社会保険、雇用保険の料率と社会保険適用拡大
目次
年度替わりの時期になりました。
今回は、「雇用保険料率と社会保険料率の変更」と2024年10月からの「短時間労働者への社会保険適用拡大」について説明していきます。
令和6年度の雇用保険料率
令和6年度の雇用保険料率は、令和5年度と同率になります。それぞれの業種別にまとめると保険料率は以下のようになります。
労働者負担率 | 事業主負担率 | 雇用保険料率 | |
一般の事業 | 6/1000 | 9.5/1000 | 15.5/1000 |
農林水産・清酒製造の事業 | 7/1000 | 10.5/1000 | 17.5/1000 |
建設の事業 | 7/1000 | 11.5/1000 | 18.5/1000 |
令和5年度からの変更はありませんが、給与計算の設定が誤っていないか念のため、確認しておきましょう。
協会けんぽにおける社会保険料率の変更
健康保険には、大きく分けて、政府が行っている全国健康保険協会(協会けんぽ)と健康保険組合の2パターンがあります。いずれのケースでも、通常は毎年3月に保険料率が見直されます。
協会けんぽは都道府県支部ごとに保険料率が異なりますが、2024年3月(4月納付分)から神奈川県を除いて健康保険料率が変更になります。
また、40歳以上65歳未満が被保険者となる介護保険料率についても変更され、こちらは全国一律で2024年3月(4月納付分)から1.6%になります。
これらの社会保険料率を変更するタイミングは、社会保険料を「当月」に徴収しているか「翌月」に徴収しているかにより変わります。
当月に徴収している場合は、2024年3月の社会保険料を3月に支払う給与から控除するため、3月の給与計算の際に料率を変更します。
一方で、翌月に徴収している場合は、2024年3月の社会保険料を4月に支払う給与から控除するため、4月の給与計算の際に料率を変更します。徴収方法を踏まえて計算をするようにしてください。
注意が必要なのは「賞与」の保険料です。
賞与については、支給日で判断しますので、2024年3月に支給する賞与から、健康保険と介護保険の料率を変更する必要があります。
翌月徴収の会社では、給与と賞与で変更する月が異なります。3月に決算賞与等を支給している会社もあると思いますが、お間違えのないようにご注意ください。
健康保険組合については、法律の範囲内で独自に保険料率を決定することができるため、協会けんぽの保険料率とは異なります。健康保険組合も、財政状況などを勘案して健康保険料率と介護保険料率が見直されますので組合からの案内等に注意しましょう。
社会保険料には、健康保険と介護保険のほかに厚生年金保険もありますが、こちらの料率は変更なく、18.3%のままです。
2024年10月からの非正規社員の社会保険加入の拡大
2024年10月から、非正規社員の社会加入要件がさらに拡大されることになっています。
原則として、パートタイマー・アルバイトでも、会社に常用的に使用されているのであれば被保険者となります。しかし、時間や日数が少ない(受け取る給与額が少ない)方を被保険者とするのは、扶養家族の概念をなくすことにもつながります。
そのため、一定の基準以下で働く方については、社会保険に加入することができません。
具体的には、「1週間の所定労働時間」および「1か月の所定労働日数」が、同じ事業所で同様の業務に従事している一般社員の4分の3以上であれば被保険者になります。
つまり、正社員と比べて労働日数と労働時間の両方が4分の3以上の非正規社員は被保険者として社会保険に加入し、どちらか一方でもそれ未満の場合は加入しないことになります。
原則は前述の通りですが、厚生年金保険への加入拡大を目的として、非正規社員の社会保険の適用が拡大されてきています。
2024年10月からは、以下のすべてに該当する非正規社員は社会保険に加入する義務があります。
1)従業員数51人以上の企業であること 2)週の所定労働時間が20時間以上あること 3)2か月を超える雇用の見込みがあること 4)賃金の月額が88千円以上であること 5)学生でないこと |
年度替わりに合わせて、パートタイマーやアルバイトの雇用契約を更新する会社が多いようです。
今回新たに社会保険の適用拡大の対象となる従業員数51人~100人の規模の企業は、新たに締結する雇用契約の内容によっては、10月以降に社会保険が適用されるパートタイマーやアルバイトが発生します。
パートタイマーやアルバイトの中には社会保険の加入を望まない方もいるようなので、このことを念頭に、契約更新の内容を検討した方が良いかもしれません。
今回は、雇用保険と社会保険の料率変更と非正規労働者の社会保険適用拡大について説明しました。
給与計算の実務を担当されている方は、料率変更のタイミングを間違えないようにしてください。
また、非正規社員の社会保険加入拡大については、多くのパート・アルバイト従業員の方を抱えている企業にとっては大きな影響がある改正になります。こちらも今から対応しておくことをお勧めします。
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