川島孝一
第134回  投稿:2024.07.30 / 最終更新:2024.09.05

育児介護休業の改正

鈴与シンワートが提供する管理部門の業務ソリューション

「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」が国会で可決・成立し、2024年5月31日に公布されました。

今回の法改正は、2025年4月1日から段階的に施行されることになっています。

改正の趣旨は、「男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、育児休業の取得状況の公表義務の対象拡大や次世代育成支援対策の推進・強化、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の措置を講ずる。」ことにあります。

主な改正点は、次の3点になります。


 1)子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充

 2)育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化

 3)介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

それでは、それぞれについて具体的にみていきましょう。

1)子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充について

<柔軟な働き方を実現するための措置等の義務化>

施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日

3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置を講じ、労働者が選択して利用できるようにすることが義務となります。

また、当該措置の個別の周知・意向確認についても義務付けられることになります。
会社は、柔軟な働き方を実現するための措置として、以下の制度の中から2つ以上の制度を選択して導入する必要があります。

・始業時刻等の変更

・テレワーク等(10日/月)

・保育施設の設置運営等

・新たな休暇の付与(10日/年)

・短時間勤務制度

労働者は、会社が導入した複数の措置の中から、1つを選択して利用することができます。

なお、個別周知・意向確認の方法は、今後、省令により、面談や書面交付などとされる予定となっています。

<所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大> 

施行日:2025年4月1日

所定外労働の制限 (残業免除) の対象となる労働者の範囲を、小学校就学前の子 (現行は3歳になるまでの子) を養育する労働者まで拡大されます。

<子の看護休暇の見直し>

施行日:2025年4月1日

子の看護休暇を子の行事参加等の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生(現行は小学校就学前)まで拡大されます。また、労使協定の締結により一定の労働者が除外できますが、そのうち「引き続き雇用された期間が6か月未満の者」は除外できなくなります。

<育児のためのテレワーク導入の努力義務化>

施行日:2025年4月1日

3歳に満たない子を養育する労働者がテレワークを選択できるように措置を講ずることが、事業主に努力義務化されます。

<仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化>

施行日:公布後1年6か月以内の政令で定める日

妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮が事業主に義務付けられます。

意向聴取の方法は、省令により、面談や書面の交付などになる予定です。具体的な配慮の例として、自社の状況に応じて、勤務時間帯・勤務地にかかる配置、業務量の調整、両立支援制度の利用期間等の見直し、労働条件の見直し等が指針で示されることになっています。

仕事と育児の両立

2)育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化

<300人超の企業に対して、育児休業取得状況の公表義務化>

施行日:2025年4月1日

現行では、従業員数1,000人超の企業に育児休業取得状況の公表が義務付けられていますが、従業員数300人超の企業に公表の義務化の範囲が拡大されます。
公表内容は、公表を行う日の属する事業年度の直前の事業年度(公表前事業年度)における 次の①または②のいずれかの割合になります。

①育児休業等の取得割合

育児休業等をした男性労働者数 ÷ 配偶者が出産した男性労働者数

②育児休業等と育児目的休暇の取得割合

(育児休業をした男性労働者数+小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者数) ÷ 配偶者が出産した男性労働者数

<育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務化>

施行日:2025年4月1日

次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定時に、育児休業の取得状況等に係る状況把握・数値目標の設定が義務化されます。

<次世代育成支援対策推進法の有効期限の延長>

施行日:2024年5月31日

次世代育成支援対策推進法の有効期限(現行は2025年3月31日まで)を2035年3月31日まで、10年間延長されました。

3)介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

<介護離職防止のための個別の周知・意向確認、雇用環境整備等の措置の義務化>

施行日:2025年4月1日

家族の介護に関する法改正の内容は、次の4点になります。

①労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付けられることとなりました。個別の周知や意向確認の方法は、面談や書面交付などによるとされており、今後省令によって詳細が決まります。

②労働者等への両立支援制度等に関する早期(40歳等)の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)が義務化されます。

③介護休暇について、勤続6か月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みが廃止されます。

④家族を介護する労働者に関し、事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークが追加されます。

今回は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律」の改正について説明しました。
詳細は省令に委ねられていたり、これから決まって行く内容もありますので、今後の情報に注意しておく必要があります。

また、法改正に伴い、自社で定めている育児介護休業規程や労使協定を改定する必要があります。改定作業もしっかりと進めて行くようにしましょう。


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