労働時間と休憩時間
目次
新型コロナウイルスの影響や、インターネット環境の充実により、場所を選ばずに仕事をすることができるようになりました。また、以前にも増して、仕事内容も多様化してきています。そのような状況の中で、労働時間に該当するかどうか判断に迷うケースがあります。
そこで、今回は令和3年3月30日に厚生労働省労働基準局補償課から出された【労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集】について、紹介をしていきたいと思います。この事例集は、労働災害の認定の際に、労働時間を適切に評価するために作成されました。労災認定における労働時間と労働基準法に定める労働時間は、同じ考え方になります。そのため、労働時間に該当するか否かの判断をする際に事例集を確認することは有効です。
具体的事例をみていく前に、まずは労働時間の基本的な考え方を紹介します。
労働時間について
労働基準法では1日(8時間)と1週の労働時間(40時間)、休日日数(毎週少なくとも1回)を定めています。原則として、この時間数や日数を超えて従業員を労働させてはなりません。しかし、現実的に繁忙期等で労働時間が伸びてしまうこともあるため、時間外労働・休日労働協定(いわゆる「36 協定」)が存在しています。36協定を締結して労働基準監督署長に届け出れば、法定労働時間を超える時間外労働と法定休日における休日労働が認められます。
労働時間の基本的な考え方は、実際に仕事をしている時間だけでなく、使用者の指揮命令のもとに入っている時間すべてが労働時間として取り扱われます。
労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集の内容について
質疑応答事例集については、労働時間かどうかの判断に迷うケースの例が挙げられています。それぞれ紹介をしていきますので、自社で当てはまるケースがある場合は、改めて確認してみると良いのではないかと思います。
① 所定始業時間より前の時刻にタイムカードを打刻している場合、タイムカードを打刻した時刻から労働時間に該当するかどうか?
タイムカード等に記録されている時刻は、かならずしも労働した時間であるとは限りません。ただし、所定始業時刻より前の時間帯に、使用者から仕事を頼まれていたり、繁忙期のため、始業時刻より前に仕事をすることを余儀なくされていた場合は、労働時間としてカウントすることになります。当然ですが、使用者の指示により、業務に必要な準備行為(たとえば、制服への着替え、清掃、朝礼等)を事業場内で行った場合も労働時間としてカウントすることになります。
② 所定労働時間外に行われる研修や教育訓練は労働時間に該当するか?
参加することが業務上義務付けられている研修等については、労働時間に該当します。
所定労働時間外に行われる研修や教育訓練が労働時間に該当するかどうかは、研修の内容と業務との関連性(それに参加しないことにより労働者の業務に具体的な支障が生ずるかどうか)や、就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無といったことが判断基準となります。
③ 手待時間は労働時間に該当するか?
使用者の指示があった場合には、「業務を行うことを求められている状態で待機等をしている時間(手待時間)」は労働時間に該当します。
手待時間と休憩時間は判断に悩むところですが、労働から離れることが保障されているかどうかを基準にしてください。
手待時間と休憩時間の判断の具体例について、もう少しみていきたいと思います。
1)休憩中の当番
休憩中に電話や来客があった場合に、対応することが求められているのであれば、労働から離れることを保障されていることにはならないため、仮に電話や来客がなかったとしても労働時間に該当します。
一方で、休憩時間中に外出を行うことが自由であり、電話や来客の対応を義務付けられていなかった場合には、当該時間は休憩時間になり、労働時間にはなりません。ただし、そのような休憩時間であったとしても、実際に顧客の対応を行った場合は、対応した時間は労働時間に該当します。
2)施設等の警備員
休憩中であっても、非常事態が発生した場合に即時に対応することが求められている場合は、労働から離れることが保障されているとはいえないため、労働時間に該当します。
たとえ仮眠時間であったとしても、仮眠中に使用者の指示により即時に業務に従事することが求められており、労働から離れることが保障されていなければ、使用者の指揮命令下に置かれていると判断されるため、この場合も労働時間に該当します。
3)トラック運転手の荷待ち時間等
荷積み、荷下ろしを実際に行っている時間は当然労働時間です。これらを行うために待っている時間(荷待ち時間)は、具体的な指示や連絡がいつ来るかわからないまま待機している場合や、車列で順番待ちを行わなければならない場合については、労働時間に該当します。
今回は、労働時間の考え方について説明しました。次回も、【労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集】をひも解いてみたいと思います。
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