ついに成立した改正労働者派遣法~その1
目次
平成27年3月27日に発表された平成25年度の労働者派遣事業報告書の集計結果によると、派遣労働者数は「一般労働者派遣事業」と「特定労働者派遣事業」を合わせて約252万人にものぼります。また、年間売上高は、総額5兆1,042億円となっています。
会社の経営をしていく上で、派遣労働者の活用がスタンダードになっているのは言うまでもありません。
すでにテレビや新聞等で大きく報じられたように、労働者派遣法が改正され、平成27年9月30日より施行されました。今回の改正は、平成24年改正労働者派遣法の「労働契約申込みなし制度」の施行が10月1日にせまる中、成立から施行までわずか20日間しかないきわめて異例の経過をたどりました。
今回から数回に分けて、大幅に変更された労働者派遣制度の概要についてみていきます。第27回テクニカルコラム「いよいよ成立が見込まれる労働者派遣法」では、労働者派遣法の一般的な部分について触れています。今回のコラムとあわせて参照ください。
<一般派遣と特定派遣の一本化>
法改正前は、派遣事業を行う事業主は、労働者派遣を行う労働者の雇用形態によって「常用型派遣」と「登録型派遣」にわけられていました。それぞれの定義は、次のとおりです。
1)常用型派遣とは・・・
・派遣元に常時雇用している労働者を派遣する。
・常用型派遣しか行わない派遣業のことを「特定労働者派遣事業」と呼んでいた。
・特定労働者派遣事業を行う場合は届出だけで実施できた。
2)登録型派遣とは・・・
・派遣労働を希望する労働者をあらかじめ派遣元事業主に登録しておき、
実際に派遣する時に一定の期間を定めて派遣労働者を雇用する。
・登録型派遣もあわせて行なう派遣業は「一般労働者派遣事業」と呼んでいた。
・一般労働者派遣事業を行う場合は許可が必要である。
今回の法改正によって、「特定労働者派遣事業」と「一般労働者派遣事業」が一本化され、すべての労働者派遣事業は新たな基準による許可制となりました。つまり、特定労働者派遣事業はなくなることになります。
ただし、平成27年9月30日時点ですでに特定労働者派遣事業を営んでいる会社については、平成30年9月29日まで引き続き「その事業の派遣労働者が常時雇用される労働者のみである労働者派遣事業」(改正前の特定労働者派遣事業に相当)を行うことが可能です。
一般労働者派遣事業をこれまで行ってきた会社は、更新期限までは新たな基準で許可を受ける必要はありません。届出によって特定労働者派遣事業を行っている会社は、平成30年9月までに新たな基準による「一般労働者派遣事業の許可」を得る必要があります。
<新たな許可基準について>
法改正により、一般労働者派遣事業を開始するには、新たに許可基準が追加されました。
これから派遣事業を行うことを考えている会社や、これまで特定労働者派遣事業を行っていた会社は、この新しい許可基準をクリアしなければ、派遣事業を開始または継続することができません。
新しい基準とはどのようなものかをみていきましょう。
以下の基準は新設された基準のみを記載しています。既存の基準については省略をしていますので、実際に許可申請をする際は行政機関に確認をしながら手続きを進めて行ってください。
新設された基準
1)派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして次に掲げる基準に適合するものであること
・派遣労働者のキャリア形成支援制度を有すること
・教育訓練等の情報を管理した資料を労働契約終了後3年間は保存していること
・無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと
また、有期雇用派遣労働者についても、労働者派遣契約の終了時に労働契約が存続している派遣労働者については、
労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと
・労働契約期間内に労働者派遣契約が終了した派遣労働者について、
次の派遣先を見つけられない等、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合には、
労働基準法第26条に基づく手当を支払う旨の規定があること
・派遣労働者に対して、労働安全衛生法第59条に基づき実施が義務付けられている安全衛生教育の実施体制を整備していること
・雇用安定措置の義務を免れることを目的とした行為を行っており、都道府県労働局から指導され、
それを是正していない者ではないこと
2)事業を的確に遂行するに足りる能力を有するものであること
※小規模派遣元事業主の暫定的な配慮措置
・常時雇用している派遣労働者が10人以下である中小企業事業主
→当分の間、基準資産額:1,000万円、現預金額:800万円を充たすこと
・常時雇用している派遣労働者が5人以下である中小企業事業主
→平成30年9月29日までの間、基準資産額:500万円、現預金額:400万円を充たすこと
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労働者派遣法の改正によって、労働者派遣の制度は大きく変わることになりました。今回は、新しい許可基準を中心にみてきました。
キャリア形成支援制度や、派遣期間制限の見直しなど、新しいルールはこれ以外にも多く新設されました。これらについては、次回以降のコラムで詳しくみていきたいと思います。
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第136回アルバイトの1ヶ月単位変形労働時間制の適用
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第133回労働時間の適正な管理方法
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第131回バス運転者の改善基準告示~その2
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第130回バス運転者の改善基準告示~その1
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第129回タクシー、ハイヤー運転者の改善基準告示~その2
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第128回タクシー、ハイヤー運転者の改善基準告示
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第127回トラック運転者の改善基準告示~その2
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第126回トラック運転者の改善基準告示~その1
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第125回運送業における時間外労働の上限規制
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第124回建設業における時間外労働の上限規制
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第123回最低賃金の対象となる賃金
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第122回医業における時間外労働の上限規制
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第121回年次有給休暇と割増賃金
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第120回会社の管理職と労基法の管理監督者
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第119回運送業と建設業の労働時間の上限規制
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第117回給与のデジタル通貨払い
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第116回障害者雇用率の引き上げ
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第115回健康経営について
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第114回社会保険加入の勤務期間要件の変更
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第111回男女の賃金の差異の情報公表
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第104回2022年の法改正項目~社会保険の適用拡大と女性活躍法
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第102回2022年の法改正項目~パワーハラスメントの防止対策
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第99回令和3年 育児休業法の改正について~その2
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第98回令和3年 育児休業法の改正について
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第97回過労死の労災認定基準
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第90回増加する兼業・副業~その2 労働時間の通算
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第89回最低賃金の引上げ
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第88回コロナ感染と通勤災害
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第87回コロナ感染と労災認定
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第86回パワハラ防止法~その8
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第85回パワハラ防止法~その7
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第84回パワハラ防止法~その6
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第83回パワハラ防止法~その5
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第82回パワハラ防止法~その4
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第81回パワハラ防止法~その3
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第80回パワハラ防止法~その2
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第79回パワハラ防止法~その1
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第78回労働者派遣法の改正~労働者の待遇の情報提供
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第77回労働者派遣法の改正~その2
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第76回労働者派遣法の改正~その1
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第75回1号特定技能外国人の判断基準~その2
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第74回1号特定技能外国人の判断基準~その1
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第73回新しい在留資格
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第72回有期労働契約の解除
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第71回働き方改革~新36協定の内容
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第70回働き方改革~36協定の締結内容の変更
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第69回働き方改革~同一労働同一賃金
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第68回働き方改革~産業医の活用と機能強化
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第67回働き方改革~高度プロフェッショナル制度
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第66回働き方改革~フレックスタイム制の改正
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第65回働き方改革~その2
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第64回働き方改革~その1
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第63回安全衛生管理体制~その2
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第62回安全衛生管理体制~その1
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第61回会社が行う健康診断~その2
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第60回会社が行う健康診断~その1
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第59回就業規則のいろはのイ
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第58回労働契約の申込みみなし制度
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第57回改正労働者派遣法の2018年問題
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第56回いよいよ始動する無期転換ルール
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第55回働き方改革を実現するために(その4)
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第54回働き方改革を実現するために(その3)
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第53回働き方改革を実現するために(その2)
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第52回働き方改革を実現するために(その1)
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第51回病気療養のための休暇や短時間勤務制度
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第50回年次有給休暇の取得率の向上と一斉付与
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第48回テレワークの導入と労働法の考え方
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第47回管理職と管理監督者の違い
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第45回時間外労働、休日労働に関する協定の重要性
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第44回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その5 子の看護休暇等の改正ポイント~
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第43回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その4 育児介護休業規程の改正ポイント~
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第42回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その3 子の看護休暇等の改正ポイント~
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第41回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その2 介護休業の改正ポイント~
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第40回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その1 育児休業の改正ポイント~
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第39回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度~その5 高ストレス者への面接指導の方法と注意点~
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第38回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度~その4 高ストレス者の選定基準と診断結果の通知~
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第36回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 ~その2実施方法編~
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第35回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 その1
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第34回在宅勤務制度と事業場外労働の規程例
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第33回通勤災害の対象となるケース
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第32回ついに成立した改正労働者派遣法~その3
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第31回ついに成立した改正労働者派遣法~その2
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第30回ついに成立した改正労働者派遣法~その1
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