働き方改革を実現するために(その1)
目次
平成29年3月に開催された働き方改革実現会議で、罰則付きの残業時間の上限規制導入などが盛り込まれた「働き方改革実行計画」が決定されました。
この計画通りに法律が施行されたとすると、週40時間を超えて労働することができる時間外労働は、原則として「月間45時間、かつ、年間360時間」までになります。この時間に違反した場合は、特例を除いて罰則も科せられます。
現在、特別条項付きの36協定を締結している会社も多くあると思いますが、その特別条項についても時間外労働時間を「年間720時間(=月平均60時間)」以内に設定する必要があり、その他にもいくつかの制約があります。
残業時間の上限規制に違反することによって罰則を科せられるというのも会社にとってリスクですが、もっと大きなリスクになるのは、人材の確保に影響が出ることです。
少子高齢化の中で、若い世代は、給与額よりも休みの多さや労働時間が短い会社を選択する傾向にあります。働く価値観が変わってきている中で、これまで通りの働き方を続けさせると、優秀な人材の採用が難しくなったり、従業員が定着しないことも考えられます。
いったん負の連鎖に陥ってしまうと、それを断ち切るのは容易ではありません。可能な限り、時代の流れに沿った職場ルールを構築していくことが大切です。
これまで従業員が残業することで成果を上げてきた会社にとって、残業時間を削減するのは命取りになるかもしれません。つまり、働き方改革(残業時間の上限設定)は、これまで会社が培ってきたビジネスモデルを変更することにつながります。
これからは、売上(成果)は落とさず、労働時間は短くして会社の生産性を上げていかなければなりません。
今回から数回に分けて、内閣府・仕事と生活の調和推進室が発行している「ワークライフバランスの実現に向けた10の実践」について紹介していきたいと思います。
<1.会議のムダ取り>
会議には「情報共有」、「アイデア出し」、「意思決定」など、さまざまな目的があります。
組織で成果を上げるためには必要不可欠なものですが、「会議が多すぎて自分の仕事は残業で処理する」といったケースもよく聞きます。
会議を効率的に進めることは、一人ひとりの仕事を効率化する上でも重要な意味があります。効率化し、さらに会議を深化させるには、次のような方法が考えられます。
(1)事前に資料は目を通す
(2)自分の考えをまとめておく
(3)会議の目的と到達目標を明確化する
(4)議論の方向性を一定に保つ
(5)終了時間を厳守し、会議を間延びさせない
ここに挙げられた項目は、どれもすぐに実践できる内容だと思います。ぜひ意識して取り組んでいただければと思います。
実際に「会議のムダ取り」に取り組んだ事例を2つ紹介します。
事例紹介
社内会議のためだけの資料を廃止した。上長への報告会議では、工程表など現場が普段使っている資料を流用して使用するようにした。
経営トップも懇談会の場で「資料が多い」などと発言して後押ししてくれ、無駄な資料が大幅に縮減された。また、副次的な効果として、資料の質が向上した。
事例紹介
会議時間は、会議内容に合った時間(「15 分・30 分・60 分、最長 90 分まで」)をあらかじめ代表が決める。このルールによって、十分整理してから会議に臨むようになった。
<2.資料の削減>
実務を行っていると、社内会議での資料や上司への報告書などを作成する機会が多くあると思います。この社内資料を「きっちり、見栄え良く作成しなければならない」「使用するか判らないけど念のため作成しておく」といった文化が社内に存在していると、おのずと労働時間は長くなってしまいます。
極端にいえば、社内資料を作成する時間は、実は何も成果を上げていません。こうした資料の作成に費やす時間は、本来、生産活動にあてられるべきです。そのため、社内資料はできる限り効率化していく方がよいでしょう。
社内資料の削減策としては、定期的な報告、記録用の資料について、必要最低限の情報を記載するフォーマットを作成し、活用する方法などが挙げられます。
事例紹介
資料の書式・様式の統一化により、資料作成の標準化が図られ、利便性が高まった反面、書類が増加してしまうという問題が発生した。そこで、1つの社内会議のためだけに資料を作成することを廃止した。
上長への報告会議では、工程表など現場が普段使っている資料を流用して使用するようにした。経営トップも懇談会の場で「資料が多い」などと発言して後押ししてくれ、無駄な資料が大幅に縮減された。また、副次的な効果として、資料の質が向上した。
事例紹介
「資料ダイエット」として、提案書フォーマットの統一や、資料の保管場所のルール設定、共有ファイルの PDF 管理の統一、月 1 回の職場整理整頓日の設定を行った。
労働時間を減らして、さらに成果を上げるのは、簡単なことではありません。しかし、これも時代の流れです。
最初から大きく変革するのではなく、できそうなことを少しずつ積み上げることによって、少しでも「働き方改革」につながるように取り組んでいきましょう。
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