日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第106回  投稿:2025.02.12 / 最終更新:2025.02.10

月60時間超の残業の割増率と代替休暇

人事給与統合システム×人事給与アウトソーシング

2023年4月から、月間60時間を超える残業時間については、5割以上の割増賃金率で計算をした割増賃金を支払う必要があります。大企業はすでに始まっていましたが、適用を猶予されていた中小企業に対してもいよいよ導入されます。

今回は、制度変更の対象となる中小企業向けに、月間60時間を超える法定時間外労働を行った場合の割増賃金と、代替休暇について説明していきます。

割増賃金率について

2023年4月から中小企業であったとしても、1ヶ月の時間外労働が60時間を超えると割増賃金率が変わります。それぞれの割増率については、以下を参照ください。

 割増賃金を支払う場合割増賃金率
1時間外労働2割5分以上
2休日労働3割5分以上
3法定労働時間内の深夜労働2割5分以上
4法定労働時間外の深夜労働5割以上(1+3)
5休日深夜労働6割以上(2+3)
660時間を超えた時間外労働5割以上
7法定労働時間外(60時間を超える)の深夜労働7割5分以上(3+6)

これまでは、60時間を超える残業も60時間未満の残業と変わることなく、ともに2割5分以上の割増賃金率で計算すれば問題はありませんでした。

しかし、2023年4月以降は60時間以上の残業をした場合にはその時間を区別して集計する必要があり、残業代などの計算がさらに複雑になります。また、日々の時間管理をしっかりと行っていかないと、給与計算に時間がかかってしまったり、計算を間違えてしまうといったことも考えられます。

時間外労働が60時間を超えてしまうと、割増賃金率を5割以上で計算しなければなりません。さらに60時間を超えた時間外労働が深夜労働(午後10時~朝5時)にかかっていると、深夜労働の割増賃金を含め7割5分以上での計算となります。これは、通常の賃金の2倍に近い金額であり、支払うのが簡単な金額ではありません。従業員の方の健康管理も含めて、残業時間をコントロールしていくことが今後はさらに重要になります。

しかし、繁忙期などはどうしても月間60時間を超えてしまうという会社もあるかと思います。このような場合に、割増賃金を支払わない代わりに従業員に休みを与えるという方法をとることもできます。

代替休暇について

1ヶ月60時間を超える法定時間外労働を行った労働者の方の健康を確保するため、 引き上げ分の割増賃金の代わりに有給の休暇(代替休暇)を付与することができます。

この制度を導入することで、残業代を圧縮できる効果が期待できます。代替休暇は翌月以降に与えることも可能なので、繁忙期が限られている会社では検討する余地があります。

代替休暇制度導入にあたっては、過半数組合、それがない場合は過半数代表者との間で労使協定を結ぶことが必要になります。労使協定を締結する際のポイントは、次の4項目になります。

なお、代替休暇はその取得を会社が強制できるものではありません。あくまでも労働者が取得する意向を示し、休暇取得日も労働者に委ねる必要があります。

1)代替休暇の時間数の具体的な算定方法

代替休暇の時間数の具体的な算定方法は、以下の計算式で求めることができます。

代替休暇の時間数=(1ヶ月の法定時間外労働時間数―60時間)×換算率

*換算率:代替休暇を取得しなかった場合に支払うこととされる割増賃金率から、代替休暇を取得した場合に支払こととされている割増賃金率を控除した率

<例>

月の法定時間外労働時間80時間 換算率が0.25の場合

*60時間以下の場合の割増賃金率が2割5分で、60時間を超える割増賃金率が5割だった場合の換算率は、1.5-1.25=0.25となります。

(80時間-60時間)×0.25=5時間

この5時間が代替休暇の時間数になります。

2)代替休暇の単位

代替休暇は、まとまった単位で与えることで労働者の休息の機会を確保するためのものです。そのため、「1日単位」「半日単位」もしくは「その両方」のいずれかによって与える制度としなくてはなりません。

3)代替休暇を与えることができる期間

代替休暇は、特に長い時間外労働を行った労働者の休息の機会の確保が目的になります。そのため、一定の近接した期間内に休暇を与える必要があります。 法定時間外労働が1ヶ月60時間を超えた月の末日の翌日から最長でも2ヶ月間以内の期間で与えることを定めてください。

具体的な例をあげると、4月に60時間を超える残業を行った場合は、5月と6月の2ヶ月の間に代替休暇を消化する必要があるということになります。

4)代替休暇の取得日の決定方法、割増賃金の支払日

期間内に取得できなかった場合でも、使用者の割増賃金支払義務はなくなりません。 当然のことながら、代替休暇として与える予定であった割増賃金分を含めたすべての割増賃金額を支払う必要があります。

この支払いは、「代替休暇を取得できないことが確定した月」の賃金支払日に行わなければなりません。

長時間労働を続けていると、従業員の健康障害を引き起こす要因にもなりかねません。正しい計算方法で残業代を支払っているから問題ないと考えるのではなく、可能な限り削減に取り組む必要があります。

毎月の給与計算時に、金額の計算だけでなく労働時間の推移も把握していくようにしましょう。長時間労働が発生している会社では、月60時間超の法定時間外労働の割増率が変わる今回をチャンスととらえ、労働時間の削減に取り組んでみてはいかがでしょうか。


鈴与シンワート株式会社
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