社宅制度と社会保険料
目次
前回は、社宅制度を導入した場合の所得税の計算方法について説明しました。前回に引き続き、今回は社宅制度を導入した場合の社会保険(健康保険・介護保険・厚生年金保険)の報酬の考え方をみていきたいと思います。
社会保険における現物給与
従業員が会社から社宅を借りていると、会社はその従業員に対して、利益を供与していることになります。社会保険では、従業員が得ている利益を一定の方法で通貨に換算し、その相当額を報酬に合算をして標準報酬月額を決定することになります。
標準報酬月額に合算する現物給与の種類には、「住宅(社宅や寮など)の貸与」「食事」「自社製品」「通勤定期券」などがあります。自社製品や通勤定期券など「モノ」で支給される場合は、原則として時価で換算して合算します。
住宅や食事を現物で支給する場合は、「厚生労働大臣が定める現物給与の価額」(厚生労働省告示)に定められた額に基づいて通貨に換算します。現物給与の価額については、都道府県ごとに異なり、また毎年度見直されます。日本年金機構がホームページ上で公表していますので、随時そちらを確認ください。
社宅費用の全部または一部を本人が負担している場合は、「現物給与の価額から計算した金額」と「本人の負担額」の差額を報酬に合算します。そのため、現物給与の価額から計算した金額以上を「社宅使用料」などとして本人から徴収している場合には、社会保険の報酬には合算する必要がありません。
社宅の現物給与の計算方法
現物給与の価額表は、都道府県によって定められている価額が異なります。現実には本社と複数の支店がある会社でも、社会保険は本社で取りまとめて加入している会社も多いと思います。それでは、どの地域の価額を適用させれば良いでしょうか。
現物給与の価額は本来、生活実態に即した価額になることが望ましいため、社会保険の適用事業所となっている事業所の所在地ではなく、本人の勤務地の事業所の住所を適用するのが原則です。つまり、社会保険は本社で加入していても、札幌支店に勤務しているのであれば「北海道」の価額が適用されるということです。
社宅が勤務地と異なる都道府県にある場合も、勤務地の事業所の所在地により判断します。なお、派遣労働者の場合については、実際の勤務地(派遣先の事業所)ではなく、派遣元の事業所の所在地の都道府県の価額で計算しますのでご注意ください。
適用する都道府県により、社会保険に算入する価額は大きく異なります。同じ広さの社宅で、東京と北海道での現物給与の価額の計算方法は以下のとおりです(平成30年度)。
・東京では、 1畳あたりの単価が2,590円
・北海道では、1畳あたりの単価が1,000円 です。
たとえば、社宅の広さが16畳ある場合は、
・東京 :2,590円×16畳=41,440円
・北海道:1,000円×16畳=16,000円 となります。
社宅の使用料をまったく徴収していない場合は、この金額を標準報酬月額に含めて、社会保険に届け出をします。反対にこの金額以上を社宅使用料などとして徴収していれば、社会保険においては社宅の現物給与はないということになります。
計算例では広さを16畳としましたが、実際の社宅は、トイレ、台所、浴室等があります。社会保険の現物給与の社宅の広さを計算する際は、そのすべてを含める必要はありません。
社会保険の現物給与の価額の計算にあたっては、居間、茶の間、寝室、客間、書斎、応接間、仏間、食事室など「居住用の部屋」が対象になります。なお、畳のない部屋については、1.65平米を1畳として換算します。
反対に、玄関、台所(炊事場)、トイレ、浴室、廊下、農家の土間などの居住用以外の場所、あるいは営業用に使用している場所は面積に含めません。
前回説明した通り、住宅手当で支給している場合は、その全額が社会保険の標準報酬月額の算定の基礎に含まれます。社宅の場合は一定の社宅使用料を徴収していれば算入されず、仮に算入されたとしてもだいぶ少ない金額であることがお分かりいただけたかと思います。
なお、現物給与の価額が改定されたときは、固定的賃金の変更とみなされ、月額変更の判定の起算月になります。社宅を社会保険上の現物給与として届け出ている会社はご注意ください。
(健康保険組合に加入している会社では、規約で上記と異なる取り扱いになっている場合があります。加入している健康保険組合に算定方法を確認ください。)
次回は、社宅の場合の労働保険料の計算について紹介していきます。
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第101回振替休日と代休の違い
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第100回産後パパ休暇と給与計算
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第99回社会保険の定時決定~その2
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第98回社会保険の定時決定~その1
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第97回雇用保険の料率変更
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第96回定年延長と退職金
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第95回夜勤シフトの割増賃金
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第94回休業補償と休業手当
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第93回社会保険の適用拡大について
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第92回令和3年の年末調整
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第91回兼業している65歳以上の方の雇用保険
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第90回個人型確定拠出年金(iDeCo)
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第89回社宅家賃や社員旅行の積立金
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第88回感染対策費用の課税・非課税
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第87回兼業、副業の時間外手当
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第86回2以上事業所勤務者の社会保険料
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第85回有給休暇と残業手当
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第84回在宅勤務手当の非課税計算
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第83回延長された社会保険の特例改定
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第82回育児・介護休業法の改正
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第81回年末調整のイレギュラー対応
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第80回年末調整の変更点~その2
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第79回年末調整の変更点~その1
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第78回厚生年金保険保険料の上限引き上げ
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第77回新型コロナウイルスによる社会保険標準報酬月額の特例改定
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第76回寡婦控除の見直し
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第75回住民税の特別徴収
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第74回在宅勤務時の労働時間と割増賃金
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第73回高年齢労働者の雇用保険料免除の廃止
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第72回休業手当の計算方法
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第71回源泉所得税の仕組み
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第70回時間単位の有給休暇付与
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第69回短時間労働者の社会保険の適用拡大
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第68回60時間超の残業の割増率の猶予措置廃止
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第67回フレックスタイム制の改正と残業代
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第66回健康保険の加入資格と保険料
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第65回厚生年金保険の加入資格と保険料
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第64回介護保険料を徴収するタイミング
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第63回社会保険における賃金とは
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第62回労働保険における賃金とは
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第61回労働基準法における賃金とは
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第60回出来高払い制の残業代
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第59回休業手当の計算方法
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第58回賞与における所得税の計算
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第57回年末調整(住宅ローン控除)の実務
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第56回年末調整の変更点
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第55回社宅制度と労働保険料
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第54回社宅制度と社会保険料
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第53回住宅手当と社宅貸与の違い
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第52回退職金の税務計算
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第51回賃金支払いの5原則~その4(最終回)
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第50回賃金支払いの5原則~その3
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第49回賃金支払いの5原則~その2
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第48回賃金支払いの5原則~その1
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第47回時給者の有給休暇の賃金の計算方法
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第46回割増賃金の基礎となる賃金
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第45回年末調整の留意点~その2
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第44回年末調整の留意点~その1
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第43回退職者の住民税
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第42回労働時間の端数処理
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第41回入社した従業員がすぐに退職したとき
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第40回賃金から控除できる項目と労使協定
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第39回1か月60時間超の残業の割増率と代替休暇
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第38回退職者の社会保険料徴収とタイミング
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第37回雇用保険料率の改定と変更のタイミング
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第36回最低賃金の仕組み
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第35回毎月の給与からの源泉所得税の徴収
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第34回65歳以上の従業員に対する雇用保険の法改正
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第33回今年の年末調整の留意点
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第32回年末調整における海外居住の扶養家族
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第31回年末調整におけるマイナンバーの取扱
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第30回従業員が死亡したとき
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第29回雇用保険料と介護保険料の免除
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第28回企画業務型裁量労働制と割増賃金の考え方
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第27回事業場外労働に関するみなし労働時間制度の考え方
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第26回専門業務型裁量労働制と割増賃金の考え方
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第25回1週間単位の変形労時間制度
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第24回フレックスタイム制の労働時間制度
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第23回1年単位の変形労時間制度
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第22回1か月単位の変形労時間制と残業代の関係
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第21回管理職への残業代の支払い
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第20回今年の年末調整で昨年から変更になった点
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第19回社会保険料の仕組みと変更時期
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第18回通勤費の決め方と非課税限度額
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第17回報奨金の現金支給や現物給与
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第16回徹夜勤務や遅刻をした日の残業代の支払い
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第15回有給休暇の付与と消滅
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第14回給与の支給日の決め方やその変更
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第13回給与計算の誤入力を修正するときの注意点
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第12回標準報酬月額の随時改定
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第11回年間の給与計算の流れ
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第10回年末調整の後の諸手続き
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第09回離婚時の年金の分割制度
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第08回年末調整その1~年末調整の意味と対象者~
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第07回遅刻をした日に残業をしたときの計算方法
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第06回就業規則と給与計算の関係
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第05回給与から引かれるものは?
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第04回残業代を正しく計算するための基礎知識
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第03回賞与の支給と給与計算
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第02回産前産後休業や育児休業の仕組みと社会保険料
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第01回消費税増税で変わる通勤手当と社会保険料