日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第18回  投稿:2015.09.07 / 最終更新:2019.07.12

通勤費の決め方と非課税限度額

通勤費は、多くの会社で支給されている代表的な手当です。通勤費は支払われるのが当然のように思われていますが、法律上では必ずしも支払う義務はない手当です。

そのため、通勤費を支給するのかしないのか、支給する場合は算出方法をどうするのか、全額支給するのか、それとも一部を支給するのか、上限を設けるのか、先払いか後払いにするのかなどは、すべて会社が自由に決定することができます。

会社が自由に決定できるといっても、通勤費も賃金の一部です。そのため、雇用契約書や就業規則でいったん定めたルールを変更すると、内容によっては不利益変更の問題が生じます。よく検討した上で、就業規則等で明確なルールを定め、ルールに即した運用をすることが重要になります。

また、通勤費は金額によって課税、非課税の区分が変わります。電車やバスといった公共交通機関を利用した通勤と、マイカーや自転車での通勤といった利用手段によっても、この区分は変わります。

実際に給与計算をする際は、このような点にも注意が必要です。正しい計算がされていないと、税務調査等で源泉徴収税額の徴収漏れを指摘されることもあります。

利用可能な通勤経路のルール

都市部のように交通機関の発達している地域では、自宅から会社に行くまでの経路がひとつだけとは限りません。経路のとり方によっては、通勤時間が10分、20分と異なる場合もあります。

その一方で、交通費の金額も経路によってだいぶ違ってくることがあります。通勤の経路は、「最も合理的な経路として会社が許可したもの」「最も安価な経路」などといったルールを作っておくことが重要です。

また、よく問題となるのは、バスの利用です。バスは定期券代の割引が少ないため、比較的高額になりやすく、最寄り駅と自宅間のバス代を請求しておきながら、実は定期券を購入していないなどが問題になることもあります。そのため、「バスの利用は直線2キロメートル以上で、その大半を利用可能な場合に限る」などといった制約を明記しておいたほうが良いでしょう。

そのほかにも、引っ越しなどがあれば通勤費の金額は当然変わってきます。給与の締日にあわせて引っ越しをする方は、現実的にはほとんどいません。多くの会社では、その月は前の住所からの通勤費と新しい住所からの通勤費を日割り計算をしています。

このような場合の日割計算のルールも、就業規則等で定めておくほうが良いでしょう。

3ヵ月、6ヵ月も定期券代を支給する場合の注意点

3ヵ月や6ヵ月の定期券代は、1ヵ月定期より割安になるため、会社にとっては経費削減になります。社員が多ければ多いほど、その効果は大きいでしょう。

しかし、その反面デメリットもあります。6ヵ月の定期券代を一括して支給する場合、金額が高額になるため会社は一時的にコストが増大することになります。また、前払いで支給した後に、退職等が生じてしまうと利用していない定期券の精算が必要になります。

社員の定着率が高く、出入りが少ない会社であれば、長期の定期券代を支給するメリットがまさりますが、反対に定着率の低い会社だと、精算等の手間が増えてしまいます。

例えば、正社員だけを6ヵ月定期券代にするなどの工夫が必要になります。また、退職した場合の精算方法もあらかじめ明確にしておきましょう。

課税限度額が異なる

公共交通機関を利用する場合は、月に10万までの実費相当額であれば、所得税は非課税になります。ただし、「経済的かつ合理的な経路や方法」に限られますので、グリーン料金等は認められません。

マイカーや自転車での通勤の場合は、距離によって非課税限度額が決まっています。この限度額は、利用する交通用具が車であっても自転車であっても同額です。

片道の通勤距離 課税されない金額
2キロメートル未満 全額課税
2キロメートル以上10キロメートル未満 4,200円
10キロメートル以上15キロメートル未満 7,100円
15キロメートル以上25キロメートル未満 12,900円
25キロメートル以上35キロメートル未満 18,700円
35キロメートル以上45キロメートル未満 24,400円
45キロメートル以上55キロメートル未満 28,000円
55キロメートル以上 31,600円

 

この交通用具の限度額は、平成26年4月1日から引き上げられました。

そのため、平成26年3月31日までの金額で計算を行ってしまっていると、本来であれば非課税であった部分を、一部課税で処理をしてしまっている状態になっています。

これらは月にすれば数百円から数千円の違いであり、所得税額としてはもっと小さな金額ですが、積み重ねていけば大きな金額になります。また、多い所得税を計算されているので、単純に本人の手取りが少なくなっていることになります。

マイカーや自転車通勤の通勤費、それも課税となる金額を支給している会社で、非課税限度額の見直しをした覚えがない場合は、早めに確認をした方が良いでしょう。

交通用具を利用している場合の非課税限度額の見直しは、平成26年10月に公布され、その年の4月に遡及して実施されました。このような税法の改正を会社ですべて把握していくことは大きな負担がかかります。

これからマイナンバー制度も始まります。この機会に、人事給与アウトソーシング(ペイロールアウトソーシング)S-PAYCIALの導入や税理士・社会保険労務士などの専門家へのアウトソーシングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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