アルコールチェックの義務化
目次
2022年4月に道路交通法施行規則が改正され、白ナンバーの社用車等を業務上使用する場合は、安全運転管理者によるアルコールチェックが義務化されることとなりました。
今回は、アルコールチェックの内容について説明していきます。
安全運転管理者の選任
保有する自動車の種類や台数によって、安全運転管理者の選任義務が生じます。次のどちらかに該当する事業所は、安全運転管理者を選任して事業所を管轄する警察署に必要書類を提出する必要があります。
①乗車定員が11人以上の自動車を1台以上使用している。
②その他の自動車を5台以上使用している。
自動二輪車については、1台を0.5台として計算します。その際、原動機付自転車についてはカウントの対象外となります。
安全運転管理者の業務内容
安全運転管理者は、運転手に対して、国家公安委員会が作成・公表する「交通安全教育指針」に従った安全運転教育や、内閣府令で定める安全運転管理業務を行わなければなりません。
安全運転管理業務の具体的な内容は、次の9項目になります。
1)運転者の適正等の把握
自動車の運転についての運転者の適性、知識、技能や運転者が道路交通法等の規定を守っているか把握するための措置をとる。
2)運行計画の作成
運転者の過労運転の防止、その他安全な運転を確保するために自動車の運行計画を作成する。
3)交替運転者の配置
長距離運転又は夜間運転となる場合、疲労等により安全な運転ができないおそれがあるときは、交替するための運転者を配置する。
4)異常気象時等の措置
異常な気象・天災その他の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、安全確保に必要な指示や措置を講じる。
5)点呼と日常点検
運転しようとする従業員(運転者)に対して点呼等を行い、日常点検整備の実施及び飲酒、疲労、病気等により正常な運転ができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示をする。
6)運転日誌の備付け
運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させる。
7)安全運転指導
運転者に対し、「交通安全教育指針」に基づく教育のほか、自動車の運転に関する技能・知識その他安全な運転を確保するため必要な事項について指導を行う。
8)酒気帯びの有無の確認及び記録の保存(令和4年4月1日施行)
①運転前後の運転者に対し、当該運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認する。
②上の①の確認の内容を記録し、当該記録を1年間保存する
9)アルコール検知器の使用等(令和4年10月1日施行)
①目視で行っていた確認を、国家公安委員会が定めるアルコール検知器を用いて行う
②アルコール検知器を常時有効に保持する
安全運転管理者のアルコールチェックについて
2022年4月からスタートした運転者のアルコールチェックは、安全運転管理者の選任義務がある事業所が対象となっています。全国に事業所を展開している会社だと、選任義務のある事業所と、選任義務のない事業所が混在する可能性もあります。
選任義務のない事業所については、アルコールチェックを行う必要はありません。ただし、全社的な運用を定着させるためには、安全運転管理者の設置義務がない事業所でも統一した運用を行った方がよいでしょう。
アルコールチェックの実施に際しては、次の事項を記録し、1年間保存する必要があります。
1 | 確認者名 |
2 | 運転者 |
3 | 運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等 |
4 | 確認の日時 |
5 | 確認の方法 (ア)アルコール検知器の使用の有無(2022年10月1日から実施) (イ)対面でない場合は具体的方法 |
6 | 酒気帯びの有無 |
7 | 指示事項 |
8 | その他必要な事項 |
アルコールチェックについては、ほんのわずかな時間や短距離の運転時でも、業務上車両を使用する場合は必要になると考えられます。
また、安全運転管理者が外出等により不在になっていることもあるかもしれません。この場合は、「安全運転管理者による確認が困難である場合には、安全運転管理者が、副安全運転管理者又は安全運転管理者の業務を補助する者に、酒気帯び確認を行わせることは差し支えない」とされているため、アルコールチェックを実施するのは安全運転管理者でなくても構いません。
アルコール検知器について
アルコール検知器については、特段の性能上の要件はなく、酒気帯びの有無を音、色、数値等により確認できるものであれば問題ありません。
市販されている機種が多いため、購入時に迷ってしまう場合もあると思います。そのような場合は、アルコール検知器協議会のホームページで認定された検知器が紹介されているので、参考にしても良いと思います。
アルコール検知器を使ったアルコールチェックの延期について
通常であれば、2022年10月1日からアルコール検知器を使ってアルコールチェックを行う必要がありました。しかし、世界的な半導体不足等の影響によって、アルコール検知器が供給不足となっています。そのため、当分の間、アルコール検知器を用いたチェックについては、延期される見通しです。
延期期間については、今のところ明確になっていませんが、いずれ実施されることには変わりはありません。発表される情報を注視していくとともに、着実に準備をすすめる必要があります。
なお、検知器でのチェックは延期されていますが、目視での確認と記録の保存については義務化されています。こちらはしっかりと取り組むようにしましょう。
-
第137回対象者の拡大が見込まれるストレスチェック制度
-
第136回アルバイトの1ヶ月単位変形労働時間制の適用
-
第135回健康保険証の廃止
-
第134回育児介護休業の改正
-
第133回労働時間の適正な管理方法
-
第132回バス運転者の改善基準告示~その3
-
第131回バス運転者の改善基準告示~その2
-
第130回バス運転者の改善基準告示~その1
-
第129回タクシー、ハイヤー運転者の改善基準告示~その2
-
第128回タクシー、ハイヤー運転者の改善基準告示
-
第127回トラック運転者の改善基準告示~その2
-
第126回トラック運転者の改善基準告示~その1
-
第125回運送業における時間外労働の上限規制
-
第124回建設業における時間外労働の上限規制
-
第123回最低賃金の対象となる賃金
-
第122回医業における時間外労働の上限規制
-
第121回年次有給休暇と割増賃金
-
第120回会社の管理職と労基法の管理監督者
-
第119回運送業と建設業の労働時間の上限規制
-
第118回給与のデジタル通貨払い~その2
-
第117回給与のデジタル通貨払い
-
第116回障害者雇用率の引き上げ
-
第115回健康経営について
-
第114回社会保険加入の勤務期間要件の変更
-
第113回勤務時間中の喫煙と休憩時間
-
第112回男女の賃金の差異の情報公表~賃金差異の計算方法
-
第111回男女の賃金の差異の情報公表
-
第110回アルコールチェックの義務化
-
第109回新型コロナウイルス感染症の後遺症の労災認定
-
第108回労働時間の判断基準
-
第107回労働時間と休憩時間
-
第106回夜勤シフトと休日の関係
-
第105回有給休暇の買上げ
-
第104回2022年の法改正項目~社会保険の適用拡大と女性活躍法
-
第103回2022年の法改正項目~育児介護休業法の改正
-
第102回2022年の法改正項目~パワーハラスメントの防止対策
-
第101回休憩時間のルール
-
第100回労働者代表の選任
-
第99回令和3年 育児休業法の改正について~その2
-
第98回令和3年 育児休業法の改正について
-
第97回過労死の労災認定基準
-
第96回テレワーク時の労災~通勤災害
-
第95回テレワーク時の労災~その1
-
第94回70歳までの雇用延長~その2
-
第93回70歳までの雇用延長~その1
-
第92回同一労働同一賃金と最高裁判例
-
第91回増加する兼業・副業~その3 通算労働時間の確認方法
-
第90回増加する兼業・副業~その2 労働時間の通算
-
第89回最低賃金の引上げ
-
第88回コロナ感染と通勤災害
-
第87回コロナ感染と労災認定
-
第86回パワハラ防止法~その8
-
第85回パワハラ防止法~その7
-
第84回パワハラ防止法~その6
-
第83回パワハラ防止法~その5
-
第82回パワハラ防止法~その4
-
第81回パワハラ防止法~その3
-
第80回パワハラ防止法~その2
-
第79回パワハラ防止法~その1
-
第78回労働者派遣法の改正~労働者の待遇の情報提供
-
第77回労働者派遣法の改正~その2
-
第76回労働者派遣法の改正~その1
-
第75回1号特定技能外国人の判断基準~その2
-
第74回1号特定技能外国人の判断基準~その1
-
第73回新しい在留資格
-
第72回有期労働契約の解除
-
第71回働き方改革~新36協定の内容
-
第70回働き方改革~36協定の締結内容の変更
-
第69回働き方改革~同一労働同一賃金
-
第68回働き方改革~産業医の活用と機能強化
-
第67回働き方改革~高度プロフェッショナル制度
-
第66回働き方改革~フレックスタイム制の改正
-
第65回働き方改革~その2
-
第64回働き方改革~その1
-
第63回安全衛生管理体制~その2
-
第62回安全衛生管理体制~その1
-
第61回会社が行う健康診断~その2
-
第60回会社が行う健康診断~その1
-
第59回就業規則のいろはのイ
-
第58回労働契約の申込みみなし制度
-
第57回改正労働者派遣法の2018年問題
-
第56回いよいよ始動する無期転換ルール
-
第55回働き方改革を実現するために(その4)
-
第54回働き方改革を実現するために(その3)
-
第53回働き方改革を実現するために(その2)
-
第52回働き方改革を実現するために(その1)
-
第51回病気療養のための休暇や短時間勤務制度
-
第50回年次有給休暇の取得率の向上と一斉付与
-
第49回労働時間等見直しガイドラインの活用
-
第48回テレワークの導入と労働法の考え方
-
第47回管理職と管理監督者の違い
-
第46回同一労働同一賃金の行方
-
第45回時間外労働、休日労働に関する協定の重要性
-
第44回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その5 子の看護休暇等の改正ポイント~
-
第43回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その4 育児介護休業規程の改正ポイント~
-
第42回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その3 子の看護休暇等の改正ポイント~
-
第41回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その2 介護休業の改正ポイント~
-
第40回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その1 育児休業の改正ポイント~
-
第39回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度~その5 高ストレス者への面接指導の方法と注意点~
-
第38回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度~その4 高ストレス者の選定基準と診断結果の通知~
-
第37回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 ~その3 調査票作成編~
-
第36回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 ~その2実施方法編~
-
第35回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 その1
-
第34回在宅勤務制度と事業場外労働の規程例
-
第33回通勤災害の対象となるケース
-
第32回ついに成立した改正労働者派遣法~その3
-
第31回ついに成立した改正労働者派遣法~その2
-
第30回ついに成立した改正労働者派遣法~その1
-
第29回いよいよ通知がはじまるマイナンバー
-
第28回日本で働くことができる外国人
-
第27回いよいよ成立が見込まれる労働者派遣法
-
第26回休職中の社会保険料の取扱いと休職規定サンプル
-
第25回慶弔休暇のルールは就業規則等で明確にしておこう
-
第24回来年1月開始~マイナンバー制度 その3
-
第23回来年1月開始~マイナンバー制度 その2
-
第22回来年1月開始~マイナンバー制度 その1
-
第21回パートタイム労働法の改正と社会保険の適用
-
第20回急増する労務トラブルの解決機関にはどのようなものがあるか
-
第19回精神障害と労災認定
-
第18回解雇は最終手段?
-
第17回今の法律でもできる、成果で従業員を評価する仕組み
-
第16回労働組合のない会社必見!!~労働組合の基礎知識~
-
第15回残業代を定額で支払うのは
-
第14回法改正が続く有期雇用労働者との雇用契約
-
第13回どんな業種でも起こる労働災害の申請手続き
-
第12回賞与を支給すると逆効果??
-
第11回インターン生であれば労働者ではないのか
-
第10回会社に有給休暇を買い取ってもらえるようになる?
-
第09回アルバイトが引きおこす「悪ふざけ」への人事的対応
-
第08回大々的に行われる「ブラック企業」対策