フリーランス新法~その5
目次
2024年11月1日に「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」が施行されました。
今回も、引き続きフリーランス新法についてみていきたいと思います。
取引における義務と禁止行為について
フリーランス新法では、履行すべき義務と禁止事項は、「取引の適正化」と「就業環境の整備」の2つのパートで構成されています。
発注者が、1)業務委託事業者、2)特定業務委託事業者、3)特定業務委託事業者が一定期間以上の期間業務委託する場合、のどれに該当するかにより、履行すべき義務と禁止事項は変わってきます。
業務委託事業者が業務を委託する場合
1.取引条件の明示義務
特定業務委託事業者が業務を委託する場合
1.取引条件の明示義務
2.期日における報酬支払義務
3.募集情報の的確表示義務
4.ハラスメント対策に係る体制整備義務
特定業務委託事業者が一定期間以上の期間行う業務を委託する場合
1.取引条件の明示義務
2.期日における報酬支払義務
3.発注事業者の禁止行為
4.募集情報の的確表示義務
5.育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
6.ハラスメント対策に係る体制整備義務
7.中途解除等の事前予告・理由開示義務
今回は、「4.募集情報の的確表示義務」以降についてみていきます。
4.募集情報の的確表示義務
発注事業者は、広告等でフリーランスを募集する際は、その情報が虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、正確かつ最新の内容にしておく必要があります。
「虚偽の表示の禁止」「誤解を生じさせる表示の禁止」「正確かつ最新の表示の義務」について、それぞれ次のように定義されています。
虚偽の表示の禁止
意図して募集情報を実際の就業に関する条件とは異なる表示とした場合や、実際には存在しない業務に関する募集情報を提供した場合などは、「虚偽の表示」に該当します。
法違反となる例は、
・実際に業務委託を行う事業者と別の事業者名で募集情報を掲載する。
・実際の報酬額よりも高額の報酬額の募集情報を表示する。
反対に、法違反とならない例は、
・応募後、当事者間の合意に基づき、募集情報の条件から実際の契約条件を変更する。
誤解を生じさせる表示の禁止
一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示は、「誤解を生じさせる表示」に該当します。これについては、以下の点に留意する必要があります。
・報酬額等について、実際の報酬額等よりも高額であるかのように表示しない。
・職種または業種について、実際の業務内容と著しく乖離する名称を用いない。
・フリーランスの募集と、労働者の募集が混同されるような表示をしない。
正確かつ最新の表示の義務
募集情報は、正確・最新の内容に保つ必要があります。そのため、
・募集を終了・内容を変更したら、速やかに募集情報の提供を終了・内容を変更する。
・いつの時点の募集情報かを明らかにしておく必要があります。
5.育児介護等と業務の両立に対する配慮義務
発注事業者は、フリーランスからの申出に応じて、6か月以上の期間で行う業務委託については、フリーランスが妊娠、出産、育児または介護と業務を両立できるよう、必要な配慮をしなければなりません。
なお、6か月未満の期間で行う業務委託についても、フリーランスが育児介護等と業務を両立できるよう、必要な配慮をするように努めなければなりません。
6.ハラスメント対策に係る体制整備義務
ハラスメントによりフリーランスの就業環境を害することのないよう、相談対応のための体制整備その他の措置を講じる必要があります。
また、フリーランスがハラスメントに関する相談を行ったこと等を理由として不利益な取扱いをすることは禁止されています。
7.中途解除等の事前予告・理由開示義務
6か月以上の期間で行う業務委託の発注事業者は、契約の解除または不更新をしようとする場合、例外事由に該当する場合を除いて、解除日または契約満了日から30日前までにその旨を予告しなければなりません。
予告がされた日から契約が満了するまでの間に、フリーランスが解除の理由を発注事業者に請求した場合、発注事業者は、例外事由に該当する場合を除いて、遅滞なく開示する必要があります。
例外事由に該当する例は次のとおりです。これらの項目に該当する場合は、予告が不要です。
・災害などのやむを得ない事由により予告が困難な場合
・フリーランスに再委託している場合で、上流の事業者の契約解除などにより直ちに解除せざるを得ない場合
・業務委託の期間が30日以下など短期間である場合
・フリーランスの責めに帰すべき事由がある場合
・基本契約がある場合で、フリーランスの事情で相当な期間、個別契約が締結されていない場合
これまで複数回にわたって、フリーランス新法について説明してきました。
行政は、『フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン』を作成していますので、内容をさらに詳しく知りたい方は参照してください。
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第133回フリーランス新法~その5
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第76回寡婦控除の見直し
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第75回住民税の特別徴収
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第74回在宅勤務時の労働時間と割増賃金
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第73回高年齢労働者の雇用保険料免除の廃止
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第72回休業手当の計算方法
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第71回源泉所得税の仕組み
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第65回厚生年金保険の加入資格と保険料
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第114回令和5年度の最低賃金
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第61回労働基準法における賃金とは
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第58回賞与における所得税の計算
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第54回社宅制度と社会保険料
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第53回住宅手当と社宅貸与の違い
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第52回退職金の税務計算
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第51回賃金支払いの5原則~その4(最終回)
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第50回賃金支払いの5原則~その3
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第49回賃金支払いの5原則~その2
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第48回賃金支払いの5原則~その1
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第47回時給者の有給休暇の賃金の計算方法
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第46回割増賃金の基礎となる賃金
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第45回年末調整の留意点~その2
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第44回年末調整の留意点~その1
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第43回退職者の住民税
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第42回労働時間の端数処理
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第41回入社した従業員がすぐに退職したとき
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第40回賃金から控除できる項目と労使協定
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第39回1か月60時間超の残業の割増率と代替休暇
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第38回退職者の社会保険料徴収とタイミング
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第37回雇用保険料率の改定と変更のタイミング
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第36回最低賃金の仕組み
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第35回毎月の給与からの源泉所得税の徴収
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第34回65歳以上の従業員に対する雇用保険の法改正
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第33回今年の年末調整の留意点
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第32回年末調整における海外居住の扶養家族
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第31回年末調整におけるマイナンバーの取扱
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第30回従業員が死亡したとき
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第29回雇用保険料と介護保険料の免除
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第28回企画業務型裁量労働制と割増賃金の考え方
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第27回事業場外労働に関するみなし労働時間制度の考え方
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第26回専門業務型裁量労働制と割増賃金の考え方
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第24回フレックスタイム制の労働時間制度
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第23回1年単位の変形労時間制度
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第22回1か月単位の変形労時間制と残業代の関係
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第16回徹夜勤務や遅刻をした日の残業代の支払い
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第15回有給休暇の付与と消滅
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第14回給与の支給日の決め方やその変更
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第13回給与計算の誤入力を修正するときの注意点
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第12回標準報酬月額の随時改定
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第08回年末調整その1~年末調整の意味と対象者~
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第07回遅刻をした日に残業をしたときの計算方法
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第06回就業規則と給与計算の関係
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第05回給与から引かれるものは?
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第04回残業代を正しく計算するための基礎知識
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第03回賞与の支給と給与計算
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第02回産前産後休業や育児休業の仕組みと社会保険料
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第01回消費税増税で変わる通勤手当と社会保険料










