高年齢労働者の雇用保険料免除の廃止
目次
令和2年4月1日から、すべての雇用保険被保険者について雇用保険料の徴収と納付が必要となります。
そのため、これまでは雇用保険料を免除されていた高年齢労働者(4月1日時点で満64歳以上の雇用保険の一般被保険者のことをいいます。)からも、雇用保険料を徴収しなければなりません。
今回は、雇用保険料の徴収方法についてみていきたいと思います。
高年齢労働者について
平成29年の法改正により、65歳以上で新たに就職した方も雇用保険の対象になっています。雇用保険の適用要件(1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上の雇用見込みがある)に該当すると、年齢にかかわらず雇用保険の取得手続きをしなければなりません。
ときどき平成29年の法改正を認識しておらず、65歳以上の方の雇用保険の手続きをしていない会社が見受けられます。これまで高年齢労働者は、雇用保険の資格を取得したとしても、雇用保険料が免除になっていました。そのため、仮に取得手続きが漏れていたとしても、本人も気が付きません。
令和2年度からはこの雇用保険料の免除の措置が終了しますので、あらためて加入漏れがないか、再確認をした方が良いでしょう。
平成29年の法改正によって、新たに雇用保険の加入手続きに追加されたのは、以下のどちらかのパターンに当てはまる方です。チェックする際は、意識するようにしてください。
1)平成29年1月1日以降に新たに65歳以上の労働者を雇用した場合2)平成28年12月末までに65歳以上の労働者を雇用し、その労働者を平成29年1月1日以降も継続して雇用している場合
高年齢労働者が雇用保険に加入する時期
次に、上のパターン別に雇用保険に加入させる(させなければならなかった)時期について見ていきたいと思います。
パターン1【平成29年1月1日以降に新たに雇用した場合】
雇用した時点から高年齢被保険者となります。原則は、雇用した日の属する月の翌月10日までに管轄のハローワークに届出をする必要があります。
パターン2【平成28年12月末までに雇用し、引き続き雇用している場合】
平成29年1月1日より⾼年齢被保険者となります。今からだと、遡及してハローワークに届出をする必要があります。
雇用保険料控除の変更時期
雇用保険の計算は、実際に支給される給与金額に雇用保険料率を乗じて雇用保険料を決定します。そのため、社会保険の徴収事務に比べてミスの発生率は高くありません。しかし、今回のような法改正や雇用保険料率が変更になった年度に関しては、注意が必要です。
文章だけだとわかりにくいので、例を使って説明をしていきたいと思います。
例1 当月締 当月払いの場合
締日:4月20日 支払日:4月30日
→令和2年4月30日支給の給与より、高年齢労働者からも雇用保険料を徴収する。
例2 当月締 翌月払いの場合
締日:3月31日 支払日:4月25日
→令和2年4月25日支給の給与では、これまでとおり高年齢労働者からは雇用保険料を徴収しません。
4月末日締となる令和2年5月25日支給の給与より、高年齢労働者からも雇用保険料を徴収してください。
雇用保険料や労災保険料の考え方は、賃金締切日を基準にして計算するルールになっています。賃金支払日を基準に考えると、誤りのもとですので注意してください。
令和2年度の雇用保険料率
令和2年度と3年度の雇用保険料率は、「令和元年度と同様の率まで引き下げる」ことを可能とする法律案が国会に提出されています。そのため、令和元年度と同様の保険料率になると予想されますが、この原稿を作成している段階では、令和2年度の保険料率が発表されていません。
令和元年度の保険料率は以下のようになっていますので、参考までにご参照ください。
合計 | 事業主 | 被保険者 | |
一般 | 9/1000 | 6/1000 | 3/1000 |
農林水産業及び清酒製造業 | 11/1000 | 7/1000 | 4/1000 |
建設業 | 12/1000 | 8/1000 | 4/1000 |
料率変更の決定に関しては、厚生労働省のホームページ等に掲載されます。4月以降の賃金締切日の給与計算(先ほどの例1では4月25日支給、例2では5月25日支給)を行う前に確認ください。
今回は、高年齢労働者の法改正について紹介をしました。繰り返しになりますが、令和2年4月1日現在で65歳以上の雇用保険被保険者は、これまで雇用保険料が徴収されていません。高年齢労働者の雇用保険料の徴収漏れがないように、十分注意しましょう。
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