有給休暇取得時の賃金の計算方法
目次

現在、労働基準法の改正に向けて議論が行われています。早ければ、2026年の通常国会へ改正案が提出されることになります。
議論が進められている改正項目は複数ありますが、そのうちのひとつに、年次有給休暇取得時の賃金算定方法の一本化があります。
今回は、有給休暇取得時の賃金の算定方法についてみていきます。
年次有給休暇について
有給休暇は、従業員のリフレッシュを目的とした制度です。法律で労働者に与えられた権利であり、会社は次の2つのいずれも満たした従業員には、毎年度、有給休暇を付与する義務があります。
1)入社してから6ヵ月以上経過していること
2)全労働日の8割以上出勤していること
付与の条件は上の2つだけなので、社員と比べて週の出勤日数が少なかったり、1日の勤務時間が短いパート・アルバイト従業員に対しても有給休暇を付与する義務があります。
年次有給休暇は、勤務日数に応じて与えられます。週の所定労働日数が5日以上もしくは週の労働時間が30時間以上のパート・アルバイト従業員の場合、雇い入れられた日から6ヵ月勤務して全労働日の8割以上出勤していれば10日の年次有給休暇が与えられます。次に、そこから1年ごとに11日、12日と与えられる日数が増えていきます。
これに対して、週4日以下の勤務で、週の所定労働時間が30時間未満のパート・アルバイト従業員に対しては、週の所定労働日数に応じた有給休暇が与えられます。
具体的な日数については、以下の表を参照ください。
| 勤続勤務日数 | 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 |
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
| 週労働日数 | 1年の所定労働日数 | 勤続勤務日数 | ||||||
| 6ヵ月 | 1年6ヵ月 | 2年6ヵ月 | 3年6ヵ月 | 4年6ヵ月 | 5年6ヵ月 | 6年6ヵ月以上 | ||
| 4日 | 169日~216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121日~168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 8日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73日~120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48日~72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
年次有給休暇取得時の賃金算定方法について
年次有給休暇の賃金について、労働基準法は以下のように定めています。
「使用者は、有給休暇の期間または時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、平均賃金又は所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間について、健康保険法第99条第1項 に定める標準報酬日額に相当する金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。」 |
条文を読むとわかりにくいと思いますが、上をまとめると、次の3つのいずれかの方法で計算すれば良いということになります。
①平均賃金
②通常の賃金
③事業場の労働者の過半数代表との労使協定により、健康保険法上の標準報酬月額の30分の1に相当する額
それぞれの方法で計算すると金額差がどの程度になるかを検証していきたいと思います。以下の条件を設定し、実際に計算していきましょう。
条件
・日給:15,000円
・月の所定労働日数:20日
・直近3ヵ月の暦日数:92日
・直近3ヵ月の労働日数:60日
・社会保険の標準報酬月額:300千円
① 平均賃金で計算をした場合
平均賃金とは、労働基準法第12条で定められているものです。年次有給休暇の他に解雇予告手当や休業手当等の算定に用いられます。
日給者や時給者の平均賃金の算定の方法は、以下の(A)と(B)を比較して高い方をとります。
| (A) | 過去3ヵ月間の賃金の合計 | ||
| 過去3ヵ月間の暦日数 |
| (B) | 過去3ヵ月間の賃金の合計 | × | 0.6 | |
| 過去3ヵ月間の労働日数 |
今回のケースの場合だと
(A)15,000円×60日÷92日=9782.60円
(B)15,000円×60日÷60日×0.6=9,000円となります。
金額が高い方をとるため、平均賃金で計算する場合は、(A)の9,782.60円となり、1円未満を四捨五入して9,783円を支給することになります。
② 所定労働時間就労した場合に支払われる通常の賃金で計算した場合
日給が15,000円のため、そのまま15,000円を支給することになります。
③ 当該事業場の労働者の過半数代表との労使協定により、健康保険法上の標準報酬月額の30分の1に相当する額
各人の健康保険の標準報酬月額を使って計算する方法です。健康保険では、被保険者が会社から受ける毎月の給料などの報酬の月額を、区切りのよい幅で区分した標準報酬月額に照らし合わせて、保険料の額と保険給付の額を計算することになっています。
健康保険制度の標準報酬月額は、健康保険は第1級の5万8千円から第50級の139万円までの全50等級に区分されています。
今回のケースでは、標準報酬月額は、22等級、月額300,000円なので、
300,000円÷30=10,000円を支給することになります。
計算結果をみると、①9,783円 ②15,000円 ③10,000円になりました。選択する計算方法によって結果に差が生じています。
日給者や時給者では、①や③の方法を選択した場合に賃金が大きく減額される可能性があります。それを避けるために、②の方法を原則とする内容に労働基準法を改正することが議論されています。
今回は、年次有給休暇を取得した際の賃金計算方法についてみてきました。実際に法改正が決まった訳ではありませんが、「①平均賃金」や「③標準報酬月額」を用いて計算している会社では、今後の動向を注意しておく必要があります。

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