時給者の有給休暇の賃金の計算方法
目次
皆さんご存知の通り、アルバイトやパートタイマーであっても年次有給休暇を取得することができます。これは、以前から労働基準法で定められている事項です。
最近では、確実にアルバイトやパートタイマーの有休取得率が上がってきているようです。取得率が向上してくるにつれて、時給計算の従業員が年次有給休暇を取得した際の賃金の計算方法について相談を受けるようになりました。
今回は、時給計算の従業員に対する有休取得時の賃金の計算方法について紹介をしていきたいと思います。
有給休暇の賃金の計算方法の種類
年次有給休暇の賃金について、労働基準法は以下のように定めています。
「使用者は、有給休暇の期間または時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金または所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間について、健康保険法第99条第1項 に定める標準報酬日額に相当する金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。」
この条文ではわかりにくいと思いますが、まとめると、有給休暇を取得した日は、
1)平均賃金
2)通常の賃金
3)標準報酬日額(健康保険法)
のいずれかの方法により計算して賃金を支給しなさい、ということになります。
一般的には、「2 通常の賃金」で支払う会社が多いようです。この場合は、有休を取得した日に勤務する予定であった時間の賃金(時給×時間)を支給することになります。
時給であっても実際は社員と同じ勤務時間を働いている方や、1日の所定労働時間数が一定のパートタイマーばかりであれば、この方法が最も簡単で判りやすいかもしれません。
このようなパートタイマーやアルバイトごと(あるいは全員)の所定労働時間が一定ではなく、それぞれの所定労働時間が曜日によって異なるシフトを組む会社では、その日の所定労働時間が良く分からないケースがあります。
シフトが決まってから有休を申請してきた場合は、その日の所定労働時間がすでにはっきりしているので問題はありません。しかし、シフト制を採用している会社では、シフトを組む際に有休を申請させる運用にしていることも多いのではないでしょうか。
このような会社では、有給休暇の賃金を「1 平均賃金」で計算することも効果的です。
平均賃金の計算方法
有給休暇を取得した日を平均賃金で支払うための考え方と算出方法は、労働基準法第12条で定められています。この平均賃金は、年次有給休暇だけではなく、解雇予告手当や休業手当等の算定にも用いられます。
平均賃金の算定の方法は、以下の(A)と(B)を比較して高い方をとります。
(A)
過去3ヶ月間の賃金の合計額
過去3ヶ月間の暦日数
(B)
過去3ヶ月間の賃金の合計額
×60%
過去3ヶ月間の労働日数
ここでいう「過去3ヶ月」は直前の賃金締切日から前の3ヶ月間を指します。
たとえば、末日締翌月25日に給与を支払っている会社で、4月10日の有休のための平均賃金を計算するときは、1月1日~3月31日の勤務に対する賃金が「過去3ヶ月」になります。
また、分子の賃金には、通勤手当も含まれます。通勤手当などの手当を毎月定額で支給している場合には、毎月定額になっている賃金を(A)の方法で、時給などのように変動する賃金は(A)と(B)の高い方で計算し、両方を合算した金額が平均賃金になります。
平均賃金で有休の賃金を計算する場合は、その日に就労する予定だった時間のことを考慮する必要はありません。その代わり、過去3ヶ月が有休を取得する月によってずれていきますので、毎回平均賃金を計算しなおす必要があります。
標準報酬日額で計算する方法
有給休暇を取得した日の賃金を計算するための標準報酬日額は、次の式で求められます。
健康保険の標準報酬月額÷30
標準報酬月額は、毎月変動するものではありませんので、平均賃金を用いるよりは変動が少ないことになります。
ただし、健康保険に加入していないアルバイトやパートタイマーがいる場合は、この方法では計算できません。また、この方法を利用する場合は、労使協定を締結することが必須になっていますので、ご注意ください。
時給者の給与計算を行う際は、どのような方法で有給休暇の計算をするのかルールを決めておく必要があります。恣意的に運用することは認められていませんので、ルールを決めたら、就業規則等で明示しましょう。
会社ごとのパートタイマーやアルバイトの勤務体系や計算の煩雑さ等を考慮して、どの方法が簡便で、公平な制度なのか、検討してみてはいかがでしょうか。
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