日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第46回  投稿:2018.01.04 / 最終更新:2020.04.15

割増賃金の基礎となる賃金

残業代などの割増賃金を計算するには、1時間当たりの賃金額を計算する必要があります。当たり前のようですが、この「1時間当たりの賃金額」の計算方法を間違えているケースがときどき見受けられます。労働基準監督署の調査などでも、良く指摘される事項です。

割増賃金の基礎となる賃金が誤っていると、残業代などの金額も当然正しく計算することはできません。
今回は、割増賃金の基礎となる賃金について、あらためて詳しくみていきたいと思います。

割増賃金とは

会社は、従業員に時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた場合は、法令で定める以上の率で算定した割増賃金を支払う必要があります。割増賃金率は以下のようになっています。
時間外労働:2割5分以上(1ヶ月60時間を超える場合は、5割以上 ※1)

休日労働 :3割5分以上
深夜労働 :2割5分以上
※1 中小企業については、当分の間適用が猶予されています。

割増賃金の基礎となるのは、所定労働時間に対して支払われる「1時間当たりの賃金額」です。例えば、月給制の場合、各種手当も含めた月給を1ヶ月の所定労働時間で割って、各自の1時間当たりの賃金額を算出します。
このときに、以下の7つの項目は、労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されていることなどにより、基礎となる賃金から除外することが認められています。

1)家族手当
2)通勤手当
3)住宅手当
4)別居手当
5)子女教育手当
6)臨時に支払われた賃金
7)1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

この7つの項目は、例として示されているわけではなく、限定的に列挙されているものです。そのため、これらに該当しない賃金については、すべて算入しなければなりません。
また、1)~5)までの手当については、このような名称の手当であれば、すべて基礎となる賃金から除外できるわけではありません。それぞれに除外できる賃金と認められるための要件が定められています。

それでは、多くの会社で支給している「家族手当」「通勤手当」「住宅手当」の3つについて、具体例をみていきたいと思います。

1)家族手当

割増賃金の基礎から除外できる家族手当とは、「扶養家族の人数またはこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当」をいいます。

除外できる例:扶養義務のある家族1人につき、配偶者1万円、その他の家族5千円を毎月支給する場合
除外できない例:扶養家族の有無、家族の人数に関係なく、全従業員に対して一律に1ヶ月1万円を支給する場合

2)通勤手当

割増賃金の基礎から除外できる通勤手当とは、「通勤距離または通勤に要する実際の費用に応じて算定される手当」をいいます。

除外できる例:定期券の金額に応じた費用を支給する場合や、通勤距離に応じて定めた金額を支給する場合
除外できない例:実際の通勤距離や交通費にかかわらず、1日につき300円を支給する場合

3)住宅手当

割増賃金の基礎から除外できる住宅手当とは、「住宅に要する費用に応じて算定される手当」をいいます。

除外できる例:賃貸住宅居住者には家賃や面積に応じた割合、持ち家居住者にはローン月額や面積に応じた割合で計算した金額を支給する場合
除外できない例:面積や家賃などは関係なく、賃貸住宅居住者のうち妻帯者には2万円、独身者には1万円を支給する場合

 

特に「住宅手当」に関しては、労働基準監督署の調査などで「割増賃金に算入すべき賃金であり、結果的に残業代が不足している」との指摘を受けやすい事項です。
それぞれの手当の算出方法を確認し、割増賃金から除外できる賃金なのか否かを確認してみましょう。また、割増賃金から除外できない算出方法の手当であるにもかかわらず、実際の残業代の計算には含まれていない場合は、残業代などの計算基礎に含めるか、あるいは手当の算出方法そのものを見直すようにしましょう。

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