川島孝一
第13回  投稿:2014.02.25 / 最終更新:2018.11.09

どんな業種でも起こる労働災害の申請手続き

厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課が平成26年1月に発表した『平成25年における労働災害発生状況(速報)』によると、製造業や建設業において多くの労働災害が発生しています。これらの業種は、労働災害が発生しやすい業種だというのは簡単にイメージができると思います。  

しかし、労働災害が発生するのは、製造業や建設業だけではありません。昨年は、第三次産業と呼ばれる業種でも労働災害によって45,124人の死傷者を出しています。
あまり労働災害がおきないイメージのある第三次産業ですが、この中には近年増加している精神疾患による療養や自殺も含まれます。

通勤災害はもともとあまり業種には関係ありませんが、業務災害であってもどの業種でも発生する可能性があります。経営者や事務担当者は、人が働いている以上どのような業種でも労働災害が発生してしまう可能性があることを理解しておくことが大切です。
長時間労働やパワハラに起因する労働災害が増えている近年では、労働災害の手続き遅れやミスにより被災労働者やその遺族とトラブルになるケースもあります。今回は、労働災害保険の制度や給付の内容の基本的な部分や手続の方法等を紹介します。

<労働災害保険とは>

労働災害保険は
①業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、傷害、死亡等に対して必要な保険給付の実施、
②業務上の事由又は通勤により負傷し、又は疾病にかかった労働者の社会復帰の促進、当該労働者及びその遺族の保護、
の2つを目的としています。そのため、業務上や通勤中の怪我や疾病に対する保険給付だけでなく、社会復帰促進等事業として被災労働者やその遺族に対する資金の貸付なども行っています。

<労働災害保険の保険給付>

業務災害や通勤災害に関する保険給付には、次の7種類があります。
①療養(補償)給付、     ②休業(補償)給付、
③傷害(補償)給付、     ④遺族(補償)給付、
⑤葬祭料、葬祭給付、     ⑥傷病(補償)年金、
⑦介護(補償)給付

通勤災害は労働災害ではないので、基本的には会社に責任はありません。しかし、業務を行うために通勤するのですから、労働災害に準じて保険給付を受けられます。業務災害の場合は( )内もそのまま読み(①なら「療養補償給付」)、通勤災害の場合は( )内をとって読みます(①なら「療養給付」)。
両者は読み方の違いこそあれ、給付の内容は基本的には同一です。

それでは、業務災害や通勤災害が発生してしまった場合に一番利用する頻度が高い「療養(補償)給付」と「休業(補償)給付」を具体的にみていきましょう。

1)療養(補償)給付
労働者が仕事中や通勤中の怪我や、従事している業務が原因で病気になってしまった場合に、それらの治療を行うときは療養(補償)給付が受けられます。
療養(補償)給付は「現物給付」が原則です。このため、労働災害による治療は原則として無料で受けることができます。
実務上よくあるケースが、労働災害だったのに健康保険証を使用してしまうケースです。健康保険証を利用してしまうと、あとで治療にかかった医療費を全額清算する必要があります(通常最初に窓口で3割負担していますので、残りの7割をいったん支払うことになります)。
全額清算した後に労働基準監督署で手続きを行い、支払った金額は最終的には全額還付されます(療養の費用請求)が、手続きの手間と支給決定までに時間がかかります。その間、従業員が治療費を全額負担することになってしまいますので、業務上や通勤中の怪我や病気で病院や薬局を利用した場合は、必ず病院や薬局に業務災害や通勤災害だったことを伝えることが大切です。
療養(補償)給付を受けるための手続きは、「療養(補償)給付たる療養の給付請求書」を病院へ提出します。院外薬局で薬をもらった場合は、こちらにももう1枚提出します。
一方、いったん負担した治療費の還付を受けようとする場合には、「療養(補償)給付たる療養の費用請求書」を労働基準監督署に提出します。

2)休業(補償)給付
業務災害や通勤災害によって怪我や病気になってしまい治療のため仕事を休まざるを得ない者に対して休業(補償)給付により、給与の補填が行なわれます。
支給額は、給付基礎日額の100分の60です。給付基礎日額とは、怪我や病気になった日の直近3か月間に支払われた賃金の総額をその期間の暦日数で除した金額(平均賃金)になります。
休業(補償)給付には、3日間の待機期間が設けられています。この3日間は労災保険ではカバーすることができないので、事業主は、労働基準法上の休業補償(平均賃金の100分の60)を支払う必要があります。
一方、通勤災害が原因の場合は、労働災害ではありませんので、待機期間の3日間については労働基準法上の休業補償を行う必要はありません。

3)休業特別支給金について
休業(補償)給付を受ける者には、社会復帰促進事業の一環として休業(補償)給付に給付基礎日額の100分の20に相当する金額が加算されます。
したがって、労災で休業した場合は、休業(補償)給付とあわせて給与の約80%が補償されることになります。
休業(補償)給付と休業特別支給金の手続きは、「休業(補償)給付支給申請書」を会社所在地の労働基準監督署に提出することで、同時に行なえます。
休業が長期間に及ぶ場合は、複数回にわけて申請が可能です。申請日より後の日の請求はできませんので、通常は給与締め日ごとに申請します。

<最後に>

労働災害保険は、保険給付だけではなく社会復帰促進等事業において様々な事業を行っています。もちろん、労働災害を発生させないのがベストですが、万が一、業務災害や通勤災害が起きてしまったときは経営者や事務担当者は迅速な対応が求められます。
手続きの遅れやミスによって余計なトラブルを抱え込まないようにしましょう。

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