川島孝一
第79回  投稿:2019.11.28 / 最終更新:2019.11.28

パワハラ防止法~その1

パワーハラスメントの防止を目的として、「労働施策総合推進法」が改正されました。この改正により、職場におけるパワーハラスメントを防止するために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となります。
労働施策総合推進法が改正されるのは、「大企業は令和2年6月」から、「中小企業は令和4年4月」からです。
また、法改正により、パワーハラスメントに関する紛争が生じた場合、調停など個別紛争解決援助の申出を行なうことができるようになります。今回から数回に分けて、いわゆる『パワハラ防止法』について説明していきます。

中小企業と大企業の定義について

中小企業と大企業の規模については、中小企業庁のホームページで確認をすることができます。まずは、以下の表で自社がどちらの区分に該当するのかを確認しましょう。

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金の額又は出資の総額が3億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人
卸売業 資本金の額又は出資の総額が1億円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人
小売業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が50人以下の会社及び個人
サービス業 資本金の額又は出資の総額が5千万円以下の会社又は
常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

中小企業庁のホームページより

パワーハラスメントの定義について

今回改正された労働施策総合推進法では、次の3つの要素をすべて満たすものを「パワーハラスメント」と定義しています。

① 優越的な関係を背景とした言動であって
② 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
③ 労働者の就業環境が害されること

例によって、この内容だけでは漠然としていますので、労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)が取りまとめたもう少し具体的な指針を紹介します。

①「優越的な関係を背景とした」言動とは
業務を遂行するに当たって、言動を受ける労働者が行為者に対して抵抗や拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの。
たとえば、以下のものなどが含まれる。

・職務上の地位が上位の者による言動
・同僚や部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの
・同僚や部下からの集団による行為で、これに抵抗や拒絶することが困難であるもの

つまり、「パワハラを行う人=上司」という構図に限られないということです。同僚や部下が行った行為でも、一定の条件に該当すればパワハラになる可能性があります。

②「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは
社会通念に照らし、当該言動が明らかに業務上の必要性がない、あるいはその態様が相当でないもの。
たとえば、以下のものなどが含まれる。

・業務上明らかに必要のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適当な言動
・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

上司が部下に対して再三指導をしても改善されないような場合には、一定程度強く注意したとしてもパワハラには該当しません。しかし、それほど必要性がない認められないケースで、強く注意をしてしまうとパワハラに当たる可能性が出てきてしまいます。

同じ行為をしているのに判断が変わってくるのは、さまざま観点から総合的に判断されるためです。業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動かどうかは、次の6つの項目について、事実関係を確認しながら総合的に判断する必要があります。

1)当該言動の目的
2)当該言動を受けた労働者の問題行動の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況
3)業種・業態
4)業務の内容・性質
5)当該言動の態様・頻度・継続性
6)労働者の属性や状況、行為者との関係性

③「就業環境を害すること」とは
その言動により労働者が身体的あるいは精神的に苦痛を与えられ、労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、当該労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること。

この判断については、同様の状況に置かれた一般的な労働者が、就業する上で見過ごすことのできない程度の支障が生じたと感じる言動や行為だったかが基準となります。
状況によって判断が変わってきますので、②の「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」言動と同様に総合的に判断をしていく必要があります。

 

職場のパワーハラスメントは、受ける人だけの問題ではなく、周囲で働く人にもネガティブな影響を及ぼします。会社にとっても、人材の損失だけでなく、損害賠償のリスクもかかえることになります。
これらを回避するために、企業は雇用管理上の対策をとっていく必要があります。具体的な取り組みについては次回で紹介をしていきたいと思います。

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