日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第95回  投稿:2024.10.02 / 最終更新:2024.09.20

夜勤シフトの割増賃金

人事給与統合システム×人事給与アウトソーシング

医療関係やコンビニエンスストアなどの業種では、夜勤シフトが組まれることがあります。それだけでなく、夜勤明けの日にさらに勤務を行うケースもあります。このような場合の、割増賃金の計算方法の問い合わせを受けるケースがあります。

今回は、夜勤シフト時の割増賃金の考え方について説明したいと思います。

割増賃金の基本的な考え方

割増賃金を計算する場合は、時給換算して割増賃金の基礎となる単価を計算します。時給で雇用契約を締結している場合で、他に手当等がない場合は、契約をしている時給が割増賃金の基礎単価になります。

基本給以外の手当で、月額で決められた手当がある場合は、手当分を下の月給制の計算式に当てはめて単価を算出し、時給に加算してください。

月給制の場合には、1時間あたりの賃金額に換算し、残業代の計算を行う必要があります。式は次の通りです。

1時間当たりの賃金額 = 月給 ÷ 1年間における1ヶ月平均所定労働時間数

なお、この月給は、原則として基本給や役職手当などの各種手当の合算額となります。ただし、労働基準法で次の手当については算入しなくてもよいとされています。これらは制限的に列挙されているものなので、これ以外の手当はすべて算入しなくてはなりません。

・家族手当・・・家族数に応じて算定されるものに限る

・通勤手当・・・交通費や距離に応じて算定されるものに限る

・住宅手当・・・住宅の費用に応じて算定されるものに限る

・別居手当

・子女教育手当

・臨時に支払われた賃金

・1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

これらの手当は労働と直接的な関係が薄く、個人的事情に基づいて支給されている賃金であるため、計算単価から除外されています。なお、家族手当・通勤手当・住宅手当であっても、各個人の状況に応じて支給されておらず一律に支給されている場合は、月給に含めて計算をする必要があります。

1ヶ月平均所定労働時間数については、次の計算式で求めることができます。

・「年間の所定労働日数が決まっている場合」

年間所定労働日数×1日の所定労働時間数÷12ヶ月

・「年間の所定労働日数が決まっていない場合」

(365日-所定休日日数)×1日の所定労働時間数÷12ヶ月

割増賃金率について

労働基準法上、労働時間は、1日8時間、1週40時間と決められています。この労働時間を超えた場合には、事業主は割増賃金を支払う必要があります。

割増賃金率については以下のように定められています。


1)時間外労働・・・2割5分以上(1ヶ月60時間を超える場合は5割以上)
2)休日労働・・・・3割5分以上
3)法定労働時間内の深夜労働・・・・・2割5分以上
4)時間外労働が深夜に及んだ場合・・・5割以上(1ヶ月60時間を超える場合は7割5分以上)
5)休日労働が深夜に及んだ場合・・・・6割以上

※( )内については、中小企業は2023年4月から施行されることになっています。

割増賃金の基本的な考え方は以上の通りです。

それでは、夜勤シフト時の割増賃金の計算方法について、具体例を使って計算を考えていきたいと思います。

労働基準法での1日の考え方

労働基準法での1週間とは、就業規則その他に特別の定めがない限り、「日曜日から土曜日まで」のいわゆる暦週が1週間とされます。また、1日とは、「午前0時から午後12時まで」のいわゆる暦日のことを指します。

ただし、継続した勤務が午後12時を超えて2暦日にわたる場合には、1勤務として取り扱います。夜勤のように、午後8時出勤、翌午前5時退勤といった場合でも、1勤務になるのです。

徹夜勤務での残業代の計算方法につい

実務上、給与計算に誤りがおきがちなのは、夜勤明けの日に労働をした場合の残業代の計算です。今回は計算がわかりやすいように、月給ではなく、

「時給1,000円、始業時間21時、終業時間6時、休憩1時間の実働8時間のシフト勤務」として考えていきます。

残業せずに退勤した場合

・21:00~  22:00 通常の勤務になるため、この時間の時給は1,000円

・22:00~翌 5:00 深夜勤務となるため、この間の時給は1,250円(1,000円×1.25)

・ 5:00~    6:00     通常の勤務になるため、この間の時給は1,000円

残業した場合

退勤時間の6時を超えて勤務した場合は、前の日の勤務が続いていると考えるため、時間外労働となります。この間の時給は1,250円となります。(1,000円×1.25)

ここで問題ないのは、どこまで残業として考えるかです。前日から継続勤務していると判断された場合は、理論上は、翌日の21時までの時給は1,250円となります。しかし、次の日のシフトがあらかじめ決まっている場合は、その始業時刻までが残業になります。

例えば、次の日のシフトが、朝9時~18時まで(休憩1時間)のシフトになっている場合は、

・ 6:00~ 9:00  時間外労働となるため、この間の時給は1,250円(1,000円×1.25)

・ 9:00~ 18:00  通常の勤務(翌日の勤務)になるため、この時間の時給は1,000円

翌日のシフトがあらかじめ決まっている場合などは、このようにどこまでが残業なのか明白です。しかし、そうでない場合は、労働が継続しているかどうかの判断基準(インターバルの時間等)が特に設けられているわけではありません。あくまでも実態に応じて判断することになります。

夜勤明けに勤務が継続している場合は、タイムカードや出勤簿をみるだけでは、継続しているかどうかの判断ができません。事前のシフトなのか、当日指示されたものなのか、どのような指示があったのかなどを、直接確認をしてから判断するようにしましょう。


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