川島孝一
第130回  投稿:2024.04.01 / 最終更新:2024.03.29

バス運転者の改善基準告示~その1

「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(改善基準告示)が、20244月から改正されます。改善基準告示は、タクシー・ハイヤー運転者、トラック運転者、バス運転者でそれぞれ定められています。

前回までに、タクシー・ハイヤー運転者とトラック運転者の改善基準告示を説明してきました。今回から、最後の「バス運転者」の改善基準告示についてポイントをみていきたいと思います。

 

バス運転者の改善基準告示の対象者について

改善基準告示の対象者は、労働者(同居の親族のみを使用する事業や事務所に使用される者、家事使用人は除きます。)であって、四輪以上の自動車の運転の業務に主として従事する方です。

具体的には、物品または人を運搬するために自動車を運転する時間が労働時間の半分を超えており、かつ当該業務に従事する時間が年間総労働時間の半分を超えることが見込まれる場合には、「自動車の運転の業務に主として従事する」ものとして取り扱われます。

 

また、改善基準告示は、自家用自動車の自動車運転者にも適用されます。改善基準告示は、運送を業とするか否かを問わず、自動車運転者を労働者として使用する全事業に適用される点については注意が必要です。

たとえば、旅館の送迎用のバスや、スクールバスの運転者等、事業用自動車以外の自家用自動車の運転者なども対象になります。

 

なお、旅客自動車運送事業や貨物自動車運送事業以外の事業に従事する自動車運転者であっても、主として人を運送することを目的とする自動車の運転の業務に従事する者(上記の自家用自動車の自動車運転者を含みます。)については、バス運転者に適用される基準が適用されることになります。

バス運転者の改善基準告示の対象者

拘束時間と休息期間について

 改善基準告示は、バス運転者の労働実態を考慮して、拘束時間、休息時間について基準を定めています。拘束時間と休息時間の定義は以下のように定められています。

・拘束時間

労働時間と休憩時間(仮眠時間を含みます。)の合計時間をいいます。始業時間から終業時間までのトータル時間になります。

・休息期間

使用者の拘束を受けない、勤務と次の勤務の間の時間のことをいいます。睡眠時間を含む労働者の生活時間として自由に使える時間となります。

 

1年・1か月、52週・4週平均1週の拘束時間について

バス運転者は、事業所の労務管理の実態等に応じ、「1年・1か月」「52週・4週平均1週」のいずれかの基準を選択することになります。

1)1年・1か月の拘束時間

1年・1か月」の拘束時間を選択した場合は、原則として1年の拘束時間は3,300時間以内、かつ、1か月の拘束時間は281時間以内となります。

例外として、以下の業務に該当する場合(貸切バス等乗務者)は、労使協定により、1年のうち6か月までは、1年の総拘束時間が3,400時間を超えない範囲内において、1か月の拘束時間を294時間まで延長することができます。ただし、1か月の拘束時間が281時間を超える月は連続4か月までとする必要があります。

【貸切バス等乗務者】

①貸切バスを運行する営業所において運転の業務に従事する者

②乗合バスに乗務する者 (一時的な需要に応じて追加的に自動車の運行を行う営業所において運転の業務に従事する者に限る。)

③高速バスに乗務する者

④貸切バスに乗務する者

2)52週・4週平均1週の拘束時間

52週・4週平均1週」の拘束時間を選択した場合は、原則として、52週間の拘束時間は3,300時間以内、かつ、4週間を平均した1週間当たり(4週平均1週)の拘束時間は65時間以内とする必要があります。

例外として、貸切バス等乗務者については、労使協定により、52週のうち24週までは、52週の総拘束時間が 3,400時間を超えない範囲内において、4週平均1週の拘束時間を68時間まで延長することができます。ただし、4週平均1週の拘束時間が65時間を超える週は連続16週までにする必要があります。

拘束時間と休息期間

1日の拘束時間について

1日(始業時刻から起算して24時間を指します。)の拘束時間は13時間以内とすることが原則となります。延長する場合であっても、上限は15時間となります。

1日の拘束時間について13時間を超えて延長する場合は、14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努める必要があります。回数は1週について3回までが目安となり、この場合でも、14時間を超える日が連続することは望ましくありません。

 

1日の休息期間について

1日の休息期間は、勤務終了後、継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、 継続9時間を下回ることはできません。

休息期間の取扱いについて、特に貸切バス運転者の場合、運行の中継地や目的地において休息期間を過ごすことがありますが、休息期間の配分においては、貸切バス運転者の疲労の蓄積を防ぐ観点から、当該者の住所地における休息期間が、それ以外の場所における休息期間よりも長く確保されるよう努める必要があります。

 

 

今回は、バス運転者の拘束時間や拘束時間の限度について説明しました。次回もバス運転者の改善基準のポイントについてみていきます。

 

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