川島孝一
第12回  投稿:2014.01.25 / 最終更新:2018.11.09

賞与を支給すると逆効果??

“ 経団連が昨年の平成25年12月26日に発表した冬の賞与の最終集計結果によると、“アベノミクス”の効果もあってか、平均妥結金額は「80万6007円」で前年に比べて3.47%増加しました。
この統計は大企業を対象としているため、支給金額に関して言えば中小零細企業は参考にならないかもしれません。しかし、大企業並みの賞与額は支給できなくても、賞与の金額がアップした会社は多いようです。

毎年賞与の時期になると、前年に対しての支給額の増減がニュースになります。賞与は実際に受け取る従業員にとって重大な関心事項であるばかりか、景気動向を示す大きな指標のひとつになっています。
給与とは違い、賞与は経営者が法律に縛られることなく、比較的自由に支給を決められるものです。しかし、会社の雇用契約書や就業規則をみると、賞与のメリットを有効に活用していないばかりか、むしろリスクを背負っているケースもあります。
今回は、賞与に対する考え方と実務上の注意点についてみていきます

<賞与とは>

賞与は、法律的に必ず支給する義務があるわけではありません。そのため、経営者の判断で支給してもしなくても良いものです。
しかし、入社の際に約束をしていたり、賃金規程等で「支給する」と定めていると支給の義務が発生します。雇用契約書や賃金規程では、賞与の支給について確定的な表現は避け、「業績に応じて支給することがある」といった表現にしておくのが良いでしょう。
また、賞与が「どのような基準」や「どのような人」に支給されるのかを明確にしておく必要があります。よくあるトラブルには、「賞与支給日の直前に退職した従業員が賞与をもらえると思っていた」「会社の業績でやむを得ず賞与を減額したり、支給を見送ったら従業員のモチベーションが下がった」などがあります。
このようなトラブルは、会社が従業員とコミュニケーションを十分にとっていれば避けられますが、念のため下記のような内容で就業規則に賞与を定めておくことをおすすめします。

会社の業績に関係なく固定的・安定的に賞与を支給することは決して悪いことではありません。しかし、会社にとって賞与の最大のメリットは、業績や貢献度に応じたフレキシブルな運用がしやすいことです。
毎年同水準程度の賞与を支給していたり、一律の賞与支給では、「貰って当たり前」「頑張っても頑張らなくても同じ」になってしまいます。このように“既得権益化”してしまうと賞与の良い面を活かせなくなります。
このような会社では、会社の業績悪化に伴ってやむを得ず賞与を減額するだけでも、モチベーションの低下や場合によっては労務トラブルに発展することがあるのです。

<退職月に支給される賞与の実務上の注意点>

「賞与支給日に会社に在籍していないと賞与を支給しない」という就業規則例を紹介しました。このようなルールで運用すると、賞与の支給後に退職する従業員の方が出てきます。このような場合の実務上の注意点をみていきます。

例えば、12月15日に賞与を支給して12月25日に退職する場合を考えてみましょう。給与計算ソフトを使用していると、賞与から自動的に健康保険料や厚生年金保険料が控除されます。しかし、退職月に支払われた賞与は、月末に退職する場合以外は、保険料の控除をする必要がありません。
そのため、在籍中であっても、12月15日に支給した賞与からは社会保険料を控除する必要はないことになります。

次に、賞与支払届についてです。賞与の健康保険料及び厚生年金保険料には、控除する上限額が定められています。健康保険は年間540万円、厚生年金保険は1か月150万円が上限額となっています。したがって、年に複数回の賞与が支給され、その合計が上限額を超える人であれば、まとめて1回で支給すると保険料が節約できることはすでに広く知られていると思います。
退職月に賞与が支給された場合は保険料の徴収対象にはなりませんが、退職日前に支払われていると、それぞれの累計額には算入されるため、賞与支払届の提出が必要になります。
また、育児休業期間中に賞与が支払われた場合でも同様に保険料は免除されますが、累計額には算入されるため賞与支払届の提出は必要です。
このようにルールを曖昧に理解していると、誤った手続きにより退職者から多く保険料を徴収してしまうトラブルが起きることもあります。
特殊なケースや不明な点があった場合は、些細なことでも行政や専門家に確認する方がよいでしょう。

会社によっては賞与が生活保障の一部になっていることを否定するつもりはありません。しかし、賞与は従業員への慰労と今後のモチベーション維持のために戦略的に支給されるべきものです。
「せっかく支給した賞与が、逆効果になってしまった」などということのないようにしましょう。

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