川島孝一
第137回  投稿:2024.11.07 / 最終更新:2024.11.05

対象者の拡大が見込まれるストレスチェック制度

現在は50名以上の事業所が対象となっているストレスチェック制度ですが、2024年10月10日に、「厚生労働省がストレスチェックを全事業所に義務付ける方針を決めた」と報道がありました。

まだストレスチェック制度の対象となっていない企業では、制度の内容をあまり把握していないと思いますので、今回は、ストレスチェック制度についてみていきたいと思います。

ストレスチェック制度とは?

ストレスチェック制度は、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行う制度です。検査結果を、本人に通知して自らのストレスの状況について気付きを促し、個人のメンタルヘルス不調のリスクを低減させることが第一の目的です。

ストレスチェックを行うことのメリットは、検査の中でメンタルヘルス不調のリスクの高い者を早期に見つけた場合に医師による面接指導につなげることで、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止することや、職場で行った検査結果を集団ごとに集計・分析し、職場におけるストレス要因を評価して職場環境の改善につなげることで、ストレスの要因そのものも低減させるといったことなどがあげられます。

ストレスチェック制度の対象となる事業所

現在ストレスチェック制度の対象になっているのは、常時使用する労働者が50人以上の事業所です。

ストレスチェック制度では、企業単位で労働者をカウントするのではなく事業所単位で労働者数をカウントします。常時50人以上のカウントをする際にはストレスチェックを実際に行う必要がないアルバイト等も含めて判断します。

具体的な場合を想定して、対象となる事業所と労働者の考え方をまとめたいと思います。


ケース① 会社の所在地:1カ所 従業員区分:全員正社員 従業員数:80名

この場合、常時使用する労働者が50名以上のため、ストレスチェックの実施が義務となり、従業員全員がストレスチェックの対象となります。


ケース② 会社の所在地:2カ所 従業員区分:全員正社員 従業員数:各拠点に30名


この場合、企業全体では60名いますが、2カ所ある事業所単位でみると、どちらも50人未満です。ストレスチェック制度は事業所単位で50名以上いる場合に実施が義務付けられるので、企業全体として60名正社員がいたとしてもストレスチェックについては努力義務となります。


ケース③ 会社の所在地:5カ所 従業員区分:全員正社員 

従業員数:本社100名、他の支店はそれぞれ40名
この場合は、本社の労働者数が50名を超えているので、本社はストレスチェック制度の対象となります。その他の支店はいずれも50名未満のためストレスチェック制度は努力義務となります。

ただし、このような場合で法律の義務に則して、本社のみストレスチェックを行い、他の支店は行わないことにすると、支店の従業員が不満を持ってしまう可能性も否定できません。そのため、各支店での実施は努力義務ですが、本社同様にストレスチェックを行うことが望ましいでしょう。

ストレスチェック制度の対象となる労働者

ストレスチェックの対象となる従業員は、1年に1回、定期的に実施する健康診断の対象者と同様です。1年以上の契約期間があり(見込まれ)、所定労働時間数が正社員の3/4以上の場合には、パートタイマーであっても対象になります。

ただし、繰り返しになりますが、ストレスチェック制度の対象となる事業所の規模要件の判断基準(常時使用する労働者50人以上)では、週1回しか出勤しないアルバイト従業員であったとしても常態として雇用契約があるのであればカウントする必要があります。

極端な例を挙げると、1人の正社員と300人のアルバイト(ストレスチェック制度の対象外)がいるような事業所があった場合は、人数は50人以上になるため対象事業所としてストレスチェック制度は実施しなければなりません。しかし、実際にストレスチェックを受けなければならないのは、正社員の1人だけということもあり得ます。

ストレスチェックの検査項目について

労働者のストレスの状況を把握し、未然にメンタル不全等を防ぐ目的でストレスチェック制度は導入されています。

労働者のストレスの状況を把握するために、次の3つの検査項目が網羅されている調査票を使って検査を行い、ストレスの度合いを数値化して、事業所における高ストレス者を選定するという方法をとります。

① ストレスの原因に関する質問項目

② ストレスによる心身の自覚症状に関する質問項目

③ 労働者に対する周囲のサポートに関する質問項目

使用する質問票は、上の3種類の質問が含まれていれば、特に指定はありません。何を使えばよいか分からない場合は、国が推奨する57項目の質問票(職業性ストレス簡易調査票)を使用するようにしましょう。

ストレスチェック制度は、検査を受けることに対し、従業員が「会社に個人の内面である心理的な状況を知られたくない」などの不安を訴えることもあるようです。ストレスチェック制度は、労働者の個人情報が適切に保護され、不正な目的で利用されないようにすることで、労働者も安心して受けることができます。

そもそも検査を受けてもらえなければ、適切な対応や職場環境の改善につなげることはできません。そのため、情報の取扱いに留意するとともに、不利益な取扱いを防止する必要があります。

今回は、全事業所にストレスチェックが義務付けられるという報道がされたため、ストレスチェック制度の概要についてみてきました。

まだ検討段階で、実際にいつから全事業所が対象になるかなどは今後決められていくと思いますので、注視しておきましょう。


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