川島孝一
第108回  投稿:2022.05.24 / 最終更新:2022.05.25

労働時間の判断基準

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今回も、前回に引き続き、令和3年3月30日に厚生労働省労働基準局補償課から出された【労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集】を説明したいと思います。
この事例集は、労働災害の認定の際に、労働時間を適切に評価するために作成されたものですが、労災認定の労働時間と労働基準法に定める労働時間は、基本的には同じです。そのため、労働時間に該当するか否かを判断する際に、この事例集は参考になります。
日々の労務管理の参考にしていただければと思います。

④ 移動時間は労働時間に該当するか?

移動時間は、その移動が業務に必要であり、移動時間中の自由利用が労働者に保障されていない場合は労働時間に該当します。この考え方は、所定労働時間内だけでなく所定労働時間外であっても同様です。所定労働時間外に、労働時間に該当した場合は、残業ということになります。

たとえば、「労働者自身が車を運転して移動する」「移動時間中にパソコンで資料作成を行う」「商品を運ぶことが目的の出張」などの場合は、労働時間として取り扱うこととされています。
反対に、出張先へ移動することだけが目的で、公共交通機関を利用して移動中は仮眠したり、読書するなど自由に行動できる場合は、労働時間には当たらないと考えられます。

 

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⑤ 出張先の宿泊施設で行った作業は労働時間に該当するか?

労働時間は、使用者の指揮命令に入っている時間はすべて労働として取り扱われることになっています。使用者の指揮命令については、口頭で指示されていても、黙示の指示であっても、指揮命令下にあると考えます。
したがって、出張先であったとしても、指揮命令下に入って業務に従事した場合は労働時間となります。

黙示の指示という言葉はあまり聞きなれませんが、使用者から具体的に指示をされていなくても、仕事を行う必要がある場合をいいます。
たとえば、直接指示を受けていなくても、残業をしないと納期に間に合わないといったケースでは黙示の指示があると考えられます。

今回のケースの場合だと、出張宿泊先において、その日の活動を日報にまとめて報告することが義務付けられている場合や、翌日の訪問先へ持参する資料を出張先で作成する必要がある場合などは、労働時間に該当することになります。

⑥ 持ち帰り残業は労働時間に該当するか?

持ち帰り残業が、使用者の指揮命令の下に置かれたものと判断される場合には、労働時間となります。
たとえば、自宅に仕事を持ち帰って行うことを使用者に命じられていたり、自宅に持ち帰って仕事をすることを余儀なくされているといったケースは労働時間に該当すると考えられます。

⑦ 労働時間外に緊急事態が起きた時のために携帯電話を持っており、緊急時には対応を行う電話当番が決められているが、当該電話当番中の時間は労働時間に該当するか?

労働時間は、使用者の指揮命令の下に置かれている時間のことをいいます。使用者の明示または、黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間となります。
電話当番を行っている時に、実際に電話がかかってきて緊急対応を行った場合には、その対応を行った時間は労働時間に該当します。

電話当番日に待機している時間は、電話当番の頻度、電話当番中の制約の程度(行動の制約の有無や拘束の度合い等)、電話に出られなかった場合の制裁の有無、緊急時の電話対応を行う頻度、対応に要する時間等を総合的に勘案して、労働時間に該当するかどうかを判断することになります。
一方で、夜間の緊急対応当番を決められていたとしても、帰宅した後はテレビを見るなど自由に過ごすことが認められている場合については、労働時間には該当しないと考えられます。

また、労働時間外に自宅等で電話やメールの対応を行った場合は、労働時間外であっても当該電話やメール対応を行うことを使用者から義務付けられていたり、対応することを余儀なくされていたような場合には、その対応をした時間については労働時間に該当することになります。

 

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⑧ 自宅で行うテレワークは労働時間に該当するか?

テレワークについても、使用者の指揮命令下に置かれているのであれば、当然ながら労働時間に該当することになります。

⑨ 所定の勤務が終了した後に行う宿直勤務はどのように評価するのか?

宿直勤務(注)であっても、突発的に通常業務を行った場合は、労働時間に該当することになります。また、宿直勤務中、夜間に十分な睡眠時間が確保できず、常態として昼間と同様の勤務に従事するなど、宿直の許可基準を満たさないような宿直勤務は、通常の労働時間に該当することになります。

注)宿直は次のような働き方をいいます。

宿直とは、一般的には、昼間通常勤務をした労働者が当該事業場の所定終業時刻から翌日の所定始業時刻まで、事業場内の定時的巡回、緊急の文書又は電話の収受、非常事態の発生等に備えて勤務することをいい、常態としてほとんど労働する必要がない勤務のことをいいます。

 

前回と今回の2回にわたり【労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集】の事例を見てきました。
実際に労働時間に該当するかどうかについては、個別の具体的な内容に応じて決まるため、判断に迷う場合があります。迷ったときは、原則に立ち返り、特に使用者の指揮命令下にあるか否かをポイントに考えてみるのが良いでしょう。それでも悩ましいケースの場合は、独断で判断せず、労働基準監督署に相談するようにしましょう。

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