パワハラ防止法~その5
目次
ここ数回にわたって、厚生労働省が作成する「職場のパワーハラスメント対策ハンドブック」に記載されている、パワーハラスメント対策の具体的な対策手順について紹介をしています。
① トップのメッセージ
組織のトップが、職場のパワーハラスメントは職場から無くすべきであるということを明確に示す。
② ルールを決める
就業規則に規定を定める、労使協定を締結する。
予防・解決についての方針やガイドラインを作成する。
③ 実態を把握する
従業員アンケートを実施する。
④ 教育する
研修を実施する。
⑤ 周知する
組織の方針や取組について周知・啓発を実施する。
⑥ 相談や解決の場を設置する
企業内外に相談窓口を設置する。職場の対応責任者を決める。
外部専門家と連携する
⑦ 再発防止のための取組
行為者に対する再発防止研修等を行う。
前回までで最初の3つを説明しました。今回は、「教育する」「周知する」の2つのポイントについてみていきたいと思います。
④ 教育する
教育のための研修は、できる限り社員全員が受講し、定期的に実施することが大切です。。また、パワハラを防止する立場の「管理職等の管理監督者」とパワハラへの気づきを求められる「一般社員」では必要な研修内容に差があります。可能であれば、管理職と一般社員の研修は、別々に実施した方が効果は望めます。
「パートやアルバイト等の非正規従業員に対してもパワハラ研修を行った方が良いのか?」といった質問を受けることがあります。たとえ雇用契約の形態が違ったとしても、同じ職場で働く仲間ということには変わりはありません。パワハラに対して同じ研修を受講することで、情報共有を図ることに意味があります。非正規従業員であったとしても、正社員同様に研修を行った方が良いでしょう。
パワハラの研修では、以下のようなカリキュラムが考えられます。
・パワーハラスメントとは何か(定義・行為類型)を確認する
・パワーハラスメントの社会的な現状をさまざまなデータをもとに認識する
・パワーハラスメントが与える影響について認識する
・パワーハラスメントの行為者、会社の責任について確認する
・パワーハラスメントの具体的な事例を紹介し、パワーハラスメントと業務上の指導との違いを認識する
・パワーハラスメントの予防方法を認識する
・パワーハラスメントに関係する自社のルール(規定、相談窓口など)を確認する
・トップメッセージ等
<研修の実施方法>
パワハラの研修は、外部の研修会社や社会保険労務士等に講師を依頼することも可能です。業種的に集合研修が難しい場合は、オンライン研修を検討しても良いでしょう。たとえば、厚生労働省が作成するホームページ「あかるい職場応援団」の中の動画を見て学ぶことも可能です。
パワハラを職場内で発生させないことが目的です。研修を行っているから大丈夫と考えるのではなく、定期的に研修等を行っていく必要があります。
⑤ 周知する
次に、組織の方針や取り組みについての周知の方法についてみていきます。従業員への周知は、パワハラの防止対策のためのルール等の周知だけではなく、相談窓口などについても周知をしていく必要があります。
会社が、パワハラ防止に本気で取り組んでいるという姿勢を従業員に示していくためにも、社内にパワハラ防止のポスター等を貼るだけでは不十分です。従業員に対して、積極的に、そして繰り返しアプローチをしていきましょう。
具体的なアプローチの方法としては、社長や人事部長等から具体的な会社の取り組みを発信することが考えられます。以下のような点を意識すると、効果が高まるでしょう。
・パワーハラスメントの定義、具体的な例などを盛り込む
・取り組みの意義、目的を明確に伝える
・パワーハラスメントが発生することによるデメリットを伝える
・(過去の)社内又は外部のパワーハラスメントの具体例を紹介する
・就業規則に罰則規定があれば、その具体的な内容を説明する
厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル」より
相談窓口の周知
パワハラに限らず、ハラスメント対策では相談窓口の設置が重要なポイントになります。相談窓口は、その利用方法や「相談者が守られていて、安心して相談できる」窓口であることを、周知する必要があります。
相談窓口がうまく機能していれば、万が一ハラスメントが発生してしまったとしても、大きな問題になる前に会社は対策をとることが可能になります。
今回は、「教育」と「周知」について紹介をしました。パワハラ対策の中では、相談者が安心して相談ができるような体制づくりが必要であり、中でも相談窓口は重要な役割を持っています。
「相談や解決の場」の設置の内容については、次回説明したいと思います。
-
第136回アルバイトの1ヶ月単位変形労働時間制の適用
-
第135回健康保険証の廃止
-
第134回育児介護休業の改正
-
第133回労働時間の適正な管理方法
-
第132回バス運転者の改善基準告示~その3
-
第131回バス運転者の改善基準告示~その2
-
第130回バス運転者の改善基準告示~その1
-
第129回タクシー、ハイヤー運転者の改善基準告示~その2
-
第128回タクシー、ハイヤー運転者の改善基準告示
-
第127回トラック運転者の改善基準告示~その2
-
第126回トラック運転者の改善基準告示~その1
-
第125回運送業における時間外労働の上限規制
-
第124回建設業における時間外労働の上限規制
-
第123回最低賃金の対象となる賃金
-
第122回医業における時間外労働の上限規制
-
第121回年次有給休暇と割増賃金
-
第120回会社の管理職と労基法の管理監督者
-
第119回運送業と建設業の労働時間の上限規制
-
第118回給与のデジタル通貨払い~その2
-
第117回給与のデジタル通貨払い
-
第116回障害者雇用率の引き上げ
-
第115回健康経営について
-
第114回社会保険加入の勤務期間要件の変更
-
第113回勤務時間中の喫煙と休憩時間
-
第112回男女の賃金の差異の情報公表~賃金差異の計算方法
-
第111回男女の賃金の差異の情報公表
-
第110回アルコールチェックの義務化
-
第109回新型コロナウイルス感染症の後遺症の労災認定
-
第108回労働時間の判断基準
-
第107回労働時間と休憩時間
-
第106回夜勤シフトと休日の関係
-
第105回有給休暇の買上げ
-
第104回2022年の法改正項目~社会保険の適用拡大と女性活躍法
-
第103回2022年の法改正項目~育児介護休業法の改正
-
第102回2022年の法改正項目~パワーハラスメントの防止対策
-
第101回休憩時間のルール
-
第100回労働者代表の選任
-
第99回令和3年 育児休業法の改正について~その2
-
第98回令和3年 育児休業法の改正について
-
第97回過労死の労災認定基準
-
第96回テレワーク時の労災~通勤災害
-
第95回テレワーク時の労災~その1
-
第94回70歳までの雇用延長~その2
-
第93回70歳までの雇用延長~その1
-
第92回同一労働同一賃金と最高裁判例
-
第91回増加する兼業・副業~その3 通算労働時間の確認方法
-
第90回増加する兼業・副業~その2 労働時間の通算
-
第89回最低賃金の引上げ
-
第88回コロナ感染と通勤災害
-
第87回コロナ感染と労災認定
-
第86回パワハラ防止法~その8
-
第85回パワハラ防止法~その7
-
第84回パワハラ防止法~その6
-
第83回パワハラ防止法~その5
-
第82回パワハラ防止法~その4
-
第81回パワハラ防止法~その3
-
第80回パワハラ防止法~その2
-
第79回パワハラ防止法~その1
-
第78回労働者派遣法の改正~労働者の待遇の情報提供
-
第77回労働者派遣法の改正~その2
-
第76回労働者派遣法の改正~その1
-
第75回1号特定技能外国人の判断基準~その2
-
第74回1号特定技能外国人の判断基準~その1
-
第73回新しい在留資格
-
第72回有期労働契約の解除
-
第71回働き方改革~新36協定の内容
-
第70回働き方改革~36協定の締結内容の変更
-
第69回働き方改革~同一労働同一賃金
-
第68回働き方改革~産業医の活用と機能強化
-
第67回働き方改革~高度プロフェッショナル制度
-
第66回働き方改革~フレックスタイム制の改正
-
第65回働き方改革~その2
-
第64回働き方改革~その1
-
第63回安全衛生管理体制~その2
-
第62回安全衛生管理体制~その1
-
第61回会社が行う健康診断~その2
-
第60回会社が行う健康診断~その1
-
第59回就業規則のいろはのイ
-
第58回労働契約の申込みみなし制度
-
第57回改正労働者派遣法の2018年問題
-
第56回いよいよ始動する無期転換ルール
-
第55回働き方改革を実現するために(その4)
-
第54回働き方改革を実現するために(その3)
-
第53回働き方改革を実現するために(その2)
-
第52回働き方改革を実現するために(その1)
-
第51回病気療養のための休暇や短時間勤務制度
-
第50回年次有給休暇の取得率の向上と一斉付与
-
第49回労働時間等見直しガイドラインの活用
-
第48回テレワークの導入と労働法の考え方
-
第47回管理職と管理監督者の違い
-
第46回同一労働同一賃金の行方
-
第45回時間外労働、休日労働に関する協定の重要性
-
第44回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その5 子の看護休暇等の改正ポイント~
-
第43回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その4 育児介護休業規程の改正ポイント~
-
第42回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その3 子の看護休暇等の改正ポイント~
-
第41回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その2 介護休業の改正ポイント~
-
第40回育児・介護休業法改正と会社の対応 ~その1 育児休業の改正ポイント~
-
第39回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度~その5 高ストレス者への面接指導の方法と注意点~
-
第38回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度~その4 高ストレス者の選定基準と診断結果の通知~
-
第37回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 ~その3 調査票作成編~
-
第36回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 ~その2実施方法編~
-
第35回本年中に実施が義務付けられたストレスチェック制度 その1
-
第34回在宅勤務制度と事業場外労働の規程例
-
第33回通勤災害の対象となるケース
-
第32回ついに成立した改正労働者派遣法~その3
-
第31回ついに成立した改正労働者派遣法~その2
-
第30回ついに成立した改正労働者派遣法~その1
-
第29回いよいよ通知がはじまるマイナンバー
-
第28回日本で働くことができる外国人
-
第27回いよいよ成立が見込まれる労働者派遣法
-
第26回休職中の社会保険料の取扱いと休職規定サンプル
-
第25回慶弔休暇のルールは就業規則等で明確にしておこう
-
第24回来年1月開始~マイナンバー制度 その3
-
第23回来年1月開始~マイナンバー制度 その2
-
第22回来年1月開始~マイナンバー制度 その1
-
第21回パートタイム労働法の改正と社会保険の適用
-
第20回急増する労務トラブルの解決機関にはどのようなものがあるか
-
第19回精神障害と労災認定
-
第18回解雇は最終手段?
-
第17回今の法律でもできる、成果で従業員を評価する仕組み
-
第16回労働組合のない会社必見!!~労働組合の基礎知識~
-
第15回残業代を定額で支払うのは
-
第14回法改正が続く有期雇用労働者との雇用契約
-
第13回どんな業種でも起こる労働災害の申請手続き
-
第12回賞与を支給すると逆効果??
-
第11回インターン生であれば労働者ではないのか
-
第10回会社に有給休暇を買い取ってもらえるようになる?
-
第09回アルバイトが引きおこす「悪ふざけ」への人事的対応
-
第08回大々的に行われる「ブラック企業」対策