川島孝一
第160回  投稿:2026.10.09 / 最終更新:2026.10.08

フレックスタイム制における深夜業

フレックスタイム制を導入している会社で、「深夜業を行った場合に割増賃金の計算が必要か」との質問を受けることがあります。

今回は、フレックスタイム制を導入している会社における深夜業の考え方についてみていきます。

フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制を想起させる画像

フレックスタイム制とは、原則として1か月以内の一定期間(清算期間)における総労働時間をあらかじめ定めておき、労働者はその枠内で始業時間や終業時間を自分自身で決定をしながら働くことができる制度です。

そのため、1日単位で残業時間の計算を行うことはありません。清算期間のトータルの時間によって、時間外手当の支払いが必要かを判断します。

フレックスタイム制を導入するメリットとして、「通勤ラッシュを避けることができる」「従業員のライフスタイルを尊重することができる」「従業員自身が労働時間の決定をするので無駄な残業時間を削減することができる」などの効果を見込むことができます。

フレックスタイム制を採用した場合に時間外労働となるのは、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間です。この「清算期間」は3か月を最長に設定することができます。

割増賃金率について

労働者と労働時間と賃金を想起しやすくするための画像

労働基準法では1日(8時間)および1週の労働時間(40時間)ならびに休日日数(毎週少なくとも1回)を定めています。

フレックスタイム制を導入した場合、1日や1週の労働時間を気にすることなく、清算期間中の法定労働時間の総枠を超えた時間に対して割増賃金の支払いが必要になります。

割増賃金率については以下のように定められています。

時間外労働2割5分以上
(1か月について60時間を超える場合は5割以上)
休日労働3割5分以上
法定労働時間内の深夜労働2割5分以上
時間外労働が深夜に及んだ場合5割以上
(1か月について60時間を超える場合は7割5分以上)
休日労働が深夜に及んだ場合6割以上
関連コラム|フレックスタイム制の休憩時間、正しく設定できていますか?

フレックスタイム制と深夜業について

深夜業をイメージさせる画像

それでは、フレックスタイム制を導入した場合の深夜業の考え方についてみていきます。深夜業とは、午後10時から翌朝5時までの時間帯に働くことをいいます。この時間帯に勤務した場合は、通常の賃金に加えて25%以上の割増賃金の支払いが義務となります。

このルールは、フレックスタイム制を導入していたとしても免除されることはありません。

フレックスタイム制は、始業と終業を従業員に委ねる制度ですが、働いてよい時間であるフレックスタイムをあらかじめ設定する必要があります。一般的には、深夜業の時間帯を含めて設定することは少ないですが、フレックスタイムの時間以外におよんでいるかをあまり確認していない会社もあるようです。その場合、実際には深夜の時間帯に働いているにもかかわらず、深夜割増賃金を支払っていないことにつながりかねませんので注意しましょう。

給与計算などを行う際は「深夜業」と「時間外労働」は分けて考えることが重要です。

フレックスタイム制の時間外労働は、原則として清算期間における法定労働時間の総枠を超えたかどうかによって判断します。一方、深夜業は清算期間とは関係なく、実際に午後10時~翌朝5時に働いた時間があるかをカウントする必要があります。

フレックスタイム制で残業はどうなる?時間外労働の考え方をわかりやすく解説|コラムを読む

深夜業を行う上での注意点について

人間は明るい昼の時間に活動をして、暗くなる夜には休息する必要があります。夜勤は、休息が必要な時間に活動をすることになりますので、本来のサイクルから大きく外れてしまいます。そのため、日中に十分睡眠をとったとしても、体が十分に回復しないといった状況が生まれてしまいます。

また、夜勤勤務を続けることによって高血圧症、心疾患、糖尿病、乳がん、前立腺がん等の発症リスクが高まると言われています。このようなリスクが認識されていたとしても、業種によっては24時間体制を取ることはやむを得ないケースもあります。

深夜業務で憔悴している人を想起させる画像

そこで、夜勤に対するガイドライン(ルーテンフランツ9原則)があります。

このガイドラインは、日本国内だけの基準ではなく国際的に利用されている基準です。深夜業を行っている方が健康に対して自助努力をするだけでなく、会社としても疲労を蓄積させない体制を整えていく必要があります。


ルーテンフランツ9原則

①連続夜勤は避ける
②日勤開始時刻は早くしない
③シフト交代時刻は個人に融通性を持たせる
④夜勤は他の勤務より短くすべき
⑤短い勤務間隔は避ける
⑥連続勤務を行う場合は少なくとも2連続休日の週末を含むべき
⑦連続勤務は時計回りの正循環にする
⑧勤務開始から休日までの1周期は長くしない
⑨シフトの循環は規則正しく

 

今回は、フレックスタイム制における深夜業の考え方についてみてきました。現実的には、深夜業が必須の会社ではフレックスタイム制を導入しているケースはあまり多くないと思います。むしろ、日常的には深夜業が発生しない会社の方が注意が必要です。

せっかくフレックスタイム制を導入しているのであれば、従業員にとって負担の大きい深夜業は避けた方が良いでしょう。フレックスタイムの設定時間を見直したり、フレックスタイムが深夜時間帯にかからない場合では深夜業は許可制にするなど、会社にとって必要のない深夜業はなくすようにしましょう。

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