雇用保険の料率変更
目次
新型コロナウイルスの感染拡大による雇用調整助成金の支給額の急増により、雇用保険の財政がひっ迫したため、雇用保険の料率が引き上げられることになりました。
令和4年度の雇用保険料率は、これまでの年度と違って、年度の途中で保険料率が変わります。令和4年4月1日~9月30日までの雇用保険料率については、事業主負担分のみが引き上げになり、労働者負担分は令和3年度と変更はありません。令和4年10月1日~令和5年3月31日までの保険料率については、上半期の料率から、労働者・事業主負担ともに、さらに2/1000引き上げられます。
今回は、令和4年度の雇用保険料率について説明したいと思います。
令和4年度の雇用保険料率について
雇用保険は、労使折半の「失業等給付」と「育児休業給付」、全額事業主負担の「雇用保険二事業」により保険料率が決められています。
このうち、令和4年4月1日から「雇用保険二事業」の料率が、令和4年10月1日から「失業等給付」の料率が引き上げられます。(育児休業給付は変更なし)
したがって、給与計算で従業員それぞれから控除する労働者負担分は、令和4年4月1日~令和4年9月30日までは令和3年度と同様で、令和4年10月1日~令和5年3月31日までが引き上げられることになります。
一般の事業の場合の労働者負担分は、令和4年4月1日~9月30日までが3/1000、令和4年10月1日~令和5年3月31日までが5/1000になります。
・令和4年4月1日~令和4年9月30日( 雇用保険料率 )
労働者負担率 | 事業主負担率 | 雇用保険料率 | |
一般の事業 | 3/1000 | 6.5/1000 | 9.5/1000 |
農林水産・清酒製造の事業 | 4/1000 | 7.5/1000 | 11.5/1000 |
建設の事業 | 4/1000 | 8.5/1000 | 12.5/1000 |
・令和4年10月1日~令和5年3月31日( 雇用保険料率 )
労働者負担率 | 事業主負担率 | 雇用保険料率 | |
一般の事業 | 5/1000 | 8.5/1000 | 13.5/1000 |
農林水産・清酒製造の事業 | 6/1000 | 9.5/1000 | 15.5/1000 |
建設の事業 | 6/1000 | 10.5/1000 | 16.5/1000 |
雇用保険料控除の変更時期について
雇用保険の計算は、実際に支給される給与金額に雇用保険料率を乗じて雇用保険料を決定するため、社会保険の徴収事務に比べてミスの発生率は高くありません。しかし、雇用保険料率の変更時に関しては注意が必要になります。
雇用保険料率が改定されるといつの分の給与から雇用保険料を改定しなければならないのでしょうか?意外に知識が曖昧な方が多く、給与計算を間違えてしまっているケースが見受けられます。
料率の改定があることをきちんと把握していたとしても、「10月に保険料率が改定されたから10月に支払われる給与から保険料率を変更した」ような場合は、賃金の締切日によっては誤っていることがあります。雇用保険料の徴収は、賃金の支払日で判断するのではなく、締切日で判断するのが正しい徴収方法です。
つまり、支払日が同じ10月であっても、賃金締切日が9月30日以前であれば9月の保険料率、10月1日以降の賃金締切日であれば10月の保険料率で計算するということです。
(例1) 当月締 当月払いの場合
締日:10月20日 支払日:10月31日 → 10月の料率(新料率)で計算
(例2) 当月締 翌月払いの場合
締日:9月30日 支払日:10月25日 → 9月の料率(従前)で計算
このように、あくまでも賃金締日を基準にして計算するルールになっています。くり返しになりますが、間違いが多いのは賃金支払日で判断している場合です。
この賃金締切日を基準にする考え方は、労働保険料の申告と同じです。雇用保険料の徴収をズレて行ってしまうと、労働保険料の申告も誤ってしまう可能性があるので、注意が必要です。
労働保険料の申告について
例年6月から7月にかけて行う令和4年度の年度更新では、令和4年度の概算保険料と令和3年度の確定保険料を申告・納付することになります。
令和4年度の概算保険料(雇用保険分)については、令和4年4月1日から令和4年9月30日までの概算保険料額と、令和4年10月1日から令和5年3月31日までの概算保険料額を賃金集計表などで計算を行い、その合計額を令和4年度の概算保険料(雇用保険分)として申告・納付する予定となっています。
今回は、雇用保険料率の変更について紹介をしました。令和4年度は、年度の途中で雇用保険料率が変わるイレギュラーな年度です。賃金の締切日と料率の変更のタイミングが正しいか、再度確認をしてみてください。
鈴与シンワート株式会社が提供する人事・給与・勤怠業務と財務・会計業務ソリューションはこちらからご覧ください。
-
第101回振替休日と代休の違い
-
第100回産後パパ休暇と給与計算
-
第99回社会保険の定時決定~その2
-
第98回社会保険の定時決定~その1
-
第97回雇用保険の料率変更
-
第96回定年延長と退職金
-
第95回夜勤シフトの割増賃金
-
第94回休業補償と休業手当
-
第93回社会保険の適用拡大について
-
第92回令和3年の年末調整
-
第91回兼業している65歳以上の方の雇用保険
-
第90回個人型確定拠出年金(iDeCo)
-
第89回社宅家賃や社員旅行の積立金
-
第88回感染対策費用の課税・非課税
-
第87回兼業、副業の時間外手当
-
第86回2以上事業所勤務者の社会保険料
-
第85回有給休暇と残業手当
-
第84回在宅勤務手当の非課税計算
-
第83回延長された社会保険の特例改定
-
第82回育児・介護休業法の改正
-
第81回年末調整のイレギュラー対応
-
第80回年末調整の変更点~その2
-
第79回年末調整の変更点~その1
-
第78回厚生年金保険保険料の上限引き上げ
-
第77回新型コロナウイルスによる社会保険標準報酬月額の特例改定
-
第76回寡婦控除の見直し
-
第75回住民税の特別徴収
-
第74回在宅勤務時の労働時間と割増賃金
-
第73回高年齢労働者の雇用保険料免除の廃止
-
第72回休業手当の計算方法
-
第71回源泉所得税の仕組み
-
第70回時間単位の有給休暇付与
-
第69回短時間労働者の社会保険の適用拡大
-
第68回60時間超の残業の割増率の猶予措置廃止
-
第67回フレックスタイム制の改正と残業代
-
第66回健康保険の加入資格と保険料
-
第65回厚生年金保険の加入資格と保険料
-
第64回介護保険料を徴収するタイミング
-
第63回社会保険における賃金とは
-
第62回労働保険における賃金とは
-
第61回労働基準法における賃金とは
-
第60回出来高払い制の残業代
-
第59回休業手当の計算方法
-
第58回賞与における所得税の計算
-
第57回年末調整(住宅ローン控除)の実務
-
第56回年末調整の変更点
-
第55回社宅制度と労働保険料
-
第54回社宅制度と社会保険料
-
第53回住宅手当と社宅貸与の違い
-
第52回退職金の税務計算
-
第51回賃金支払いの5原則~その4(最終回)
-
第50回賃金支払いの5原則~その3
-
第49回賃金支払いの5原則~その2
-
第48回賃金支払いの5原則~その1
-
第47回時給者の有給休暇の賃金の計算方法
-
第46回割増賃金の基礎となる賃金
-
第45回年末調整の留意点~その2
-
第44回年末調整の留意点~その1
-
第43回退職者の住民税
-
第42回労働時間の端数処理
-
第41回入社した従業員がすぐに退職したとき
-
第40回賃金から控除できる項目と労使協定
-
第39回1か月60時間超の残業の割増率と代替休暇
-
第38回退職者の社会保険料徴収とタイミング
-
第37回雇用保険料率の改定と変更のタイミング
-
第36回最低賃金の仕組み
-
第35回毎月の給与からの源泉所得税の徴収
-
第34回65歳以上の従業員に対する雇用保険の法改正
-
第33回今年の年末調整の留意点
-
第32回年末調整における海外居住の扶養家族
-
第31回年末調整におけるマイナンバーの取扱
-
第30回従業員が死亡したとき
-
第29回雇用保険料と介護保険料の免除
-
第28回企画業務型裁量労働制と割増賃金の考え方
-
第27回事業場外労働に関するみなし労働時間制度の考え方
-
第26回専門業務型裁量労働制と割増賃金の考え方
-
第25回1週間単位の変形労時間制度
-
第24回フレックスタイム制の労働時間制度
-
第23回1年単位の変形労時間制度
-
第22回1か月単位の変形労時間制と残業代の関係
-
第21回管理職への残業代の支払い
-
第20回今年の年末調整で昨年から変更になった点
-
第19回社会保険料の仕組みと変更時期
-
第18回通勤費の決め方と非課税限度額
-
第17回報奨金の現金支給や現物給与
-
第16回徹夜勤務や遅刻をした日の残業代の支払い
-
第15回有給休暇の付与と消滅
-
第14回給与の支給日の決め方やその変更
-
第13回給与計算の誤入力を修正するときの注意点
-
第12回標準報酬月額の随時改定
-
第11回年間の給与計算の流れ
-
第10回年末調整の後の諸手続き
-
第09回離婚時の年金の分割制度
-
第08回年末調整その1~年末調整の意味と対象者~
-
第07回遅刻をした日に残業をしたときの計算方法
-
第06回就業規則と給与計算の関係
-
第05回給与から引かれるものは?
-
第04回残業代を正しく計算するための基礎知識
-
第03回賞与の支給と給与計算
-
第02回産前産後休業や育児休業の仕組みと社会保険料
-
第01回消費税増税で変わる通勤手当と社会保険料