社会保険加入の勤務期間要件の変更
目次
これまで、2か月以内の期間を定めて雇用される場合は、社会保険の適用は除外されていました。そのため、試用期間を2か月間の有期契約として締結することで、試用期間中は社会保険に加入しないという運用をしているケースがありました。
この社会保険加入に際しての勤務期間の要件が、令和4年10月1日より変更になりました。今回は、勤務期間要件の変更について説明していきます。
従業員と労働契約を締結することができる期間
有期契約を結べる期間については、労働基準法でルールが定められています。労働基準法では、労働者と結べる雇用契約期間の上限を定めていて、原則として契約を締結できる期間は3年以内です。
会社の方に、労働契約を結べる期間の上限があることをと伝えると、「ウチの会社の正社員は労働契約の更新を行っていないけど大丈夫なの?」と聞かれることがあります。
一般的に正社員の方たちは、「雇用期間の定めの無い契約(無期雇用)」を結んでいるため、ここでいう労働契約の上限期間の制約はありません。雇用期間の上限3年間は、あくまでも有期雇用に限った制限です。
有期の雇用契約を結べる期間は3年間ですが、このルールには次の3種類の特例が設けられています。
①高度な専門知識を持ち、厚生労働大臣が定める基準に該当する労働者が専門的知識を必要とする業務に就く場合:5年以内
この専門的知識を必要とする業務とは、医師や薬剤師、弁護士等などがあたります。
ただし、専門的な知識を持つ者を雇用しても、業務内容が専門知識を必要としていなければ対象外となり、原則の3年以内の雇用期間の契約しか締結できません。
②満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約:5年以内
高齢者になると就業の機会は限られてきます。そのため、1回の雇用契約の期間を長くすることで雇用を確保するために、例外が設けられています。
③ダムの建設事業や大規模なトンネル工事を行う場合:事業の完了に必要な期間
大規模な工事の場合、完成までの工期が5年を超えることもあります。そのような有期事業の場合は、その事業の完了に必要な期間の労働契約を締結することができます。
このケースでは具体的な年数の制限はありませんので、完成までに10年間かかる事業であれば最長10年の労働契約を締結することができます。
有期契約期間については、上限が設定されているだけで下限の設定はありません。したがって、上限未満であればどのような契約期間でも問題はありません。
有期契約労働者とは?
有期契約労働者とは、1年や6か月単位の有期労働契約を締結、または反復更新している従業員のことをいいます。一般的には「契約社員」、「パートタイマー」、「アルバイト」などと呼ばれています。
ただし、各社が独自に位置づけている雇用形態(たとえば、準社員やパートナー社員など)についても、契約期間に定めのある場合は、その名称にかかわらず、すべて有期契約労働者となります。
有期契約労働者の社会保険加入については、近年、法改正が行われています。今後も、非正規労働者の社会保険の適用範囲は拡大されていく予定です。
2022年10月からは次の要件を満たした有期契約労働者は、「短時間労働者」として健康保険と厚生年金保険の被保険者になります。
下線を引いた①と③が2022年10月からの変更箇所です。
①従業員数101人以上の企業であること
②週の所定労働時間が20時間以上あること
③2か月を超える雇用の見込みがあること
④賃金の月額が88千円以上であること
⑤学生でないこと
社会保険の被保険者とされない人
社会保険の被保険者とされるか否かの判断は、雇用契約期間等によって変わってきます。内容は次表のとおりですが、一定期間を超え雇用される場合は、「常時使用される」とみなされ、被保険者となります。
被保険者とされない人 | 被保険者となる場合 |
日々雇入れられる者 | 1か月を超えて引き続き使用されるようになった場合は、その日から被保険者となる。 |
2か月以内の期間を定めて使用される人 | 令和4年10月1日から取り扱い方法が変更となりました。以下で解説していきます。 |
所在地が一定しない事業所に使用される人 | いかなる場合も被保険者とならない。 |
季節的業務(4か月以内)に使用される人 | 継続して4か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。 |
臨時的事業の事業所(6か月以内)に使用される人 | 継続して6か月を超える予定で使用される場合は、当初から被保険者となる。 |
雇用期間が2か月以内の場合における取扱いについて
令和4年9月までは、2か月以内の期間を定めて雇用される方は社会保険の適用除外とされていました。令和4年10月以降は、当初の雇用期間が2か月以内であっても、以下のいずれかに該当する方は雇用期間の当初から社会保険に加入することになります。
①就業規則、雇用契約書等において、その契約が「更新される旨」または 「更新される場合がある旨」が明示されている場合
②同一事業所において、同様の雇用契約に基づき雇用されている者が、更新等により最初の雇用契約の期間を超えて雇用された実績がある場合
ここでポイントになるのは、「更新される場合がある旨」が明示されているときは、当初から社会保険の加入対象になるという点です。
通常多く見られる雇用契約書は、更新するための条件は付いているにせよ、条件を満たせば「更新することがある」となっています。この書き方の場合は、「更新される場合がある」旨が明示されていることになります。
つまり、「更新しない」ことが明示されている(あるいは双方で合意している)場合を除き、契約期間が2か月以内であっても社会保険に加入する必要があることになります。
今回は、社会保険の勤務期間要件の変更について説明しました。これまで入社時に2か月以内の雇用契約を結び、契約更新後から社会保険に加入する運用を行っていた会社は注意しましょう。
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