2024年 年末調整について
目次
そろそろ年末調整の準備を始める時期になりました。今回は、今年(2024年)の年末調整の変更点についてみていきます。
2023年との大きな変更点は、2024年は定額による所得税の特別控除(定額減税)が実施されていることです。今年の年末調整を行う際には、年末調整時点の年調減税額を算出し、年間の所得税額の計算を行うことになります。
月次減税の際に説明した部分もありますが、定額減税と年末調整の関係についてみていきます。
定額減税額
減税額については、同一生計配偶者と扶養親族の数に応じて金額が決定されます。同一生計配偶者と扶養親族の定義については、以下のとおりです。
同一生計配偶者:12月31日の現況で、納税者と生計を一にする配偶者で、年間の合計所得金額が48万円以下の人
扶養親族: 12月31日の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人
1)配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族をいいます。) または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。 2)納税者と生計を一にしていること。 3)年間の合計所得金額が48万円以下であること。 4)青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと。 または白色申告者の事業専従者でないこと。 |
具体的な定額減税の額は次のとおりです。
1)日本に居住している本人:30,000円
2)日本に居住している同一生計配偶者または扶養親族:一人につき30,000円
たとえば、同一生計配偶者:あり 扶養親族:2名の場合
30,000円(本人分)+90,000円(同一生計配偶者と扶養親族の合計)=120,000円が減税額となります。
年末調整で控除を受けられる対象者について
年末調整で定額減税の控除を受けられる人は、以下の方です。
1)令和6年6月1日以後の令和6年分の年末調整時に給与の支払者に扶養控除等申告書を提出している人 2)令和6年6月1日以後、年の中途で退職した人のうち、次のいずれかに該当する方 ・死亡により退職した人 ・著しい心身の障害のため退職した人で、その退職時期からみて、本年中に再就職ができないと見込まれる人 ・12月中に支給期の到来する給与の支払を受けた後に退職した人 3)令和6年6月1日以後、年の中途で海外の支店へ転勤したことなどの理由により、非居住者となった人 |
一方で、以下の方は年末調整で控除を受けることができません。
1)令和6年中の主たる給与の収入金額が2,000万円を超える人 2)令和6年分の給与に係る源泉所得税について、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の規定による徴収猶予や還付を受けた人 3)令和6年分の年末調整時にその給与の支払者に扶養控除等申告書を提出していない人 (令和6年分の年末調整時に乙欄または丙欄適用者である人がこれに該当します。) 4)令和6年5月31日以前において、年の中途で年末調整の対象となる人 5)合計所得金額が1,805万円を超える人 |
年末調整で控除を行う場合は、対象者かどうかをしっかりと確認する必要があります。また、「給与所得者の扶養控除等申告書」に記載しない扶養親族を定額減税の対象人数に含める場合は、「年末調整に係る定額減税のための申告書」を提出してもらう必要があります。
たとえば、本人の合計所得金額が900万円を超えると見込まれるため、扶養控除等申告書に源泉控除対象配偶者として記載しないケースが想定されます。
年末調整の計算方法
年調減税額の控除は、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除後の所得税額(年調所得税額)から行います。したがって、住宅借入金等特別控除後の所得税額が年末調整における定額減税の限度額ということになります。
なお、年調減税額を控除した金額に102.1%を乗じて復興特別所得税を含めた金額が年調年税額になります。
国税庁で作成している「令和6年分給与所得に対する源泉徴収簿」右側の「年末調整」欄は、年調減税額の控除等の計算に対応していないので注意しましょう。
年調減税額の控除等の計算に対応した「令和6年分年末調整計算表」もしくは、「年末調整計算シート(令和6年用)」の様式等を利用するようにしましょう。

今回は、2024年の年末調整についてみてきました。今年は、必要な書類や計算方法がこれまでと変わるため、早めに対応して計算ミスが生じない体制を整える必要があります。
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