給与から引かれるものは?
目次
給与明細書をじっくり見てみると、多くの会社では、大まかに「勤怠欄」、「支給欄」、「控除欄」と3つに分かれていると思います。
毎月、会社から受け取る給与明細書をあまり見ずに机の中にしまってしまう方もいるようですが、明細書を見ている方でも、お給料から何が引かれているかを良くわからない方も多いのではないでしょうか。
今回は、給与明細書の控除欄を中心にみていきます。
社会保険料のしくみ
社会保険は、病気や怪我、失業、老齢、死亡など、所得が減少する事由が発生したときに、その被保険者や被扶養者に対して医療補償や所得補償などの保険給付を行う制度です。
会社に勤めるサラリーマンが加入する社会保険には、健康保険、介護保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の5種類があります。
このうち、会社が全額を負担する労災保険以外は、会社と社員(被保険者)がそれぞれ負担することになっています。現在の法律では、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料は、会社と社員が半額ずつ、雇用保険料は会社が約6割、社員が約4割を負担しています。
厚生年金は、平成17年から平成29年まで毎年少しずつ保険料率が引き上げられることが決まっています。その後の保険料率は、今のところは固定される予定です。給与計算の担当者は、毎年9月に厚生年金保険料率が変更になるということを忘れないようにしましょう。
そのほかの健康保険、介護保険、雇用保険は毎年かならず保険料率が変動するわけではありませんが、変更になるときはほとんどの場合、春先に変更になります。
税負担分のしくみ
税負担分は、所得税と住民税に分かれます。
所得税は本来、本人がその年の1月1日から12月末までに支払を受けた所得から所得税を計算し、翌年の2月16日~3月15日までに管轄の税務署に申告・納付する「申告納税制度」という仕組みになっています。しかし、会社に勤めるサラリーマンの給与所得については、会社が毎月社員に支払う給与から所得税額を計算し、給与から天引きして国に納付する「源泉徴収」という方法をとります。
所得税は最終的には1年間の所得に応じて決定することになっており、月々の給与から源泉徴収される金額はあくまで見込の金額になります。したがって、年末に1年間の給与所得が確定したら、改めて正しい税額を計算し直して月々納付してきた見込の税額の合計額との差額を調整します。この調整のことを「年末調整」といいます。
なお、平成20年より「ふるさと納税制度」が始まりました。ふるさと納税とは、都道府県・市区町村に対する寄附金のうち、2,000円を超える部分について、一定限度額まで所得税や住民税が控除される制度です。年末調整及びふるさと納税の具体的な事務については次回以降で解説します。
住民税は、納税者が直接市区町村に納税をする「普通徴収」という方法が原則になります。しかし、会社に勤めるサラリーマンの住民税は、所得税と同じように会社が本人から徴収して直接、市区町村に納付します。これを「特別徴収」といいます。
特別徴収の場合、社員の住民税の納入通知書は本人ではなく会社に送られてきます。この納入通知書の金額を、6月から翌年の5月の12回に分けて本人の給料から控除し、社員に代わって市区町村へ納付しています。
その他の控除について
法律に定められた社会保険料や税金以外の会社独自の控除項目が「その他の控除額」です。その他の控除額は、会社の福利厚生施策に基づいて設定されているものが多く、会社によって様々なものがあります。代表的なものの例としては、共済会費、組合費、社宅利用料等があげられます。
社会保険料や所得税・住民税など法令で認められているものの他に「その他控除額」といった会社独自の項目を控除する場合は、会社と労働者の代表者との間で、「給与控除に関する労使協定」を結ばなければなりません。この労使協定は労働基準法に基づいており、使用者と労働者代表との間で、書面で締結することになっています。
給与控除に関する労使協定書には決まった様式はありませんが、最低限「控除の対象となる具体的な項目」と「各項目別に定める控除を行う賃金支払日」の2つが協定の中で結ばれている必要があります。
いかがでしょうか?このように、給与から控除しているのは、すべて法律に基づいて行なわれているのです。そのため、法改正などがあると給与から控除する計算式が変更されることになります。
法改正をもれなく正確に給与計算へ反映させるのは、マンパワーがない中小企業では非常に大変です。給与計算のミスが発生したことがあるような会社では、人事給与アウトソーシング(ペイロールアウトソーシング)S-PAYCIALの導入や社会保険労務士などの専門家へのアウトソーシングの活用を検討してみてはいかがでしょうか。
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