等(異動)申告書を受領するときです。
3)扶養控除の適用を受けようとする人から、その年において生活費又は教育費に充てるための支払を38万円以上受けている者
現行の送金関係書類であって、その扶養控除の適用を受けようとする人から非居住者である扶養親族である各人へのその年における生活費又は教育費に充てるための支払の金額の合計額が38万円以上であることを明らかにする書類(「38万円送金書類」)をいいます。
会社がこの証明書類を確認する時期は、年末調整を行うときです。したがって、来年の年末調整時に確認することになります。
なお、2)の障害者については確認書類の添付は求められていません。
居住者か非居住者かの判断は、以下のように定められています。
所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、または、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。
「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定」します。したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで決定されます。
なお、一定の場合には、その人の住所がどこにあるかを判定するため、職業などをもとに「住所の推定」を行うことになります。
「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。
給与の支払を受ける人は、毎年最初に給与の支払を受ける日の前日までに扶養控除等(異動)申告書を会社に提出する必要があります。
ときどき申告書が提出されていないにもかかわらず、提出されたものとして甲欄で所得税の計算を行っているケースが見受けられます。特に、「個人で確定申告をするなどの理由で年末調整時に書類を提出しなかった人」「年末調整後に途中入社した人」は要注意です。
正しくは、申告書の提出があるまでは、「乙欄」で給与計算を行わなければなりません。そのため、年明け最初に支給する給与計算の前には、年末調整時に扶養控除等(異動)申告書を提出していない従業員を確認しなければなりません。
2.「扶養控除等(異動)申告書」の「住民税に関する事項」の変更
令和5年分より「扶養控除等(異動)申告書」の「住民税に関する事項」に、「退職手当等を有する配偶者・扶養親族」を記載する欄が追加されました。
年の途中で配偶者・扶養親族を追加する場合はもちろん、もともと源泉控除対象配偶者や扶養親族になっている場合でも、年の途中で離職等していて退職手当を受けることは想定されます。来年の年末調整時には記載漏れがないか、確認が必要になります。
令和4年の年末調整事務については、昨年と比べて大きな変更点はありません。しかし、今回説明した中でも「留学ビザ等書類」は年明け最初の給与の支払日までに提出を受ける必要があります。
来年のことであっても、改正ポイントだけは今からしっかり押さえておくようにしましょう。
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