フレックスタイム制におけるみなし残業代
目次
清算期間が1ヶ月を超えるフレックスタイム制を導入している場合で、みなし残業制度も併用している場合の残業代の計算は、多少特殊な計算が必要です。
今回は、フレックスタイム制における残業代の計算方法について説明していきたいと思います。
フレックスタイム制の概要について
フレックスタイム制とは、一定期間(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で始業時間や終業時間を自分自身で決定をしながら働くことができる制度です。
そのため、1日ごとに残業時間の計算を行うことはありません。原則は、清算期間のトータルの時間によって、残業時間が発生しているかを判断します。
フレックスタイム制の法定労働時間
フレックスタイム制における法定労働時間は、清算期間の長さとその間の暦日数によって決まります。
計算方法は、清算期間の暦日数/7×40時間 です。
清算期間が1ヶ月の場合であれば、その月の総労働時間が、上の「1ヶ月単位」の法定労働時間の総枠を超えた時間が残業時間となり、割増賃金の支払い義務が生じることになります。
なお、所定労働時間と法定労働時間の差については、割増は必要ありませんが、残業代の支払いは必要になります。ただし、それを加味すると判りづらくなりますので、本コラムでは計算手順を理解してもらうためにも所定労働時間と法定労働時間の差については触れません。

1ヶ月を超える清算期間の場合の残業時間
清算期間が1ヶ月を超える場合の時間外労働の計算方法は、単純に法定労働時間の総枠を計算するだけではありません。計算手順について、確認していきましょう。
今回は、清算期間を4月1日~6月30日までの3ヶ月とします。それぞれの労働時間については、4月:220時間 5月:180時間 6月:140時間の労働を行ったものとします。
1.1ヶ月ごとに週平均が50時間以上になっている月の有無を確認
清算期間が1ヶ月を超える場合では、清算期間の総労働時間数だけではなく、週平均労働時間が50時間を超える時間については残業時間となります。
週平均50時間となる月間の労働時間については以下のとおりです。
| その月の暦日数 | 週平均50時間となる月間の労働時間数 |
| 31日 | 221.4時間 |
| 30日 | 214.2時間 |
| 29日 | 207.1時間 |
| 28日 | 200.0時間 |
実際に労働した時間数は、4月:220時間 5月:180時間 6月:140時間なので、上の表と照らし合わせ、4月は5.8時間超過していることになります。
この部分は、4月分の給与支払日に割増賃金を支払う必要があります。
週平均50時間を超えているかのチェックは、毎月の給与計算時に行う必要があります。
2.清算期間が終了後に法定労働時間の総枠を超えた分の割増賃金の支払
今回は、4月1日から6月30日までで清算期間を設定しています。4月から6月までの暦日数は、91日となります。そのため、法定労働時間の総枠は520時間となります。
4月から6月までの実労働時間は、540時間だったので20時間超過していることになります。ただし、すでに4月に5.8時間分については清算をしているので、20時間から5.8時間を控除した14.2時間分を時間外労働として計算することになります。
清算期間の総枠を超えて労働した時間については、清算期間終了後に最終月の時間外労働としてカウントすることになります。
そのため、14.2時間分は、6月分の給与支払日に割増賃金を支払う必要があります。

みなし残業制度を導入している場合
みなし残業制度を導入している場合でも、残業時間のカウント方法は同様です。
たとえば、20時間分のみなし残業代を毎月支払っていたとします。4月に週平均50時間を超えた時間が5.8時間ありましたが、20時間のみなし残業代の範囲内であるため、追加で割増賃金を支払う必要はありません。
また総労働時間の総枠から支払い済みの5.8時間を控除した14.2時間についても、同様に考え、6月分の給与で支給する20時間のみなし残業代の範囲内であるため、追加で割増賃金を支払う必要はありません。
注意が必要なのは、みなし残業代は清算期間中の合計時間(20時間×3ヶ月)と考えるのではなく、その月の20時間分だけを支給していると判断されることです。
たとえば、4月:220時間、5月:200時間、6月:140時間の労働を行ったものとします。
1.4月は週平均50時間を超えるので、5.8時間分の割増賃金を4月分の給与で支給が必要。 4月のみなし残業代20時間の範疇なので、実際の追加の支払いはなし。 |
2.清算期間中の総労働時間は560時間となり、40時間が超過している。 内5.8時間は4月分で支給済みなので、34.2時間が6月分の残業時間とカウントされる。 6月の給与でのみなし残業代の20時間を差し引いた14.2時間分の残業代を追加で支給。 |
1ヶ月を超えるフレックスタイム制で見落としが起きやすいのは、週平均労働時間が50時間を超えた場合にはその月に割増賃金の支払い義務が生じるという点です。清算期間の最終月だけではなく、毎月超過時間を確認する必要があります。
また、清算期間中の法定労働時間と総労働時間の差異については、各月の労働時間数にかかわらず、すべて最終月の残業時間になる点も重要です。これは、総労働時間が確定するのが清算期間の最終日であることに起因しています。
特に、みなし残業代も併用している場合は、みなし残業代の制度の趣旨とズレが生じる可能性がありますので、正しく理解するようにしましょう。
鈴与シンワートでは従業員規模や機能性によって選べる人事・給与・就業・会計システム、自社オリジナルの「人事・給与業務アウトソーシングサービス」、クラウドサービスの「電子給与明細」「電子年末調整」、奉行クラウドと基幹システムの自動連携などを提供しています。
個社特有の課題やご要望にお応えいたしますので、是非お気軽にお問い合わせください。
-
第139回フレックスタイム制におけるみなし残業代
-
第138回出来高払制の保障給と最低賃金
-
第137回退職者に対する賞与の支給
-
第136回2025年 年末調整の留意点
-
第135回2025年度税制改正について~その2
-
第134回2025年度税制改正について
-
第133回フリーランス新法~その5
-
第132回フリーランス新法~その4
-
第131回フリーランス新法~その3
-
第130回フリーランス新法における取引条件の明示
-
第129回フリーランス新法の概要
-
第128回ストレスチェック制度と定期健康診断
-
第127回2024年 年末調整について
-
第126回社会保険の適用拡大
-
第125回所定外労働と法定時間外労働の違い
-
第124回定額減税と所得税の納付
-
第123回令和6年分所得税の定額減税の対象者
-
第122回令和6年分所得税の定額減税月次減税事務
-
第121回令和6年分所得税の定額減税の概要
-
第120回社会保険、雇用保険の料率と社会保険適用拡大
-
第119回企画業務型裁量労働制の法改正
-
第118回専門業務型裁量労働制の法改正
-
第117回雇用保険の加入要件
-
第116回年収の壁・支援強化パッケージ
-
第115回社会保険の扶養家族の年収の壁
-
第102回2022年10月からの給与計算の注意点
-
第113回平均賃金の計算方法
-
第112回有給休暇の買上げ
-
第111回運賃改定と社会保険
-
第110回現物給与の価額変更
-
第109回賃金のデジタル通貨払い
-
第108回令和5年度の雇用保険料率
-
第107回賃金請求権の消滅時効の延長
-
第106回月60時間超の残業の割増率と代替休暇
-
第105回令和5年からの源泉徴収事務の変更点
-
第104回育児休業の社会保険料免除
-
第103回デジタル通貨での給与の支払い
-
第101回振替休日と代休の違い
-
第100回産後パパ休暇と給与計算
-
第99回社会保険の定時決定~その2
-
第98回社会保険の定時決定~その1
-
第97回雇用保険の料率変更
-
第96回定年延長と退職金
-
第95回夜勤シフトの割増賃金
-
第94回休業補償と休業手当
-
第93回社会保険の適用拡大について
-
第92回令和3年の年末調整
-
第91回兼業している65歳以上の方の雇用保険
-
第90回個人型確定拠出年金(iDeCo)
-
第89回社宅家賃や社員旅行の積立金
-
第88回感染対策費用の課税・非課税
-
第87回兼業、副業の時間外手当
-
第86回2以上事業所勤務者の社会保険料
-
第85回有給休暇と残業手当
-
第84回在宅勤務手当の非課税計算
-
第83回延長された社会保険の特例改定
-
第82回育児・介護休業法の改正
-
第81回年末調整のイレギュラー対応
-
第80回年末調整の変更点~その2
-
第79回年末調整の変更点~その1
-
第78回厚生年金保険保険料の上限引き上げ
-
第77回新型コロナウイルスによる社会保険標準報酬月額の特例改定
-
第76回寡婦控除の見直し
-
第75回住民税の特別徴収
-
第74回在宅勤務時の労働時間と割増賃金
-
第73回高年齢労働者の雇用保険料免除の廃止
-
第72回休業手当の計算方法
-
第71回源泉所得税の仕組み
-
第70回時間単位の有給休暇付与
-
第69回短時間労働者の社会保険の適用拡大
-
第68回60時間超の残業の割増率の猶予措置廃止
-
第67回フレックスタイム制の改正と残業代
-
第66回健康保険の加入資格と保険料
-
第65回厚生年金保険の加入資格と保険料
-
第64回介護保険料を徴収するタイミング
-
第114回令和5年度の最低賃金
-
第63回社会保険における賃金とは
-
第62回労働保険における賃金とは
-
第61回労働基準法における賃金とは
-
第60回出来高払い制の残業代
-
第59回休業手当の計算方法
-
第58回賞与における所得税の計算
-
第57回年末調整(住宅ローン控除)の実務
-
第56回年末調整の変更点
-
第55回社宅制度と労働保険料
-
第54回社宅制度と社会保険料
-
第53回住宅手当と社宅貸与の違い
-
第52回退職金の税務計算
-
第51回賃金支払いの5原則~その4(最終回)
-
第50回賃金支払いの5原則~その3
-
第49回賃金支払いの5原則~その2
-
第48回賃金支払いの5原則~その1
-
第47回時給者の有給休暇の賃金の計算方法
-
第46回割増賃金の基礎となる賃金
-
第45回年末調整の留意点~その2
-
第44回年末調整の留意点~その1
-
第43回退職者の住民税
-
第42回労働時間の端数処理
-
第41回入社した従業員がすぐに退職したとき
-
第40回賃金から控除できる項目と労使協定
-
第39回1か月60時間超の残業の割増率と代替休暇
-
第38回退職者の社会保険料徴収とタイミング
-
第37回雇用保険料率の改定と変更のタイミング
-
第36回最低賃金の仕組み
-
第35回毎月の給与からの源泉所得税の徴収
-
第34回65歳以上の従業員に対する雇用保険の法改正
-
第33回今年の年末調整の留意点
-
第32回年末調整における海外居住の扶養家族
-
第31回年末調整におけるマイナンバーの取扱
-
第30回従業員が死亡したとき
-
第29回雇用保険料と介護保険料の免除
-
第28回企画業務型裁量労働制と割増賃金の考え方
-
第27回事業場外労働に関するみなし労働時間制度の考え方
-
第26回専門業務型裁量労働制と割増賃金の考え方
-
第25回1週間単位の変形労時間制度
-
第24回フレックスタイム制の労働時間制度
-
第23回1年単位の変形労時間制度
-
第22回1か月単位の変形労時間制と残業代の関係
-
第21回管理職への残業代の支払い
-
第20回今年の年末調整で昨年から変更になった点
-
第19回社会保険料の仕組みと変更時期
-
第18回通勤費の決め方と非課税限度額
-
第17回報奨金の現金支給や現物給与
-
第16回徹夜勤務や遅刻をした日の残業代の支払い
-
第15回有給休暇の付与と消滅
-
第14回給与の支給日の決め方やその変更
-
第13回給与計算の誤入力を修正するときの注意点
-
第12回標準報酬月額の随時改定
-
第11回年間の給与計算の流れ
-
第10回年末調整の後の諸手続き
-
第09回離婚時の年金の分割制度
-
第08回年末調整その1~年末調整の意味と対象者~
-
第07回遅刻をした日に残業をしたときの計算方法
-
第06回就業規則と給与計算の関係
-
第05回給与から引かれるものは?
-
第04回残業代を正しく計算するための基礎知識
-
第03回賞与の支給と給与計算
-
第02回産前産後休業や育児休業の仕組みと社会保険料
-
第01回消費税増税で変わる通勤手当と社会保険料









