1号特定技能外国人の判断基準~その1
目次
前回より、今年4月に改正された「出入国管理及び難民認定法」と「法務省設置法」についてみてきています。前回は、新しく創設された「特定技能」とはどのような資格なのか、また、特定技能には「1号」と「2号」の2種類があることまで説明しました。
今回は、2種類のうち、「1号特定技能外国人」の判断基準を詳しくみていきたいと思います。
特定技能1号の概要
特定技能1号の概要は、次の通りです。
特定技能1号:特定産業分野に属する相当程度の知識又は経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの在留資格
この特定技能1号に該当するには、相当程度の知識か経験を必要とする技能が求められます。どの程度が「相当程度」にあたるのかは、平成31年3月に法務省入国管理局が発行した「特定技能外国人受入れに関する運用要領」に記載されています。
・「特定技能1号」で在留する外国人に対しては、相当程度の知識又は経験を必要とする技能が求められます。これは、相当期間の実務経験等を要する技能をいい、特段の育成・訓練を受けることなく直ちに一定程度の業務を遂行できる水準のものをいう。
・1号特定技能外国人に対しては、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ、特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準が求められる。
1号特定技能外国人が求められる基準
1)年齢について
日本の労働法制では、18歳未満の労働者に対しては特別の保護規定を定めています。そのため、特定技能外国人についても「18歳以上」であることが必要です。
申請の段階では18歳未満であっても、在留資格認定証明書交付申請を行うことはできます。ただし、日本に入国する時点では、18歳以上になっていなければなりません。
なお、母国での学歴については、特に基準は設けられていません。
2)健康状態について
当然のことですが、特定技能外国人の健康状態は良好でなくてはなりません。日本に入国する前に、日本で行おうとする活動を支障なく行うことができる健康状態にあることについて「医師の診断」を受ける必要があります。
この診断に際しては、一定の健康診断項目を検診し、さらに「安定・継続的に就労活動を行うことについて医師の署名がある」ことが求められます。
なお、診断項目のうち「胸部エックス線検査」に異常所見がある場合には、喀痰検査を実施し、活動性結核でないことを確認しなければなりません。
健康診断項目については、以下の個人票のサンプル書式を参照ください。
3)技能水準について
1号特定技能外国人については、従事しようとする業務に必要な「相当程度の知識又は経験を必要とする技能」を有していることを、試験やその他の評価方法により証明しなければなりません。特定産業分野は、「介護」や「外食業」など業種がさまざまなため、具体的な試験その他の評価方法は、「特定産業分野に係る分野別運用方針及び分野別運用要領」で定められています。
それぞれの分野の特性に応じて、分野別運用方針では、技能試験によらない方法での技能水準の評価を認めているケースもあります。この技能試験は国外で行うことが原則ですが、国内試験も実施されることになっています。
なお、技能実習2号を良好に修了しており、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる場合には、技能水準についての試験その他の評価方法による証明は必要ありません。
技能水準を確認するための資料については、「特定技能外国人受入れに関する運用要領」に記載があります。
試験その他の評価方法により技能水準を証明する場合
・分野別運用方針に定める技能試験の合格証明書の写し
・分野別運用方針に定めるその他の評価方法により技能水準を満たすことを証明する資料
技能実習2号を良好に修了した者であること等を証明する場合
・技能検定3級又はこれに相当する技能実習評価試験の実技試験の合格証明書の写し
・技能実習生に関する評価調書
4)日本語能力について
1号特定技能外国人は、「ある程度の日常会話ができ,生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ、特定産業分野ごとに業務上必要な日本語能力水準」をクリアしていることが試験その他の評価方法で証明されていることが必要です。なお、技能実習2号を良好に修了している場合は、ここでも日本語能力水準についての試験その他の評価方法による証明は必要ありません。
日本語能力を確認するための資料についても、「特定技能外国人受入れに関する運用要領」に記載されています。
試験その他の評価方法により日本語能力水準を証明する場合
・日本語試験の合格証明書の写し
・分野別運用方針に定めるその他の評価方法により日本語能力を有することを証明する資料
技能実習2号を良好に修了した者であること等を証明する場合
・技能検定3級又はこれに相当する技能実習評価試験の実技試験の合格証明書の写し
・技能実習生に関する評価調書
今回は、1号特定技能外国人が求められる基準について紹介をしてきました。1号特定技能外国人に求められる基準は、今回紹介した内容以外にもまだ複数あります。次回も引き続き、1号特定技能外国人として認められるための基準について説明したいと思います。
-
第137回対象者の拡大が見込まれるストレスチェック制度
-
第136回アルバイトの1ヶ月単位変形労働時間制の適用
-
第135回健康保険証の廃止
-
第134回育児介護休業の改正
-
第133回労働時間の適正な管理方法
-
第132回バス運転者の改善基準告示~その3
-
第131回バス運転者の改善基準告示~その2
-
第130回バス運転者の改善基準告示~その1
-
第129回タクシー、ハイヤー運転者の改善基準告示~その2
-
第128回タクシー、ハイヤー運転者の改善基準告示
-
第127回トラック運転者の改善基準告示~その2
-
第126回トラック運転者の改善基準告示~その1
-
第125回運送業における時間外労働の上限規制
-
第124回建設業における時間外労働の上限規制
-
第123回最低賃金の対象となる賃金
-
第122回医業における時間外労働の上限規制
-
第121回年次有給休暇と割増賃金
-
第120回会社の管理職と労基法の管理監督者
-
第119回運送業と建設業の労働時間の上限規制
-
第118回給与のデジタル通貨払い~その2
-
第117回給与のデジタル通貨払い
-
第116回障害者雇用率の引き上げ
-
第115回健康経営について
-
第114回社会保険加入の勤務期間要件の変更
-
第113回勤務時間中の喫煙と休憩時間
-
第112回男女の賃金の差異の情報公表~賃金差異の計算方法
-
第111回男女の賃金の差異の情報公表
-
第110回アルコールチェックの義務化
-
第109回新型コロナウイルス感染症の後遺症の労災認定
-
第108回労働時間の判断基準
-
第107回労働時間と休憩時間
-
第106回夜勤シフトと休日の関係
-
第105回有給休暇の買上げ
-
第104回2022年の法改正項目~社会保険の適用拡大と女性活躍法
-
第103回2022年の法改正項目~育児介護休業法の改正
-
第102回2022年の法改正項目~パワーハラスメントの防止対策
-
第101回休憩時間のルール
-
第100回労働者代表の選任
-
第99回令和3年 育児休業法の改正について~その2
-
第98回令和3年 育児休業法の改正について
-
第97回過労死の労災認定基準
-
第96回テレワーク時の労災~通勤災害
-
第95回テレワーク時の労災~その1
-
第94回70歳までの雇用延長~その2
-
第93回70歳までの雇用延長~その1
-
第92回同一労働同一賃金と最高裁判例
-
第91回増加する兼業・副業~その3 通算労働時間の確認方法
-
第90回増加する兼業・副業~その2 労働時間の通算
-
第89回最低賃金の引上げ
-
第88回コロナ感染と通勤災害
-
第87回コロナ感染と労災認定
-
第86回パワハラ防止法~その8
-
第85回パワハラ防止法~その7
-
第84回パワハラ防止法~その6
-
第83回パワハラ防止法~その5
-
第82回パワハラ防止法~その4
-
第81回パワハラ防止法~その3
-
第80回パワハラ防止法~その2
-
第79回パワハラ防止法~その1
-
第78回労働者派遣法の改正~労働者の待遇の情報提供
-
第77回労働者派遣法の改正~その2
-
第76回労働者派遣法の改正~その1
-
第75回1号特定技能外国人の判断基準~その2
-
第74回1号特定技能外国人の判断基準~その1
-
第73回新しい在留資格
-
第72回有期労働契約の解除
-
第71回働き方改革~新36協定の内容
-
第70回働き方改革~36協定の締結内容の変更
-
第69回働き方改革~同一労働同一賃金
-
第68回働き方改革~産業医の活用と機能強化
-
第67回働き方改革~高度プロフェッショナル制度
-
第66回働き方改革~フレックスタイム制の改正
-
第65回働き方改革~その2
-
第64回働き方改革~その1
-
第63回安全衛生管理体制~その2
-
第62回安全衛生管理体制~その1
-
第61回会社が行う健康診断~その2
-
第60回会社が行う健康診断~その1
-
第59回就業規則のいろはのイ
-
第58回労働契約の申込みみなし制度
-
第57回改正労働者派遣法の2018年問題
-
第56回いよいよ始動する無期転換ルール
-
第55回働き方改革を実現するために(その4)
-
第54回働き方改革を実現するために(その3)
-
第53回働き方改革を実現するために(その2)
-
第52回働き方改革を実現するために(その1)
-
第51回病気療養のための休暇や短時間勤務制度
-
第50回年次有給休暇の取得率の向上と一斉付与
-
第49回労働時間等見直しガイドラインの活用
-
第48回テレワークの導入と労働法の考え方
-
第47回管理職と管理監督者の違い
-
第46回同一労働同一賃金の行方
-
第45回時間外労働、休日労働に関する協定の重要性
-
第44回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その5 子の看護休暇等の改正ポイント~
-
第43回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その4 育児介護休業規程の改正ポイント~
-
第42回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その3 子の看護休暇等の改正ポイント~
-
第41回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その2 介護休業の改正ポイント~
-
第40回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その1 育児休業の改正ポイント~
-
第39回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度~その5 高ストレス者への面接指導の方法と注意点~
-
第38回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度~その4 高ストレス者の選定基準と診断結果の通知~
-
第37回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 ~その3 調査票作成編~
-
第36回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 ~その2実施方法編~
-
第35回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 その1
-
第34回在宅勤務制度と事業場外労働の規程例
-
第33回通勤災害の対象となるケース
-
第32回ついに成立した改正労働者派遣法~その3
-
第31回ついに成立した改正労働者派遣法~その2
-
第30回ついに成立した改正労働者派遣法~その1
-
第29回いよいよ通知がはじまるマイナンバー
-
第28回日本で働くことができる外国人
-
第27回いよいよ成立が見込まれる労働者派遣法
-
第26回休職中の社会保険料の取扱いと休職規定サンプル
-
第25回慶弔休暇のルールは就業規則等で明確にしておこう
-
第24回来年1月開始~マイナンバー制度 その3
-
第23回来年1月開始~マイナンバー制度 その2
-
第22回来年1月開始~マイナンバー制度 その1
-
第21回パートタイム労働法の改正と社会保険の適用
-
第20回急増する労務トラブルの解決機関にはどのようなものがあるか
-
第19回精神障害と労災認定
-
第18回解雇は最終手段?
-
第17回今の法律でもできる、成果で従業員を評価する仕組み
-
第16回労働組合のない会社必見!!~労働組合の基礎知識~
-
第15回残業代を定額で支払うのは
-
第14回法改正が続く有期雇用労働者との雇用契約
-
第13回どんな業種でも起こる労働災害の申請手続き
-
第12回賞与を支給すると逆効果??
-
第11回インターン生であれば労働者ではないのか
-
第10回会社に有給休暇を買い取ってもらえるようになる?
-
第09回アルバイトが引きおこす「悪ふざけ」への人事的対応
-
第08回大々的に行われる「ブラック企業」対策