日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第63回  投稿:2023.09.04 / 最終更新:2023.08.22

社会保険における賃金とは

 

前回と前々回で「労働基準法」と「労働保険」における賃金の定義について見てきました。今回は、社会保険における賃金の定義について見てきたいと思います。

 

標準報酬月額と標準賞与額

健康保険(介護保険を含む)や厚生年金保険では、被保険者が会社から受ける毎月の給料などの報酬の月額を、区切りのよい幅で区分した「標準報酬月額」に照らし合わせて決定し、保険料と保険給付の額を計算します。

 

賞与についても、各種控除前の賞与総額から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額を設定し、それにより保険料等を計算します。

この「標準賞与額」については、それぞれ上限額が設定されています。健康保険は「年間573万円」、厚生年金保険「1ヶ月150万円」です。健康保険の年間の上限は「毎年4月1日から翌年3月31日まで」の一年度の中で支払われた金額の累計により決定します。仮にその年度にすでに500万円の賞与を支給している方に対し、さらに300万円の賞与を支給する場合は、上限額までの「73万円」に対する健康保険料を控除することになります。賞与の計算を行う際には、年度の総額についても注意を支払う必要があります。

 

毎月の給与計算に使用する標準報酬月額は、健康保険は1等級の5万8千円から50等級の139万円までの50等級、厚生年金保険は1等級の8万8千円から31等級の62万円までの31等級に区分されています。健康保険の保険料率は加入している健康保険や都道府県により異なりますが、区分については全国共通です。

等級の区分は、健康保険の場合、標準報酬月額の上限該当者が、3月31日現在で全被保険者の1.5%を超えたときは、政令でその年の9月1日から一定範囲で標準報酬月額の上限を改定することができることになっています。また、厚生年金保険については、3月31日におけるすべての厚生年金被保険者の標準報酬月額の平均額の2倍に相当する額が標準報酬月額等級の最高等級の標準報酬月額を上回り、その状態が継続すると認められる場合には最高等級の上に等級を追加することができるとされています。

 

報酬について

標準報酬月額の対象となる報酬は、次のいずれかを満たすものとなります。
1)被保険者が自己の労働の対償として受けるものであること。
2)事業所から経常的かつ実質的に受けるもので、被保険者の通常の生計にあてられるもの。

 

この要件を踏まえ、報酬に含まれるか否かをもう少し詳しく見ていきましょう。

 

報酬の対象となるもの

基本給、能率給、奨励給、役付手当、職階手当、特別勤務手当、勤務地手当、物価手当、日直手当、宿直手当、家族手当、休職手当、通勤手当、住宅手当、別居手当、早出残業手当、継続支給する見舞金など。

なお、年4回以上支給される賞与についても標準報酬月額の対象となる報酬に含まれるという点には注意が必要です。

 

対象とならないもの

退職手当、恩恵的に支給する見舞金、株主配当金、出張旅費、出張手当など。

 

社会保険料は、徴収する金額が雇用保険と比べて高いため、万が一判断を誤っていて過去にさかのぼって修正するとなると、従業員が持つ負担感はとても大きくなってしまいます。会社に対しての不満を募らせてしまう可能性もありますので、報酬に含まれるか否かの判断は慎重に行いましょう。

念のため、会社が支給している手当等が社会保険の報酬に含むべきものかどうか、あらためてチェックしてみてください。

 

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