アルバイトが引きおこす「悪ふざけ」への人事的対応
今年の夏は、「ピザ生地を顔につけたピザマスク」や「冷蔵庫に従業員が入る」など従業員が行った悪ふざけをTwitter等のソーシャルメディアを使って公表してしまうという不祥事が相次ぎました。
総務省が発表している「次世代ICT社会の実現がもたらす可能性に関する調査」によると、ソーシャルメディアの使用状況は、10代では71.7%、60代以上では22.3%であり、若年層ほど利用率が高くなっています。また、若年層ほど複数のソーシャルメディアを利用している割合が高く、10代では利用者の約7割が利用している一方、60代以上では約半数に過ぎません。このように、若者を中心にソーシャルメディアは急速に普及しています。
ソーシャルメディアの現在の利用数、利用経験(年代別)
ソーシャルメディアが普及していない頃は、万が一今回のような悪ふざけが行われてしまっても、従業員一人ひとりに情報発信力が無かったため全国的に広がることはありませんでした。しかし、TwitterやFacebookがここまで普及してしまうと、良いことも悪いことも、本人の意図とは関係なく世間に広がってしまいます。
これからの企業経営として、「良いこと」はソーシャルメディアを用いて積極的に世間に広めていくべきですが、その一方で、今回のように「悪いこと」も世間にすぐに広まってしまうということを意識すべきです。では、どのようにして企業はこれらの問題に対応していけばいいのでしょうか。
本稿では、ソーシャルメディアによる情報漏洩や懲戒処分についてみていきます。
ソーシャルメディアを使うと簡単に情報発信ができるため、罪の意識を感じることなく企業秘密や悪ふざけ行為を流出させてしまうようです。しかし、従業員が企業秘密や顧客情報等を外部に漏らすと、アッという間に情報が拡散します。また、その情報がマスコミで報道をされると、テレビや新聞の影響力は絶大なため、すぐにネガティブなイメージが企業についてしまいます。このようにして一度ついたマイナスのイメージを払拭するのは容易ではありません。
また、パートタイマーやアルバイトであっても、労働者は守秘義務があり、これらの企業秘密を外部へ流出させることは当然してはいけません。就業規則上で、企業秘密の漏洩をしてはならないことを明確にし、「違反があれば規定により懲戒される」ことを周知しておくことが必要です。会社が重要だと考える情報でも、従業員は軽く考えていることもあるため、「何が企業秘密にあたるのか」ということを明確にしておくことも重要です。
これまでの常識で考えれば絶対にあり得ない行為が起きている現代では、これまで以上に当たり前の内容であっても、就業規則に記載しておかなければならない時代なのです。
「就業規則に基づく懲戒解雇にあたっては、その解雇事由は労働者に周知されていることを要し、就業規則の変更により新設された懲戒事由についての規定を過去の行為に適用して懲戒することはできないと解するのが相当である」(北群馬信用金庫事件 前橋地裁昭和57年12月16日)
会社で懲戒処分を行うには、就業規則に懲戒処分の根拠となる処分事由と、これに対する処分の種類を明確に定めておかなければ、いざというときに役に立たないことがあるのです。「このような違反行為を行った者には、このような罰を与える」ということを、事前に従業員全員に周知していることが重要なのです。
今回のように、「ピザ生地を顔につけたピザマスク」や「冷蔵庫に従業員が入る」等の行為を行った従業員は懲戒処分を受けて然るべきでしょう。しかし、明確な懲戒事由が就業規則上に記載されていない場合は、懲戒処分を行うことさえ困難になります。
「ピザ生地を顔につけてはならない」といった内容まで就業規則に記載していくのはキリがありませんので不可能ですが、「原材料や商品等会社の所有物を業務以外の目的で使用してはならない」といった項目は記載しておく必要はあるでしょう。また、ソーシャルメディアに関しては、「ソーシャルメディアを利用して会社の営業秘密や個人情報を発信してはならない」や「個人のソーシャルメディアは勤務時間外といえども会社の敷地内で使用してはならない」といった内容を盛り込んでおかなければならないのです。
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