労働基準法における賃金とは
目次
会社が従業員に対して、「結婚祝金」「傷病見舞金」「弔慰金」等を支給することがあります。これらを現金で直接従業員に手渡すのではなく、月々の給与にプラスして銀行振り込みをしている会社もあるようです。
月々の給与に結婚祝金等をプラスして支給したときに、担当者が正しく理解していないと誤った計算になってしまいます。
今回は、労働基準法における賃金の定義について、確認していきたいと思います。
労働基準法での賃金の定義
賃金の定義は、労働基準法第11条で定められています。
「労働基準法で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」
この条文でのポイントは2点です。
1)労働したことの対償として支払ったものかどうか?
2)使用者が労働者に対して支払っているものかどうか?
当たり前のことですが、会社によって手当などの名称はさまざまです。給与計算業務を行っていく中で、労働基準法上の賃金に該当するかどうか迷ったときには、上記2点の両方にあたるか否かを確認すれば、正しい判断ができると思います。
行政からは、賃金に「該当する場合」と「しない場合」の通達が出されています。通達をあらためて確認してみましょう。
賃金に該当する場合
1)労働協約、就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件が明確である場合の退職手当は、賃金である。
2)労働者が負担すべき社会保険料を使用者が労働者に代わって負担する場合、当該使用者が負担する部分は賃金に該当する。
3)現物給与に関しては、労働者から代金を徴収するものは原則として賃金ではないが、その徴収金額が実際費用の3分の1以下であるときは、徴収金額と実際費用の3分の1との差額分については、これを賃金とみなすこととしている。
賃金に該当しない場合
1)実費弁償的なもの(出張旅費等)は賃金ではない。
2)使用者が任意的、恩恵的に支払うもの(退職金、結婚祝金、香典)は賃金ではない。ただし、あらかじめその支給条件が労働協約、就業規則、労働契約等によって、明確にされているものについては賃金とみなされる。
3)会社法による新株予約権(ストック・オプション)制度について、この制度から得られる利益は、それが発生する時期及び額ともに労働者の判断にゆだねられているため、労働の対象ではなく賃金ではない。(労働基準法上は賃金に該当しませんが、所得税法上は賃金に該当することになっています)
4)旅館の従業員などが客から直接受けるチップは、使用者が労働者に支払うものではないので賃金ではない。
つまり、会社が従業員に対して、結婚祝金や見舞金等を支給する場合、就業規則や給与規程などで支給要件が明確に定められていれば、賃金に「該当」します。
その一方で支給要件について明確な規定を定めていない場合は、賃金に「該当しない」ことになります。
今回は、労働基準法の賃金の定義について紹介をしてきました。しかし、仮に結婚祝金や見舞金等が労働基準法の賃金に該当する場合であっても、ほかの法律では、異なる取り扱いがされます。
次回は、労災保険法や雇用保険法、健康保険法の賃金や報酬の定義についてみていきたいと思います。
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