川島孝一
第145回  投稿:2025.07.10 / 最終更新:2025.07.10

フレックスタイム制の概要と時間外労働

人事給与統合システム×人事給与アウトソーシング

育児介護休業法の改正により、2025年10月より、3歳から小学校入学前の子を養育する労働者に対して、柔軟な働き方を実現するために2つ以上の措置等を選択して講じる必要があります。
選択して講ずべき措置のひとつに「フレックスタイム制」があります。

このフレックスタイム制は、2019年4月に法改正がありました。改正によって、使い勝手が良くなったことや、働き方の多様化も相まって、新たに制度を導入したり、検討する会社が増えています。
今回は、フレックスタイム制についてみていきたいと思います。

フレックスタイム制の概要について

フレックスタイム制とは、一定期間(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で始業時間や終業時間を自分自身で決定をしながら働くことができる制度です。
清算期間として設定できる期間は最長で3か月になっています。

フレックスタイム制は、労働時間の長さが直接成果に結びつかない研究・開発等を行う会社で採用されていることが多いようです。この制度を導入するメリットとして、ライフスタイルに合わせた勤務や、従業員自身が労働時間の決定をするので無駄な残業時間を削減することができるといった効果を見込むことができます。

フレックスタイム制を採用した場合に時間外労働となるのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間です。言い換えれば、時間外労働であるかどうかは、1日単位では判断せず、清算期間の労働時間のトータルで計算するということです。

「清算期間」が最長3か月になっているため、3か月の中で生活上のニーズに対応することも可能です。

労使協定で定めなければならない事項

フレックスタイム制を会社に導入するには、就業規則等で「始業・終業時刻を労働者の決定に委ねる」ことを定めた上で、労使協定で次の事項を協定する必要があります。


① 対象となる労働者の範囲
② 清算期間
③ 清算期間における総労働時間

 (清算期間を平均して、1週間の労働時間が週の法定労働時間を超えない範囲内に限る)
④ 標準となる1日の労働時間
⑤ コアタイム(労働者が必ず労働しなければならない時間帯)を定める場合には、
 その時間帯の開始及び終了の時刻
⑥ フレキシブルタイム
(労働者が選択により労働することができる時間帯)
 制限を設ける場合にはその時間帯の開始及び終了の時刻

フレックスタイム制の労使協定については、労使双方から異議がない場合には同様の内容の協定が次期にも更新される「自動更新」の規定を設けることができます。
なお、1か月を超える清算期間を設定した場合は、毎年、労働基準監督署に協定届を提出する必要があるので注意しましょう。

残業時間の計算方法について

清算期間が1か月を超える場合の時間外労働の計算方法の手順について確認していきます。
今回は、清算期間を4月1日~6月30日までの3か月間とします。それぞれの月の労働時間は、4月:220時間、5月:180時間、6月:140時間であったものとします。

①1か月ごとに週平均が50時間以上になっている月の有無を確認

清算期間が1か月を超える場合では、1か月ごとの週平均労働時間が50時間を超える時間については。その月の残業時間となります。週平均50時間となる月間の労働時間については次の表を参照ください。

参照:厚生労働省資料「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001138969.pdf

今回の平均労働時間数は、4月:214.2時間 5月:221.4時間 6月214.2時間となります。実際に労働した時間を見ると、4月:220時間 5月:180時間 6月:140時間なので、4月は5.8時間超過していることになります。この部分は、4月分の給与支払い日に割増賃金を支払う必要があります。
週平均50時間を超えているかのチェックは、毎月の給与計算時に行う必要があります。

②法定労働時間の総枠の確認

今回は、4月1日から6月30日までで清算期間を設定しています。4月から6月までの暦日数は、91日となります。そのため、法定労働時間の総枠は520時間となります。

参照:厚生労働省資料「フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き」
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001138969.pdf

③清算期間が終了後に法定労働時間の総枠を超えた分の割増賃金の支払

清算期間の総枠を超えて労働した時間については、清算期間終了後に最終月の時間外労働としてカウントすることになります。
今回は、3か月間の総労働時間が540時間でした。労働時間の総枠は520時間なので、20時間超過しています。そのうち、すでに4月に5.8時間分は清算を済ませているので、20時間から5.8時間を控除した14.2時間分を時間外労働として計算することになります。

今回は、フレックスタイム制の概要と1か月を超えるケースにおける時間外労働の考え方をみてきました。
清算期間を長くしたフレックスタイム制は、「子供の夏休みに合わせて労働時間を少なくしたい」「資格試験の追い込みをしたい」といった、従業員の生活上のニーズに働き方を合わせることが可能になります。

残業時間の削減効果とともに、従業員満足の向上も期待できるため、業種としてフレックスタイム制を導入することができるのであれば検討しても良いかもしれません。

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