川島孝一
第17回  投稿:2014.06.25 / 最終更新:2018.11.09

今の法律でもできる、成果で従業員を評価する仕組み

政府は、5月28日に産業競争力会議を開催し、労働時間ではなく成果で従業員を評価できるようにするため、労働基準法で定める労働時間の規制を緩和する方針を決定しました。
このニュースは、テレビや新聞で大きく報道をされたのでご存じの方も多くいらっしゃると思います。
今のところ方針が決定されただけなので、どのような規制緩和が実現するのかは今後の動向を注視していくしかないのですが、厚生労働省としては、「高度な専門職(為替ディーラーや企業内弁護士)に関しては残業の支払いを行わない」といった内容にしたいようです。
しかし、現在の法律でも、今回ニュースになったような「みなし労働時間制」を行なうことができます。今後の議論の行方によっては、これらのみなし労働時間制の対象者を拡大したり、制度を利用しやすくする方向で規制緩和が実現するかもしれません。
今回は、労働時間のルールと裁量労働制について見ていきます。

<労働時間について>

労働基準法で定めている労働時間は、原則として1日8時間、1週40時間です。この時間を超えて、会社は従業員を労働させることはできません。
「ウチの会社はもっと残業をしているのに?」と疑問を持つ方も多くいらっしゃると思います。たしかに日本全国に残業がある会社は、たくさん存在します。先ほど紹介した労働時間はあくまでも原則なので、例外で残業させることが認められています。
会社は、過半数労働組合、または過半数代表者と労使協定を締結し、労働基準監督署に届け出た場合は、1日8時間、1週40時間を超えて労働させることができます。この労使協定はいわゆる「36協定」と呼ばれており、労働基準法をよく知らない方でも名前は聞いたことがあるかもしれません。
しかし、36協定を締結すれば「無制限に労働時間を延長させることができる」わけではありません。一般的な労働者の場合、1か月45時間、1年360時間が延長できる上限です。
36協定で定めることができる労働時間の上限は、1年単位の変形労働時間制を採用している場合や特別条項付の36協定を締結すると変わってきます。労使協定を締結する際は、労使双方とも確認をする必要があります。

<みなし労働時間制について>

現在、運用されているみなし労働時間制は、①事業場外のみなし労働時間制、②専門業務型裁量労働制、③企画業務型裁量労働制の3種類があります。
厚生労働省が発表した『平成25年就労条件総合調査結果の概況』をみると、みなし労働時間制を採用している企業割合は10.8%(前年11.9%)となっています。
これを種類別(複数回答)にみると、「事業場外労働のみなし労働時間制」が9.2%(同10.4%)、「専門業務型裁量労働制」が2.2%(同2.3%)、「企画業務型裁量労働制」が0.8%(同0.7%)となっています。企業規模が1,000人以上の場合に導入率が高くなり、企業規模が小さくなっていくにつれて導入率が低くなる傾向があります。

<事業場外のみなし労働時間制とは>

会社の外で業務を行うため、使用者が具体的な指揮監督をすることができず労働時間の算定をすることが難しい場合には、事業場外労働のみなし労働時間制を導入することができます。この制度を導入すると、労働時間の算定ができない日について「事前に定めた労働時間働いたとみなす」ことができます。いわゆる営業職などがこれにあたります。
ただ、会社の外で業務に従事していても、下記の①~③のケースのような場合については労働時間が算定できます。このような場合は、厳密には事業場外のみなし労働時間制の適用をすることはできません。

① 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
②無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
③事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に 戻る場合

現在、携帯電話を持たないビジネスパーソンはほとんどいません。携帯電話で随時上司の指示を受けながら外勤をしている場合は、事業場外のみなし労働時間制の対象にはなりません。しかし、緊急の連絡を入れるために携帯電話を使用しているような場合は、②の条件に該当しないと考えられますので、事業場外のみなし労働時間制が適用できます。

<専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制とは>

専門業務型裁量労働制は、業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある場合に、事業場の過半数労働組合または過半数代表者との労使協定を締結することにより導入することができます。
ただ、どんな業務でも導入することができるわけではなく、導入できる業務は19種類だけに限定されています。スペースの都合上、19業務すべてを紹介することはできませんが、いくつか例をあげると、システムエンジニアや衣服や室内装飾のデザイン等の業務が対象になっています。
「専門業務型裁量労働制」とインターネットで検索すれば一覧が出てきますので、興味がある方は一度確認をして頂ければと思います。また、システムエンジニアの名称であっても、プログラマーの業務をしている場合は対象外になるなど、実際に導入する場合は切り分けが難しい側面もあります。
導入した場合の効果ですが、1日に何時間働いても、労使協定であらかじめ定めた時間を働いたとみなすことになります。これだけ聞くと「長時間労働をさせるための制度か?」と誤解する方がいますが、短時間、たとえばその日に1時間しか勤務しなくても、労使協定であらかじめ定めた時間を労働したことになります。

「企画業務型裁量労働制」も1日の労働時間の考え方は、専門業務型裁量労働制と同じです。対象者は、1日に何時間働いても、労使協定であらかじめ定めた時間を働いたとみなすことになります。
企画業務型裁量労働制の対象となる労働者は、業務によって決まっているのではなく、「事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などにおいて企画、立案、調査及び分析を行う労働者」で、使用者が業務遂行の手段や方法、時間配分等を労働者の裁量にゆだねる場合を対象にしています。
制度の導入に際しては、労使委員会が必須になるなど中小企業には負担が大きく、また、対象となるような労働者はいわゆる管理職に該当するケースが多いなど、なかなか導入する企業は増えないようです。

なお、裁量労働制を導入したとしても、休憩・休日・深夜労働についてのルールは除外されません。また、会社は従業員の健康管理をする義務がありますので、裁量労働制だからといって時間管理や健康管理を怠ることがないように注意する必要があります。

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