川島孝一
第25回  投稿:2015.04.25 / 最終更新:2018.11.09

慶弔休暇のルールは就業規則等で明確にしておこう

多くの会社では、社員が結婚したときや、身内に不幸があったときなどに「慶弔休暇」を利用できます。
この慶弔休暇の制度は、必ず会社になければならないのでしょうか?
実は、慶弔休暇については、法律には一切定められていません。あくまでも会社が福利厚生のひとつとして、社員に休みを与えているに過ぎないのです。
したがって、慶弔休暇を「どのような場合に」「誰に」「何日間」与えるのか、また、「休暇中の賃金を支払うのか否か」を会社は自由に決めることができます。もちろん、会社が慶弔休暇の制度を設けなくても構いません。しかし、現実的には、祝い事や弔事があるときに社員を休ませないわけにはいきません。

慶弔休暇をあらかじめ会社のルールとして決めておかないと、似たようなケースなのに認められる休暇の日数が変わるなど、不公平が生じる可能性があります。
また、休暇に関する事項は、就業規則に記載しなければならない「絶対的必要記載事項」のひとつです。そのため、慶弔休暇を設けるのであれば、かならず就業規則に記載しておかなければなりません。
法律が要求する以前の問題として、社員に不公平感を抱かせ、会社に対する信頼を低下させることのないように、慶弔休暇についてはしっかりと運用方法を就業規則等で定めておくべきです。

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慶弔休暇のルールを決めるときは、少なくとも以下の点は決めておく必要があります。

1.慶弔休暇の種類

まず慶弔休暇の対象となる事由を定める必要があります。一般的には、社員の結婚、社員の子供の結婚、家族の死亡、配偶者の出産などが考えられます。
また、一口に家族の死亡といっても、親や配偶者が死亡するときもあれば、兄弟姉妹や叔父・叔母が死亡するときもあります。従業員との関係性によって、いくつかに分けることが一般的です。

2.慶弔休暇の日数

慶弔休暇の種類を決めたら、次はそれぞれの日数を決めていきます。
ここで重要になるのは、休暇中に会社の休日が含まれる場合に、分割しての取得を認めるか否かです。
たとえば、結婚休暇が5日間の会社で、木曜日からの休暇を希望したとします。分割しての取得を認めないのであれば、翌週の月曜日までしか休暇を取得できないことになり、分割取得を認めれば、休暇中に土日がありますので、翌週の水曜日まで取得できることになります。
細かいようですが、実務上はこのあたりが従業員と会社との理解の仕方が異なりやすい事項です。せっかく休暇を与えるのにもかかわらず、トラブルになってしまうことのないように、就業規則に明確に記載する必要があります。
また、休暇を取得できる期間も明記しておいたほうが良いでしょう。たとえば、同じ結婚休暇では、入社前にすでに入籍していた社員が「新婚旅行に行くので結婚休暇をください!」と言ってくることもあるようです。

3.慶弔休暇の対象者

慶弔休暇は、法律上与えなければならないものではないので、すべての従業員に与えなくても構いません。たとえば、入社したばかりの社員やパート・アルバイトに対しては、正社員と違った扱いにすることもできます。
ただし、就業規則に対象者や、対象者ごとの取扱いが明記されていなければ、時給制のアルバイトであっても就業規則どおりに慶弔休暇を請求できることになります。
就業規則に「結婚休暇は5日間で有給とする。」としか記載されていなければ、時給制のアルバイトも同じ日数を有給で取得させなければなりません。

4.慶弔休暇期間中の賃金

慶弔休暇中の賃金を「有給」にするのか、「無給」にするのかも会社が自由に決めることができます。
一般的に正社員の慶弔休暇は有給とすることが多いようですが、有給休暇に加えて慶弔休暇も与えるとなると会社の負担は大きいものになります。社員の有給休暇の消化状況なども考えて、有給とするか無給とするか決めましょう。
慶弔休暇を無給で与えて意味があるのかと疑問に思われるかもしれませんが、無給であってもその期間中は堂々と休む権利が与えられています。また、有給休暇が多く残っているのであれば、本人の選択で慶弔休暇ではなく有給休暇として取得することも可能です。

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会社員生活を送っていれば、誰にでも、慶弔休暇の対象となる出来事は起こります。
慶弔休暇のルールがはっきりしておらず、経営側がそのつど運用していると、不公平感が社員に広がってしまい、モラールの低下につながるおそれがあります。
反対に、昨今では慶弔休暇の定め方が不十分だったばっかりに、制度を悪用されるケースもあるようです。
さまざまなケースを想定し、就業規則等で「明確に」定めておくことが大切なようです。

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