フレックスタイム制と有給休暇
目次
フレックスタイム制を導入している会社で、有給休暇を取得した日がある場合の残業代の計算方法について質問を受けることがあります。
今回は、有給休暇と割増賃金の関係についてみていきます。

年次有給休暇について
有給休暇は、法律で労働者に与えられた権利であり、会社は毎年、有給休暇を付与する義務があります。付与の対象になるのは、次の2つの要件を満たした場合です。
1)入社してから6ヶ月以上経過していること
2)全労働日の8割以上出勤していること
要件はこの2つだけなので、会社は、社員と比べて週の出勤日数が少なかったり、1日の勤務時間が短いパート・アルバイト従業員に対しても有給休暇を付与する義務があります。
有給休暇を付与する日数は、勤務日数に応じて決まります。週の所定労働日数が5日以上の場合、雇い入れられた日から6ヶ月勤務して全労働日の8割以上出勤していれば10日の有給休暇が与えられます。次に、そこから1年ごとに11日、12日と与えられる日数が増えていきます。
これに対して、週4日以下の勤務で、週の所定労働時間が30時間未満のアルバイトやパート従業員に対しては、週の所定労働日数に応じた有給休暇が与えられます。
有給休暇を取得した際の割増賃金の原則的な考え方について
フレックスタイム制を導入していない場合について先にみていきます。
労働時間が1日8時間、1週40時間を超えると2割5分以上の割増賃金を支払う必要があります。割増賃金の計算を行う際に、有給休暇や半日有給を取得した日を実労働時間に含めるかどうかという点が問題となります。
有給休暇と割増賃金の考え方については、事例を使った方が分かりやすいので、以下の条件を設定することにします。
1)月曜日から金曜日が勤務日
2)1日の労働時間は8時間
3)所定休日は土曜日、法定休日は日曜日
4)時給1,000円
今回は、計算がしやすいように時給1,000円と設定しています。1日8時間、週40時間を超えて労働した場合は割増賃金が必要なので、時給は1,250円となります。
問い合わせをいただくことが多いケースは、月曜日に有給休暇を取得し、土曜日に休日出勤をして8時間労働をした場合の取り扱いについてです。
有給休暇は実際に労働したわけではないので、実労働時間には含めなくて良いルールになっています。そのため、月曜日に有給休暇を取得し、土曜日に8時間労働した場合は、その週の実労働時間は40時間におさまるので、割増賃金の支払い義務は生じません。
したがって、土曜日の実労働時間8時間に時給1,000円を乗じた額(8,000円)を支払えば、労基法上は問題ないということになります。

フレックスタイム制における有給休暇について
次にフレックスタイム制を採用している場合の考え方についてみていきます。フレックスタイム制は、一定期間(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で始業時間や終業時間を自分自身で決定をしながら働くことができる制度です。
フレックスタイム制では、清算期間のトータルの時間によって時間外手当の支払いをするか否かを判断します。そのため、1日(8時間)や1週(40時間)で法定の労働時間を超えても、ただちに割増賃金が発生することはありません。
フレックスタイム制を導入する際には、労使協定で「標準となる1日の労働時間」を定める必要があります。年次有給休暇を取得した場合、この「標準となる1日の労働時間」を実際の労働時間にプラスして清算期間における総労働時間を計算します。
ただし、原則の考え方同様、有給休暇は実際に労働しているわけではないので、割増賃金の対象にはなりません。
たとえば、清算期間が1ヶ月のフレックスタイム制を採用している会社で、その月の所定労働日数が20日で、1日の標準労働時間が8時間だった場合の計算方法は次のようになります。
例1)その月の実労働時間が158時間、有給休暇を1日取得した場合
清算期間の総労働時間:166時間となるため、超過時間は6時間
超過時間は有給休暇によるものなので、割増なしの残業代6時間分を追加支給
例2)その月の実労働時間が166時間、有給休暇を1日取得した場合
清算期間の総労働時間:174時間となるため、超過時間は14時間
実労働時間で超過している6時間分は割増ありの残業代、有給休暇の8時間分は割増なしの残業代を支給
今回は、フレックスタイム制における有給休暇の考え方についてみてきました。
法律通りの計算をすると、フレックスタイム制を導入している場合の給与計算は少し複雑になります。もちろん、会社が有給休暇の取得により超過した時間も割増賃金の対象とすることを妨げるものではありませんが、その場合でも法律上の計算方法は理解しておくようにしましょう。
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