川島孝一
第38回  投稿:2016.06.25 / 最終更新:2018.11.09

本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度~その4 高ストレス者の選定基準と診断結果の通知~

前回は、ストレスチェックを実施するために必要な「簡易調査票」の具体的な内容について、紹介をしました。
今回は、実際に簡易調査票を用いて「高ストレス者を選定するための方法」と「診断結果の個人への通知方法」についてみていきたいと思います。

<高ストレス者にあたる者とは>

簡易調査票は、前回でも紹介した通り、1)~3)の領域を含まなければなりません。
1)仕事のストレス要因:職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
2)心身のストレス反応:心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
3)周囲のサポート:職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

この簡易調査票の結果を点数化し、定められている基準より個人の点数が高ければ「高ストレス者」として判定されます。

選定方法は複数あり、具体的な選定基準は実施者の意見と衛生委員会の調査審議を踏まえて、会社が決定することになっています。しかし、どのような選定基準にしたとしても、基本的には次の1)または2)に該当する者が高ストレス者になります。
1)「心身のストレス反応」に関する項目の評価点の合計が高い者
2)「心身のストレス反応」に関する項目の評価点の合計が一定以上であり、かつ「仕事のストレス要因」および「周囲のサポート」に関する項目の評価点の合計が著しく高い者

<高ストレス者を選定するための基準>

それでは、高ストレス者を選定するための代表的な方法をもう少し詳しくみていきましょう。

1.合計点数を使用する方法
この方法は、調査票の各質問項目への回答の点数を、単純に合計して得られる評価点を基準に用います。このため、特別な手順をとらなくても、容易に算出することが可能です。
なお、ストレスが高い方を4点、低い方を1点とする点に注意が必要です。

1)「心身のストレス反応」(29項目)の合計点数を算出し、合計点数が77点以上である者を高ストレスとする。
2)「仕事のストレス要因」(17 項目)および「周囲のサポート」(9 項目)の合計点数を算出し、合計点数が76 点以上であって、かつ、「心身のストレス反応」の合計点数が 63 点以上である者を高ストレスとする。

また、職業性ストレス簡易調査票簡易版(23項目)を使用する場合は、以下の点数に置き換えて判断します。
1)「心身のストレス反応」(11項目)の合計点数を算出し、合計点数が31点以上である者を高ストレスとする。
2)「仕事のストレス要因」(6項目)および「周囲のサポート」(6項目)の合計点数を算出し、合計点数が39点 以上であって、かつ、「心身のストレス反応」の合計点数が 23 点以上である者を高ストレスとする。

2.素点換算表を使用する方法
この方法は、調査票の各質問項目への回答の点数を、素点換算表により尺度ごとに5 段階評価に換算し、その評価点の合計点(または平均点)を基準に用います。
分析ツール(プログラム)が必要ですが、個人プロフィールとの関連がわかりやすく、尺度ごとの評価が考慮された解析方法です。この場合は、ストレスの高い方が1点、低い方が5点になります。

1)「心身のストレス反応」(29項目)の6尺度(活気、イライラ感、不安感、抑うつ感、疲労感、身体愁訴)について、素点換算表により5段階評価に換算し、6尺度の合計点が12点以下 (平均点が2.00点以下)である者を高ストレスとする
2)「仕事のストレス要因」 (17項目)の9尺度(仕事の量、仕事の質、身体的負担度等)および「周囲のサポート」(9 項目)の3尺度(上司からのサポート、同僚からのサポート等)の計12尺度について、素点換算表により5段階評価に換算し、12尺度の合計点が26 点以下(平均点が 2.17 点以下)であって、かつ、「心身のストレス反応」の 6尺度の合計点が17点以下(平均点が2.83点以下)である者を高ストレスとする。

素点換算表を使用する方法の具体的な計算事例は、文字数の都合上、紹介することができません。厚生労働省が作成している「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度 実施マニュアル」のP40に記載がありますので、そちらを参照ください。

<ストレスチェックの結果通知>

判定が終わったら、ストレスチェック実施者から労働者に対して結果を通知することになります。その際には、次の3つの項目はかならず通知しなければなりません。
1)個人のストレスプロフィール
個人ごとのストレスの特徴や傾向を数値、図表等で示したもので、次の3つの項目ごとの点数を含むことが必要です。
・職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
・当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
・職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目
2)ストレスの程度(高ストレスに該当するかどうかを示した評価結果)
3)面接指導の対象者か否かの判定結果

また、実施マニュアルによれば、上記に加え、以下の2つも通知することが望ましいとされています。
4)セルフケアのためのアドバイス
5)事業者への面接指導の申出方法(申出窓口)。

ストレスチェックの結果を通知する際には、他の者に見られないよう、封書または電子メール等で労働者に個別に直接通知しなければなりません。
また、面接指導の要否が、他の者に類推されないように配慮する必要があります。例えば、面接指導の対象者にのみ職場で封書を配布するなどの方法では、対象者が類推される可能性があるので避けなければなりません。

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今回は、ストレスチェック制度における高ストレス者の選定方法と診断結果の通知方法について説明をしました。
次回は、結果を通知した後の「高ストレス者の面接の方法」について、解説していきたいと思います。

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