感染対策費用の課税・非課税
目次
新型コロナウイルス感染防止の観点から、会社が従業員に対して、マスク等の購入費用やPCR検査の費用を負担するケースがみられます。これらの費用のうち、内容によっては会社が負担した費用が給与扱いとなり、所得税の課税処理が必要になります。
会社が従業員の感染予防対策費用を負担した場合の取り扱いについては、国税庁が作成した「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」の中に示されています。
令和3年6月22日にFAQの内容が更新されましたので、今回は感染予防対策費用を会社が負担した場合の所得税の取り扱いについてみていきたいと思います。
マスク、石鹸、消毒液、消毒用ペーパー、手袋などの消耗品の購入費
勤務時に使用する必要があるマスク等の消耗品の購入費については、業務のために必要な費用となります。この場合は、会社が従業員に対して購入費用を支給しても、従業員に対する給与として課税されません。
一方で、勤務とは関係なく使用するマスク等の購入費用や、従業員の家族など従業員以外の者が使用する費用を支給するものについては、業務のために必要な費用ではないので、その費用を会社が負担した場合は、従業員に対する給与として課税対象となります。
従業員の自宅に設置する仕切り、カーテン、椅子、机、空気清浄機などの備品の購入費
テレワークを行うための自宅の環境整備費用等については、業務のために必要な費用となります。そのため、会社が従業員に対して購入費用を支給した場合でも、従業員に対する給与として課税されません。また、会社が所有する備品を業務に使用する目的で従業員に貸与する場合も、従業員に対する給与として課税されません。
一方で、業務とは関係なく使用する電化製品等について会社が費用負担をした場合は、業務のために必要な費用でないため、従業員に対する給与として課税対象となります。
また、業務のために必要な備品であったとしても、従業員が所有権を持つものに対して会社が使用料を支払った場合は、給与として課税対象となる場合があるので注意が必要です。
感染が疑われる場合のホテル等の利用料・ホテル等までの交通費など
会社でテレワークを認めている場合は、テレワークにかかる利用料や交通費については、従業員に対する給与として課税されません。会社がホテル等に利用料を直接支払う場合も同様の取り扱いとなります。
ただし、従業員が自己の判断によりホテル等に宿泊した場合の利用料等については、業務外の費用となりますので、従業員に対する給与として課税対象となります。
PCR検査費用、室内消毒の外部への委託費用など
会社の業務命令により受けたPCR検査費用や、テレワークに関連して業務スペースを消毒する必要がある場合の費用等については、業務のために必要な費用となります。そのため、会社が従業員に対して費用を支給した場合でも、従業員に対する給与として課税されません。
ただし、従業員が自己の判断により受けたPCR検査費用や、従業員が自己の判断により支出した消毒費用などは業務外の費用となりますので、従業員に対する給与として課税対象となります。
今回は、感染防止対策費用の所得税の取り扱いについて紹介をしました。原則的には、会社が負担した費用が業務に必要であるかどうかが判断基準となります。業務に必要な費用であれば、従業員に対して清算する場合だけでなく、会社が直接、サービスを受けた相手に支払いを行った場合でも課税処理をする必要はありません。
しかし、業務とは直接関係のない費用を会社が負担した場合は、従業員に対して給与として課税する必要があります。これらの費用の支給がある場合には、支給するタイミングに合わせ、給与計算時に課税所得として反映させる必要があります。
後で「実は課税所得だったので所得税を徴収します。」というような事態が起きると、会社への不信感につながってしまうおそれがあります。費用負担をする場合はその趣旨を明確にし、課税・非課税の適切な判断をするようにしましょう。
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