日本の人事部掲載コラム バックナンバー
第99回  投稿:2024.11.13 / 最終更新:2024.11.05

社会保険の定時決定~その2

人事給与統合システム×人事給与アウトソーシング

今年も算定基礎届の提出時期が近づいてきました。

前回は、定時決定の概要について解説をしました。今回は具体例を使いながら、定時決定の計算方法についてみていきたいと思います。

定時決定とは

前回のおさらいになりますが、定時決定は、社会保険に加入している被保険者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、7月1日現在で使用している全被保険者の3ヶ月間(4月~6月)の報酬月額を算定基礎届に記載をして届出を行う手続きのことをいいます。

算定基礎届には、「4月、5月、6月に受けた報酬の総額」を「その期間の総月数で除して」得た額を報酬月額にして、一定の幅に区分された標準報酬月額を決定します。

この算定基礎届は、原則として、支払基礎日数が17日以上ある月が対象となります。

それでは、具体的な数字をもとにケース別にみていきます。

例1 一般的な場合

4月:350,000円、5月:330,000円、6月360,000円の報酬を受けた場合ですべての月の出勤日数が17日以上ある場合

(350,000円+330,000円+360,000円)÷3ヶ月=346,666円 ※1円未満の端数切捨て

この場合の標準報酬月額は、340,000円となります。

例2 支払基礎日数に17日未満の月がある場合

4月:260,000円、5月:380,000円、6月350,000円の報酬を受けた場合で、4月に欠勤があり、給与計算の支払い対象となる日数が16日だった場合

4月を除き、(380,000円+350,000円)÷2ヶ月=365,000円

この場合の標準報酬月額は、360,000円となります。

例3 4月、5月、6月の支払基礎日数がすべて17日未満の場合

4月、5月、6月の3ヶ月とも支払基礎日数が17日未満の場合は、従前の標準報酬月額のまま定時決定されます。
これを「保険者算定」と呼びます。

仮に従前の標準報酬月額が300,000円であれば、定時決定後の標準報酬月額も、300,000円のままです。

例4 4月、5月、6月の3ヶ月間に、3月分以前の給与の遅配分を受けた、または遡及して昇給したことにより差額を一括して受けた場合

4月:380,000円(内8万円が3月分の遡及支払分)、5月:300,000円、6月300,000円

3月以前の遅配分または昇給差額分があった場合は、その金額を差し引いて報酬月額を算定します。そのため、4月については、380,000円-80,000円=300,000円として計算します。

(300,000円+300,000円+300,000円)÷3ヶ月=300,000円

この場合の標準報酬月額は、300,000円となります。

例5 給与計算期間の途中(途中入社月)で資格取得したため、1ヶ月分の報酬が支給されなかった月がある場合

15日締めの会社で、4月1日に入社した場合、4月分の給与は日割計算されることになります。このような場合は、1ヶ月分の給与が支給されない月(途中入社月)を除いた月を対象とします。

4月:130,000円(日割計算)、5月:300,000円、6月340,000円

4月を除き、(300,000円+340,000円)÷2ヶ月=320,000円

この場合の標準報酬月額は、320,000円となります。

なお、上記のケースで、4月の在職が半月であったとしても、満額の給与が出ている場合は、途中入社月も含めて算定します。

例6 毎年4月、5月、6月が繁忙期であるため、時間外労働手当の金額が高額になってしまい、他の月と比べると、適正に標準報酬月額の算定ができない場合

4月~6月の報酬の平均で標準報酬月額を算出することが著しく不当である場合は、以下の3つの要件に該当する場合であれば、前年7月から当年6月までの間に受けた報酬の月平均額から算定した標準報酬月額(年間報酬の平均)にて決定することも可能です。

1)「通常の方法で算出した標準報酬月額」と「年間平均で算出した標準報酬月額」の間に2等級以上の差が生じている
2)この2等級以上の差が業務の性質上例年発生することが見込まれる
3)被保険者が同意している

年間報酬の平均で算定することを申し立てる場合は算定基礎届に、「年間報酬で算定することの申立書」と「保険者算定申立、標準報酬月額の比較、被保険者の同意」を添付する必要があります。

少しわかりにくいので、以下の例を使って考えていきます。

年間を通して、月の報酬は260,000円で、通常の月は残業がないが、
4月、5月、6月は繁忙期のため、残業代がそれぞれの月で、150,000円支給されるケース

通常の計算方法を行うと、

(410,000円+410,000円+410,000円)÷3ヶ月=410,000円となります。

この場合の標準報酬月額は、410,000円となります。

年間平均で計算をすると、

前年7月から当年6月までの報酬の総額を12ヶ月で除して平均を算出するので、今回の場合だと、前年7月から当年3月までは260,000円、当年4月から6月までは410,000円1年間の総額は3,570,000円となります。

3,570,000円÷12ヶ月=297,500円となります。

この場合の標準報酬月額は、300,000円となります。

アルバイトやパートタイム労働者の定時決定について

原則的な考え方は、アルバイトやパートタイム労働者であっても同様です。しかし、パートやアルバイトだと、4月、5月、6月の出勤日数が17日以上にならない場合があります。その際は以下のルールに則って定時決定を行うことになります。

例7 4月、5月、6月の3ヶ月間のうち支払基礎日数が17日以上の月が1ヶ月以上ある場合

17日以上ある月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。

4月:90,000円(出勤日数11日)
5月:150,000円(出勤日数17日)
6月:85,000円(出勤日数10日)

この場合、5月の150,000円のみを使用して標準報酬月額を決定します。

例8 4月、5月、6月の3ヶ月間のうち支払基礎日数がいずれも17日未満の場合

3ヶ月のうち支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬総額の平均を報酬月額として標準報酬月額を決定します。

4月:150,000円(出勤日数15日)
5月:100,000円(出勤日数10日)
6月:160,000円(出勤日数16日)

5月を除き、(150,000円+160,000円)÷2ヶ月=155,000円

この場合の標準報酬月額は160,000円となります。

例9 4月、5月、6月の3ヶ月間の支払基礎日数がいずれも15日未満の場合

保険者算定となり、従前の標準報酬月額にて引き続き定時決定することになります。

今回は、具体例を使いながら定時決定をみてきました。

計算自体は難しいものではありませんが、ケースバイケースで計算方法が変わる場合があります。十分注意しながら、算定基礎届の作成に取り組みましょう。


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