日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第59回  投稿:2019.02.05 / 最終更新:2020.09.01

休業手当の計算方法

パートタイマーやアルバイトを主力にしている会社では、「人員が過剰になってしまったので、当日のシフトに組み込まれていたアルバイトを出勤させずに休ませた」というケースがあります。
この場合、会社は休業手当を従業員に支払う義務があります。給与計算業務において疑問になるのが、休業手当は、「課税対象になるのか」「雇用保険料を徴収するのか」といった点です。また、「その日の一部を休業した場合も休業手当を支払うのか」という点も疑問が残るところです。
今回は、休業手当についてみていきます。

休業手当とは

労働基準法第26条で「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」とされています。
このルールは、労働者であればどのような契約形態の方でも適用されます。「正社員は適用されるがパートタイマーやアルバイトは適用されない」といったことはありません。

使用者の責めに帰すべき事由による休業か否かについては、通達が出されており、以下のどちらかに該当するような場合は、休業手当の支給対象となります。

1)親工場の経営難から、下請工場が資材、資金の獲得ができずに休業した場合
2)原料の不足、事業設備の欠陥により休業した場合等

これだけを見ると、特別な場合だけ休業手当を支給すれば良いように感じるかもしれません。しかし、使用者が労働者に対して休業手当を支払わなければならないケースは、使用者側に起因する経営、管理上の障害も含まれるという判例もでています。思っているよりも、使用者の責めに帰すべき事由と判断される範囲が広いと認識をしておいた方が良いでしょう。
使用者の責めに帰すべき事由に該当しないのは、次のような場合だけです。

1)天災事変による休業
2)法令に基づいて行うボイラーの検査のための休業
3)労働安全衛生法の規定による健康診断の結果に基づいて行った休業や労働時間の短縮など
4)正当なロックアウト(労働争議で行われる工場閉鎖のこと)による休業
5)ストライキのため、全面的に操業を停止しなければならない場合に、一部のストライキ不参加者に命じた休業など

なお、派遣労働者の場合について、使用者の責めに帰すべき事由に該当するかどうかについては、派遣元の事情で判断されることになります。

休業手当の支払について

休業手当は、労働基準法上の賃金に該当します。そのため、雇用保険料、社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)、所得税などの控除の対象となりますし、賃金支払いの5原則も適用されます。

休業手当の金額は、次の2つの計算結果の高い金額になります。基本給の60%を支給すれば良いわけではありませんので、ご注意ください。

1)過去3ヶ月間の賃金総額(通勤費や残業代を含みます)÷その間の総暦日数×60%
2)過去3ヶ月間の賃金総額÷その間の労働日数×60%×60%

(過去3ヶ月とは、休業日の直前の賃金締切り日からさかのぼって3ヶ月間を指します)

「午前中は勤務して午後は休業する」「お客様が少ないから決められた時間より早くアルバイトを帰す」というようなケースの場合は、現実に勤務した時間に対して支払われる賃金が、平均賃金の60%に相当する金額に満たない場合は「その差額」を支払うことになります。
つまり、その日の実際の労働時間に対して支給する給与の総額が、上で計算した休業手当より多ければ、休業手当の支給はしなくてもよいということです。平均して1日8時間働いているパートタイマーやアルバイトであれば、おおむね5時間程度働いていれば、早く勤務を終了したとしても、休業手当の支給は不要になることが多いようです。

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